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ちしきの金曜日
 
人が通れない海底トンネルが開通しました

海底ではなくてほぼ地底

トンネルは全長2.4キロ。今回の見学会ではそのうち250mを歩くことができる。視界の先は見渡す限りのトンネルである。美術の時間に習った「消失点」という言葉を思い出す。

実際に使われるときはここに直径1.8メートルの送水管が通される。使われはじめたらもうこの景色は見ることができないのだ。

今回の見学会のコピーは「歩くことができる最初で最後のチャンス」だ。

これまで地下の施設を見せてもらうことがあっても楽しく見学してきたのだが、ここだけは『閉所恐怖症の人だったらパニックになるかも…』と思ってちょっと怖くなってしまった。

いや、僕は閉所恐怖症でもないし、なんで知らない人の心配をしているのか。いかんいかん。もっと楽しいことを考えなければ。

なのにこの案内

う。ここから海の下だ。もしトンネルに万が一のことがあったら海水でゴボゴボゴボー!ではないか。しかし水道局のかたいわく、

「東京湾は深さが12mしかないので、このトンネルは約50m、海底の40m下にあるんです」

だそうだ。海底というか、地底だ。よくわからない理屈だが、なぜだか安心した。大丈夫、ここは地底だ(でも50m)。

 

24時間体制で3年で完成

トンネルはカーブを曲がると品川方面に一直線に伸びていた。

カーブを描くトンネル

このトンネル、3年で完成したそうだ。意外に早い。地下鉄など都心部を通るトンネルは夜間しか工事ができないが、ここは海の下、交代制で24時間掘り進めたとのこと。

僕が飲んだり寝たりしているあいだに水道局は東京湾の下にはこんなすごいものを作っていたのだ。

やがて今回の見学会で行けるもっとも遠いところへ。まだこの先、2キロ以上トンネルは続いている。

見学会の折り返し地点から先を望む

トンネルの全長2.4キロのあいだ、縦坑(上にあいてる穴)はまったくない。なにしろ海の底だ。点検の人も入ったらずっと出られないそうだ。うわー…(また怖くなってる)。

 

鉄板を増やすもてなし

折り返し地点から先、入れない部分は足下の鉄板が2枚になっている。今回の見学会のために鉄板を5枚にしたそうだ。鉄板の数を増やすもてなし。2枚の鉄板をよく見ると、左右にレールがある。

鉄板の左右にレールがあるのがわかるでしょうか。
いまここ

運搬用のトロッコ用の線路だという。おお、トロッコ。トロッコの響きで少し和んだ。そして来た道を戻りトンネルの入り口へ。

出口のところのトンネルの壁がちょっと違うことを教えられた。たしかに違う。これはシールドマシン(トンネルを掘り進める装置)なんだそうだ。

奥が通常のトンネル。手前がシールドマシン部分
シールドマシンを切った跡

品川側から掘り進んできたシールドマシンをそのままトンネルの一部として利用しているのだ。ちなみにこのシールドマシンは1日に10m掘り進むことができるそうだ。早い。

だけどトンネルの内壁に貼っているパネルのボルトを締めているのは人だと言っていた。

「これぐらいだと人の手のほうが早いから」

だそうだ。24時間体制で掘っていることや、ボルトを手でしめると聞くたびにその作業をしている人の気持ちになる。


水道ってすごいね

今回のトンネルができると標高が低いところを通る送水のルートができるため、水圧を上げる必要がなくなる。水圧を上げるための電気代の節約になるそうだ。

わかりやすい。わかりやすいけどそのためにトンネルを造ってしまうところがすごい。ふだんはメーターの検針をしているところしか見ないが、すごいものを作っていたのだ。水道局。

地味なあいつがサンバチームに入っていた、みたいなことか。うん、全然違う。

コップもらった

 



 
 
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