2.銭湯の隣のコインランドリー
コインランドリーの場所で最もポピュラーなのが銭湯の隣だ。ちなみにコインランドリーの稼働率が最も高いのは日曜日だという。しかし今日がその日曜日だというのに銭湯がまだ開いてない時間に行ったせいか、乾燥機も使用者がいなかった。しかたがないので、ソフターを入れて空運転をすることにしたのだが…
銭湯の匂いが混じる
おお、ソフターを入れただけだがちゃんとコインランドリーの匂いだ。しかも銭湯の香りが混じっている。洗剤とも違った石鹸の香りである。番台に座るお母さんは今ごろは浴槽を掃除しているのだろうか。スポーツ新聞を着替え場に置き、今日のチャンネルを気にするのだろうか。8時台は歴史ドラマ。9時からはニュース。今日も滞りなくNHKで決まりである。と、ランドリーの匂いをかぐはずが銭湯の未来(今晩のこと)が見えてしまってハッとする。星3つ。
これは乾燥機が発する匂いなのか? (乾燥機メーカーの方に話を聞いた)
――やはり御社にもこの匂いのファンが多い?
いや、そんな話は聞いたことがないですね。お客さんからも聞いたことがないですし。
それと新品は匂いがしないんですよ。多分、おっしゃられてる匂いというのは洗濯物か、ソフターの香りが強いと思うんですけどね。
――ソフターも何も入れなくても匂うように思いますが?
前の人が使ったソフターの匂いだと思いますよ。けっこう香りが強いですからね。
→匂いの元はソフターか?
3.大型コインランドリー
都内最大のコインランドリーを調べていたところこれといってめぼしい情報がなかった。その代わり都内で大規模といわれるランドリーの大体の感触はつかめた。ここは乾燥機だけで9台。スニーカー洗いの洗濯機があったり、有人だったりする。最大とはいえないまでも、最大規模だといえる大きさである。
場所は環七の上馬の交差点にあります。駐車場もあるよ。
プレーン(洗濯物+温風)な香り
おや?匂いが少ない!さきほどの無臭のソフターのせいだろうか、匂いがぐぐっと控えめなのだ。香るのは洗濯物、綿と水と洗剤のあの匂いが熱風にあてられて上がっていく蒸気、なるほど、食パンに何もつけないで食べるみたいなことか。プレーンでいい。いや、プレーンがいい。飽きない匂いで星三つ。
4.三軒茶屋、銭湯の隣ランドリー
やはりポピュラーなのが銭湯の隣。ぶらぶら歩いていると発見したのがこちら。
うさぎマークソフターの匂い
また変わった!やはりソフターか?乾燥機の匂いとはソフターなのか?ベースにあるのはいつもの洗濯物と温風の匂いだが上に乗っているのは馴染みのない匂いで、さきほど購入したソフターの匂いと近い。柑橘系の香りだろうか、いや、うさぎの香りだろうか、何だか分からないがいい匂いである。いや、いい匂いだな。ああいい匂いだなあ。星3つ。
そもそもソフターの匂いとは? (ソフターの箱に書いてた会社に聞いた)
――いい匂いだと思うんですが社内でもファンが?
いや、そんな人はいないですね。お客様からもそんな反応はなかったですし。うちは卸なので箱に入ったままの状態でたくさん置いてあってあまり匂いはしませんね。
――これってそもそも何の香りなんですか?
うちがメーカーに注文して作ってもらってるんで、そこに連絡して聞いてみますよ。教えられるようだったら連絡しますので。
→あっさり暗礁に乗り上げた
5.銭湯の隣のオールドスクールなランドリー
三軒茶屋ディープトライアングルと勝手に呼んでいる世田谷通りと246に挟まれてごちゃごちゃ込み入ったところにある銭湯とランドリー。ソフター自販機などが古くておもしろい。
僕にとっての基本形はこのソフターだ
トタンの塀が高くて換気扇の位置が分からない。大体この辺りかと思うところでスーハーがんばってみると、した!いつものあの匂いである!というのも、ここのソフターは序盤の2店と同様の匂いなのであって僕はこの匂いが一番好きなんだと実感できた。いや、いいな。これはいいな。やっぱりいい。星は3つ。それにしても本当にいいな。
ソフターの会社の方から電話が入った
――はい、大北ですけども
あ、大北さん?先ほどのソフターの香りが分かりましたよ、ジャスミンでした。
――ほんとですか?
ジャスミンです、とメーカーの方が言ってましたよ。
――え?これほんとにジャスミンなんですか?ほんとに?ジャスミンティーとかの?あれが?これ?
ジャスミンの匂いでした
僕の考えるコインランドリーの匂いとはもっと生活に密着したもので、庶民の匂いというか小学生のころにレジャー感覚で銭湯に行ったら同級生が生活の一部としてごく当然のように銭湯に来てて、あ…と思った瞬間にかぐような匂いなのだ。それがジャスミンの香りなんだという。
そんなボサノバが聞こえてきそうな浮ついたものではない、と訂正したい気持ちもあるが、まあちゃんとした人が言うのだからジャスミンなんだろう。ということで今はジャスミンな気持ちでいる。
そして意外にも花の匂いだということで序文で言ってたのはあながち間違いでもなかったのだ。この原稿も「この人がかいでいるのはジャスミンの香りなのだな」という思いで見直せばまた違った味わいが出てくるかもしれない。
何にせよ、コインランドリーの匂いをかぎまくったので、充足感だけはえらいことになっている今である。