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はっけんの水曜日
 
雪山が楽しい7つの理由
雪山の鎖場(危険箇所には鎖のガイドが付いている)は夏の3倍危険。慎重に下りれば大丈夫だけどさ。


 冬の山は危ない。ウッカリしただけで死んじゃう。下界でウッカリしてもなかなか死なないけど冬山でウッカリすると本当に死んじゃうのだ。

怖い、冬山、怖い。と、最近まで思っていた。

房総出身で雪を知らずに育った僕は必要以上に雪が怖いのだ。

 でも2000m以下の山ならわりと冬でも登れるらしい事を最近知り、この冬から雪山に出向くようになった。これが思いの外楽しい。

という事で、今回は雪山の魅力を説明しつつ、最近奥多摩とか高尾あたりの低山でモリモリ雪山歩きをした記録を紹介します。長野でスノーシューもしてきたよ。

(text by 松本 圭司

雪山、寒い。でも楽しい。それはなぜか?

■雪山のなにがいいの?

 そもそも、東京ですら十分に寒い冬にわざわざ更に寒い奥多摩の、とりわけ寒い山頂を目指そうなんてまともじゃない。大体1500mくらいの山だと下界より10℃近く低い計算になる。わりと昼間でも氷点下だったりする。

なんでそんなとこに行くのか?

楽しいからだ。

雪山を歩くのは楽しい。

その理由を説明させていただこう。

 

■雪山が楽しい7つの理由

1.空気が澄んでて遠くまで見える
 冬は夏よりも空気が澄んでいる。モヤも少なくて遠くまで見通せるから山頂からの眺めも格別だ。奥多摩から東京湾が見えちゃうんだから。夏はモヤってる事が多く、山頂についてもガッカリって事が多いが冬は大体良い眺めを楽しめる。


写真には写ってないけど、肉眼だと都心のビルや、輝く東京湾が見える。

2.寒いから一生懸命登っても暑くならない

 夏の低山登山は非常に暑い。大体1回登ると水を4リットル飲んでたりする、そんな暑さだ。でも冬はそんな心配いらない。どんなにガツガツ登って暑くなっても上着を脱げば即解決。寒くなったら着ればいい訳で、温度調節がしやすい。


夏の山登りはエライ暑くてツライ。長野県でもエライ暑い。

 

3.静か

 雪が音を吸収するので山が異様に静かだ。動物もあまり鳴かず、雪が落ちる音と自分の呼吸の落としか聞こえなくなる。静まりかえった雪山に一人立つと、世界が止まってしまったようで気持ちが落ち着く。

と、ポエムっぽい事をウッカリ書いてしまう位に、あの静けさは良いものだ。


雪山はもの凄い静か。ここが東京だって忘れそうになる(奥高尾に行った時の写真)。

 

おにぎりと柿の種を合わせて、雪と一緒に加熱。うめぇ。

4.装備を着けて行動するのがなんか格好良い
 低い雪山の場合、大体6本爪とか4本爪のアイゼン(着脱出来るスパイク)を靴に着ける。アイゼンを着ければ雪道でも全然滑らないしガッガッガッと雪を削って歩く音がなんか格好良い。強くなった気がする。その感覚が楽しい。

5.寒いところで温かい物を食べると美味い
 なんといっても寒い中で食べるカップ麺や温かい食べ物は美味い。あっという間に冷めていくけど。ハフッハフッと食べるのがたまんない。


帰りのバスも待つ人はまばら。空いてて快適。

6.人が少なくて快適
 夏には人気のあまりバスに乗り切らなくなったりする山でも、冬だと割りと空いている。山でもあまり人に会わないし、貸し切り気分で山歩きできるのが素晴らしい。

7.雪って嬉しいじゃない
 僕は南房総出身なので単純に雪が珍しい。31になっても雪が降る日はワクワクする。だから雪山なんて行ったら珍しいのが周り全部にある訳で、言ってみればエル・ド・ラドだ。そんなの嬉しくないわけあるだろうか。いや、ない。

ホラ、雪山って楽しそうでしょう。そうなんだよ、雪山は良いんだよ。でも、ちょっぴり危険なので一応どんな危険があるのか紹介しておきたい。

 

滑らないようにアイゼンを靴に付けます。
死亡、骨折続出だそうです。夏でも危険な道は更に危険に。

■雪山は楽しいけど危険だ

1.滑落
 雪が踏み固められてるとアイスバーンになって非常に滑りやすくなる。アイゼンを着けずにそんな所を歩くと滑ってしまう。単に転ぶくらいならいいんだけど、崖の上で転ぶと落ちて死んじゃうから危ない。

2.凍死
 やっぱりどうしたって寒い。稜線は特に風が強いので体感温度は簡単に氷点下10度を下回る。そんなところなので、遭難して十分な装備が無いと簡単に死んじゃう。危ない。

3.雪崩
 奥多摩あたりじゃ雪崩なんてあまり起こらないだろうが、長野のホントに凄い雪山だと雪崩が起こって危険だ。そんなとこに行くとウッカリしなくても死んじゃうので今のところは行かないことにしている。

4.道迷い
 夏なら道が見えているから低山で道迷いはなかなかしないだろうが、冬だと雪で道が埋まってるので何処が登山道なのかわからなくなる場合がある。大抵は先人が歩いた踏み跡があるので問題ないのだが、あんまりにも人が入らない山は注意だ。

5.日が短い
 冬は日が短いので大体4時半を過ぎるとマズイ暗さになっていく。陽が落ちると気温が下がるし暗くて道に迷いやすく、滑落もしやすいので夜間の行動は慎むべきだ。ヘッドランプは当然持っていくが、出来れば明るいうちに下山or宿泊したい。

6.重装備が必要
 アイゼン、ストック、防寒着、予備食糧、ツェルトなどなど夏山よりも装備が多くなる(高山の場合は更に装備が増える)。

 何事も無ければ使わない物ばかりだけど何事かあった時に持ってないと死んじゃうのでやはり十分な装備が必要だ。重いけど頑張って持っていくしかない。


以上、主な危険6つ。

・・・・スマン、ちょっぴりの危険じゃなかった。色んな危険がある。楽しいんだけど気を抜くと死んじゃうので、引き締めるところはきちんと引き締め、装備や計画、行動に注意した方が良いだろう。

 

■危険だけど、だがそれが却って良いんだよ

 危ない危ないとはいえ、ピッケルとかザイルとか必要な本当の冬山に行くので無ければ大丈夫。低山ならそれほど大きな危険はない。

感覚的には、

「冬の2000m級の危険度≒夏の3000m級の危険度」

であり、

「冬の1000m級の危険度≒夏の2000m級の危険度」

くらいだろうか(※1)。大体夏山よりも標高1000m分危険が高まる感じ。

 という事は!夏に3000m級の山に登るのと同じくらいの楽しさ(※2)が、奥多摩あたりの2000m以下の山で味わえるということになりはしないだろうか。遠くまで行かなくても、東京の山でも十分に楽しい山歩きが出来る!

 大体、危険度と楽しさは比例するのだ。危険な女は危険だから魅力的で、素敵だからハニートラップにかかる訳だからだ。

 つまり、適度に危険な冬山は魅力的で素敵なのだ!これはまんまとハニートラップに掛かってその快楽に溺れるしかない!

 さて、では次のページから実際に雪山に行ってきた記録をご覧いただこう。どの山も非常に楽しくて鼻水が止まらなかった。読んだらきっと冬山に行きたくなること間違いなしだ。さぁ、冬山装備を整えて山へゴーだ(※3)。

※1・・・厳密には高さだけじゃ比べられないけど。ルートにもよるし。
※2・・・標高が高い山は夏でも涼しいし登った時の嬉しみが大きいので楽しい。
※3・・・もし本当に行く時は死なないように注意してね。装備とか計画とか経験とか。


長野県の車山でスノーシューしてきました。右上の怪しい雲が・・・。

 

 
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