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フェティッシュの火曜日
 
ミルクガニの煙突焼きを食べてきた

ミルクガニの煙突焼きをしよう

帰港する前にすることがある。これだけ大量のミルクガ二を見せられて、お腹が減らないわけがない。漁も無事に終わったことだし(なにもしていないけれど)、いますぐにでもカニにかぶりつきたい。

元々カニを食べるだけだったら港で待っていればいいし、メールで注文すれば家で待っていたってカニは届く。我々がわざわざ漁についていったのは、単純に漁を見てみたかったというのもあるが、船の上じゃないと絶対に食べられないという長谷川さん一番のオススメ料理があったからなのだ。

その料理の名は煙突焼き。


煙突をじっと見つめる船長。

煙突焼きの作り方はものすごいダイナミック。まずカニの甲羅をはずして、よく冷凍で売っているタラバガニと同じ形にする。

そしてそのまま肩側から船の煙突に突っ込む!


衝撃の行動! カニを煙突に突っ込む!

一応前もってこの料理法を聞いてはいたのだが、それでも初めてみるとカルチャーショックを受ける料理法である。カニが赤いからってサンタクロースじゃないんだから煙突に突っ込まなくても。韓国の人がキムチを作るのに洗濯機を使っているのをテレビで見たのと同じような衝撃度。

正直、せっかくのカニが排ガス臭くならないかとても心配だ。

煙突の中は高温になっており、このまま2,3分という短時間火を通したら、ミルクガニの煙突焼きが完成だ。普通に蒸したり茹でたりすると10分以上は掛かるから、かなり短い時間である。この高温で短時間というのが、この料理のポイントらしい。


「わたしのカニが…」と不安そうな高瀬さん。


煙突焼きを食べる

長谷川さんから「焼けたよー」と手渡されたカニは、悲しくなるくらいにまっくろくろ。なにも知らされずにはいカニですよと手渡されたら、まず間違いなく泣き出すことだろう。

本当にこれでいいのだろうか。これがまずかったらどうしよう。なんだかものすごいプレッシャーだ。


これを俺に食えと。

恐る恐る、熱い熱い、痛い痛い、黒い黒いといろいろと言葉を重ねながら慎重にカニの殻を剥くと、ふわっと柔らかい白とピンクの身が詰まっていた。うまそう。

ちょっと匂いを嗅いでみると心配された排ガス臭さはしない。かといって聞いていたミルクの匂いという訳でもなく、ふつうにカニの匂いがする。どうやらミルクの匂いは内臓部分にあるらしい。


外は真っ黒だが中はいい感じ。

不安と期待が半々の状態でいい感じに火の通ったカニの身を食べてみると、これが味が濃い。さすがにたった今海から上がったばかりのカニだけあって身がジューシー。身が持っている海水の塩分だけで味付けなんかなしで十二分にうまい。


「すばらしい!」 高瀬さんは美味しそうにものを食べる。

最初はみんな真っ黒なカニを手に不安げな顔をしていたのだが、一口食べてからはもう夢中。カニまっしぐら。「カニを食べると無口になる」という格言はとても正しい。

殻を剥くのに手は真っ黒になるし、棘は指にグサグサと刺さるし、船はドンブラコと揺れるしで食べやすさという点では最悪なのだが、それでも全員が黙って食べ続けている。


帰港中ずっと無言でカニを食べ続ける。 港についても延々食べ続ける。

棘の刺さった手は痛いはずなのだが、興奮状態で脳内麻薬が出まくっているのか、カニに変な成分が入っているのか痛みをほとんど感じなかった。船酔いも全員一切なし。ランナーズハイならぬカニハイ。

まさにカニ道楽。

カニはいい

正直なところ、今日まであまり「いいカニ」というのを食べないで育ってきたために、あまりカニに対する思い入れがなかったのですが、多くの人がカニを好きな訳が今日ようやくわかった気がします。カニはいい。夢中になれます。

しかし食うのはいいけれど、やっぱり漁師っていう仕事は大変そうだなと当たり前に思いました。この日もサメやカニや我々をおろしにいったん港に戻ったら、また夕方からサメの仕掛けをセットしにいくのだといっていたし。

それでも長谷川さんは「天気がよければ富士山も見えるし、こんないい職場はないよー」と笑っていっていました。

ミルクガニは大量に買って友人宅でいただいたのですが、卵の塩漬けがまたねっとりしてうまかったのよ。

■取材協力:長兼丸ホームページ
■長谷川さん息子ブログ:宝は駿河湾深海にあり!
(ミルクガニの購入方法はこちら

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