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はっけんの水曜日
 
桜前線をオッカケ続ける人

(text by 大塚 幸代



「なんか前にどこかで、噂を聞いたことがあるんですけど、『桜が絶滅するかもしんない』って本当ですか?」
と訊いたら、
「それは大変デリケートな話題なので、お話、しにくいんです…」と答えられてしまった。
---……エッ!? す、すいません。


芝桜の咲く丘に咲く、2本の双子の桜、というレア風景。北海道津別町。撮影・中西一登氏(他の写真も)。

知人の中西一登氏。
サラリーマンで気象予報士。
貯金を作っては仕事を辞めて、日本の桜前線のオッカケを4回もやってしまったという、強者の桜マニアさんだ。
そんな彼に「まあ桜も好きだし、花見も好き」程度の私が、気軽にそんな質問をしたのが、いけなかった。

「いろいろ仮説はあるんです。このまま地球温暖化が進むと、100年後に大阪の気温が4度上がる、というシミュレーションがあるんですね。すると、今の沖縄と同じ暑さになるわけです」
---はあ。
「すると、染井吉野(ソメイヨシノ)がなくなってしまう。……今の沖縄では、染井吉野は、ほとんど育たないですから。
そうなると、大阪より西、関西から九州では、染井吉野が見られなくなるかもしれない、と」
---ええー!
「東京も、今の奄美大島並みの平均気温になると言われてますから、染井吉野は弱ってしまうかも知れないですね…。
---染井吉野って、今の日本の桜の8〜9割を占めている桜ですよね…? それはヤバイですね、嫌ですね。景観とか、全部変わっちゃいますね。桜の名所の観光地、大打撃ですね。
「ですからあくまで、ひとつの仮説ですよ…。まだ専門家による検討は始まっていないようなので。」

そんなに思い入れがない私でも、「桜がなくなっちゃったらどうしよう」とドキドキする。


夜桜ってなんだかキレイすぎてコワイ(東京都調布市)。

普通、「お花見、桜前線ツアー」というと、たいへん贅沢なものをイメージしてしまう。
リッチな年配の方々が、旅行代理店に惜しみなくドーンとお金を払って、開花時期に日程を調整してもらいながら、素敵な温泉付きのお宿・美味しい地元の御馳走を堪能、名所をのんびりながめてオミヤゲ買って…というような、夢の旅行だ。

しかし、純粋な「桜のオッカケ」の場合は違う。
1130回の桜の名所に行ったことがあるという中西さんは、車移動、車中泊。
誰も行かない山奥まで行って開花チェック、モバイルで桜ブログ更新、というストイックさ。

---そもそも、なんで桜のオッカケになっちゃったんですか? 
「最初は……。一度会社を辞めた時、まとまった時間が出来て、もともと旅行が好きだったから、軽い気持ちで桜を見る旅をしたんですよ」
---それが予想外にハマってしまった、と。でもキリがないですよね、桜のオッカケって。解散しないバンドのオッカケみたいなものじゃないですか?
「そうなんです、キリがない。
キリがないどころか…。桜前線は、沖縄で1月に開花して、7月の北海道まで移動するんですが、例えば、同時期に、東京と高知と熊本が開花するでしょう?」
---桜前線の進み方が……そうですね、地形的にそうなっちゃいますね。
「これ、物理的に、同時に押さえられないんです。もし宝くじが当たったら、飛行機で全行程移動して、全部チェックしたいですけどねえ」
---ジェット機とかチャーター出来たら、すごいですね。
「小規模ですけれど、都内では、やったことがあるんです、満開の日に。桜が好きすぎて、都内のあらゆる桜スポットを知りたいと、タクシードライバーに転職した方がいるんですが…」
---え、そんな方が!
「その方を指名して、『東京タクシー桜お任せツアー』と銘打って、1日に東京を21ケ所、回ったんです。あれは楽しかったなあ…」


道路と夜桜、っていうのも、現実感の無い風景(静岡県河津町、河津七滝ループ橋)






中西氏が撮影した桜の一部(クリックしても拡大しません、ごめん)

---いやあしかし、桜の写真って、見てるとすっごいテンション上がりますね。どうしてこのピンク色の花は、人間を高揚させるんですかね。
「年に10日くらいしか開かないから、とっても貴重だから、みんな熱狂するのかもしれませんね。年に1回くらいは、満開のチャンスをつかまえて、気になるあの子とゴザ敷いてお花見したいなあ、とか(笑)」
---うーん、デートにももちろん、使えるかもしれませんけど(笑)。
それ以前に、むやみやたらと血が騒ぎますよ。桜でテンション上がるのって、日本人だけなのかなあ…。
「やっぱり、日本みたいに熱狂する国はないようですね。おととし行ったネパールでは、ヒマラヤザクラがタキギにされてましたね(笑)。高さ15mほどの巨木なのに、2mくらいのところまで、枝が全然ない。みんな折り取ってタキギにしちゃう。」
---燃やしちゃうのか…。
「あ、日本の国花が桜って思っている方が多いですけれど、国が正式に決めたものではないんです」
---そうなんですか? みんなそう思い込んでるフシがありますけども。そうなのか。
「さっき話に出た『絶滅』じゃないですが、地球温暖化とは関係なく、ある日突然枯れてしまうかもしれない、って思ったりしますよ。
実際、私が訪ねた名木で、枯れたり、大枝が折れたりという例が、たくさんありましたから」
---桜も生き物ですもんね…。
「なので、1年1年が、とっても貴重に思えるんです。この桜を美しく見られるのは、今が最後になっちゃうんじゃないかと」
---それじゃ、心配で、追っかけずにいられないですねえ。
「そうなんですよねえ…。それで毎年繰り返し、見に行ってしまうんです。そして、早く自分のホームページやブログで、様子を人に伝えなきゃと思うんです。皆さんにも、桜の貴重な艶姿を、見てもらいたいので」
---なんかこう、うーん、中西さんは、桜ファンというより、桜が好きすぎて、「桜のマネージャー」みたいなお気持ちになってますね…。あ、そうか、だからサイトでは、『桜キャスター』って名乗ってらっしゃるんですね。
「そうです(笑)」
---そういえば、桜は盛りが短くて、いさぎよく散るのがいいよね〜、ってよく言われますが……。
「そうですね」
---私も昔はそう思っていたんですが、個人的に粘着気質なせいか、年とるごとに「ほとんど花の散ってしまった葉桜も、可愛いなあ、もっとギリギリまで咲いててくれー」って思うようになってきましたよ。
「桜ファンは『葉桜』って言葉は使わず、『11〜18分咲き』って呼んだりしますよ。14分咲きくらいが最高、っていうファンもいます。」
----それいい! それいいいいいいいいい!!!!!! 30代以上の女子に響きますわ、そのフレーズ!!(話がズレている)

好きなものがあるのって、羨ましい。
それが「人生を棒にふるくらいの勢い」なほど、大変羨ましい。そんなに愛せるものって、あります? 私にはないですよ。

と、こんな変わった知人がいるんですが…というお話を、イベントハウス・@nifty東京カルチャーカルチャーのスタッフにしたら、うっかりイベント開催決定となってしまいました。

「桜開花情報の、より正確なつかみ方/どのニュースソースが、今一番使えるか」とか、
「地方遠征する場合の、情報収集の仕方、滞在のコツ(キャッシュカードはゆうちょが便利)」とか、
「桜の種類などの基礎知識から、染井吉野誕生の秘密」まで、ディープな話題が展開される模様。
車移動派の中西さんに対抗して、「全行程、電車&バス」派のピート小林氏も出演されるので、公共交通機関利用法のヒケツも伝授。
そして私もなぜかお手伝いに参加します。
美麗桜写真を大スクリーンで堪能しながら、お酒飲んで、桜の咲く前に前ノリで、桜気分にひたろうぜ。


2008年3月15日
桜キャスター中西一登presents
桜ナイト〜世界初、桜前線の追いかけ方カレンダー公開!!〜

会場 TOKYO CULTURE CULTURE(お台場)
開場 17:00 開演 18:00 終演予定 20:30
出演 中西一登(桜キャスター)、ピート小林(さくらストーカー/「にっぽんお宝桜撮影行 」著者)、大塚幸代(ライター/デイリーポータルZ)、テリー植田(東京カルチャーカルチャー・プロデューサー)
前売り1500円 当日1800円(ともに飲食代別/ファーストドリンク500円)
ローソンチケット:Lコード: 38880
>>詳細はこちらをクリック


 
 
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