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チャレンジの日曜日
 
ちょっとだけタイムカプセル

●タイムカプセルを埋めに行く

手紙を書いているあいだ、天気はきわめておだやかだった。ところがカプセルにものを詰めだしたあたりから雲行きがあやしくなり、いざ埋めようと外にでたら、風が吹き荒れ、ミゾレまじりの雪がはげしく降りつけていた。雪はいい、でもミゾレはいかん。濡れるじゃないか。しかしながら手紙もカプセルも日付を今日にしてしまっている。どうしても埋めないわけにはいかない。

なんだってんだ急に


目星をつけていた場所に移動する。なにしろ穴を掘るのだ、勝手にそのへんでやったら怒られるに決まっている。なのでちゃんと埋める場所の候補をさがしていた。そしたら案外近所に、冬にはまったく人の姿のない小さな公園があった。まさに穴場である。

いま、おもしろいこと言いましたよ。

 

春を待てずに公園を雪かき(31歳男性)

穴場周辺。ほんとに公園なのか

公園へとつながる橋の渡り口には雪がどっさりと積まれていた。やはりここ最近は、誰も出入りしていないようだ。おかげでものすごく雪深い。長靴が意味をなさない道なき道を、梅の入っていそうなタイムカプセルとスコップを抱えて突き進む。なんとか目的地までたどりつき、とうとう穴掘り開始だ。


気合いじゅうぶん

一見やる気のみなぎった写真だが、じつはこの直前、ほかの場所にスコップを突き立てたら下がコンクリートで両腕に衝撃を受け、少なからずテンションが落ちている。


穴掘りというより雪かき


まずは大量に積もった雪をかき捨てる。こんなに深いんだったら雪の中に埋めてもいいんじゃないのとおもうが、1週間後にもし雪が溶けていてタイムカプセルがすっかり顔をだしていたらあまりに興ざめなので、やっぱり土の中に埋めるべきだ。


やっと土が!
土かてー

雪の下に眠る大地はカチカチに固くなっていた。しかも枯れた草が表面を覆っていて、掘り返すのが容易でないのだ。どうやらぼくは穴掘りを甘くみていた。


えー

寒さのせいもあり、仕事がはかどらない。
ちくしょう、東北の冬はぼくのおもいでづくりすら阻むというのか

ふと川を挟んだ対岸に目をやると、自転車を押した男性がこちらを眺めていた。どんなふうにみえているのか。真冬に大人がどうしても公園で遊びたくて雪かきをはじめたとでもおもわれてないだろうか。

つい客観的になり、なおさら手の動きがとまる。

考えるな
考えるなって

●カプセルは一足先に未来へ

そうだ考えてる場合ではない。もし、いまのおじさんがぼくを不法投棄にきた人間と勘違いして通報でもしていたら大変だ。

「来週掘り返すタイムカプセルを埋めていただけです」

と言って、ああそうでしたかと了解してくれる警察官がいたらぼくは友だちになりたい。

慌てて仕事を再開し、カプセルを埋められるだけの穴を掘った。

カメラを意識しすぎて埋め方が不自然になってる人

土と雪をかぶせなおす

さて、場所を適当に掘りはじめたため、このままでは1週間後にどこへ埋めたかわからないという事態が起きてしまうことに気づく。とりあえず近くの樹からの歩数を数えて目安とすることにした。


樹から6よろめき

ちょっとざっくりすぎる気もするが、これで安心だ。

タイムカプセルを埋め終えて、とにかく今は寒い。風ですっかり唇が荒れてしまっている。さっそく新品のメンタームを使わねば。

帰宅してメンタームを塗り、やっと落ちつく

さて、タイムカプセルという一連の作業のあるピークは、詰めるものを選んだりつくったりする準備段階にあるとおもう。未来について考えるのはその間で、実際に穴を掘って埋めてしまえば次にお目にかかれるのはふつう何年も先のことであり、その時点でタイムカプセルに対するテンションは落ちざるをえない。

しかしながら今回のちょっとだけタイムカプセルは、すぐ1週間後に掘りだすものだから、埋めた後も一定のテンションが持続するという利点がある。もちろんそのテンションの値が、ふつうのタイムカプセルに比べて相当低いものではあることは否めないだろうが。

未来をおもう
忘れるほうが難しいほどすぐ掘る


 

 
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