地図を眺めていると、市や町などの一部分が、別の市や町の中にあるという例を見かけることがある。いわゆる「飛び地」というやつだ。
地図の中で偶然飛び地を見つけると、なんだかうれしい気持ちになる。おっ、珍しい!という、発見の喜びがある。
「飛び地」という呼び方もかっこいい。どうしてそうなったのか、不思議に思う気持ちも湧いてくる。今回見つけたのは、千葉県の船橋市の飛び地だ。
地図では見たけれど、実際行ったことはない。どんな風になっているのか見に行ってきました。
(小野法師丸)
●分断された気になる町
呼び方が印象的だったり、なんとも不思議感あふれる飛び地。その実態を探るために今回訪れたのは、千葉県の船橋市の飛び地だ。
地図中、薄い水色の部分は船橋市、アイボリーの部分は隣接する鎌ヶ谷市となる。 中央にある「丸山」という町名の部分も水色なので船橋市であるわけだが、他の部分と離れ、完全に鎌ヶ谷市に囲まれていることがわかるだろう。
どうしてこうなったんだろう。実際にはどんな風になっているんだろう。そう思って現地に行ってみたわけだ。
というわけで、現地入り。この写真は、上の地図で言うと右下のあたりの「馬込町十字路」の近くから、大体西の方を向いて撮ったものである。
電柱の表示にある通り、私が立っているところは丸山なので船橋市。電柱に隠れて左奥に見える建物はスーパーなのだが、ここはもう鎌ヶ谷市となる。そう、地図で発見して興奮した飛び地に、実際にいるわけだ。
ところで、あたりを見回していて気になったのはこれ。
手打ち讃岐うどんの店、「おぴっぴ」である。
印象的な響きの名前の店。もう少しで「おっぱっぴー」である。惜しい。
店主もおっぱっぴーが流行したのを聞いて、「うわー、惜しいなー」と思ったのではないだろうか。
先ほどの写真の地点から、西の方に向かって歩を進める。細く鎌ヶ谷市となっている部分を進んでいるわけだ。
上の写真の地点は電柱の表示でもわかるように「東道野辺」の町内。ここは鎌ヶ谷市になるわけだが、すぐ右側はもう船橋市である丸山となる。境界地帯なのだ。
飛び地ゾーンをずんずん進む。ここが地図で見て「おっ!」と思った飛び地かー。
………。
「あふれ出る飛び地感」「ぐいぐい迫ってくる飛び地」などと適当に書いたが、写真からそうしたテンションを読み取ることができるだろうか。できないと思う。
現地に行った私でもそんなものを感じることができないのだから、それで当然だと思う。
そんな中、異様なテンションを放っているものを発見。
建物の壁に沿って設置してある階段の登り口。そのふさぎ方がすごい。登られせない気まんまんである。
がっしりと封鎖されるより、なんだかわからないヒモを多用したこの例の方が、「登るな!」という気合いのようなものが前面に出てくる。
おっぱっぴーもこの階段も、飛び地と関係ない。
地図で発見して興奮した飛び地だが、実際に行ってみるとそこだけ色が違っていたり、境界線が引いてあったりするわけではない。飛び地だ飛び地だと盛り上がっている様子もない。あくまで地味に普通なのだ。
飛び地そのものに興奮できない。