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ロマンの木曜日
 
会社名を少しだけ変えたい

今年、僕の会社デジタルビイムは設立から9年を数え、設立日の7月1日以降は10年目に突入する。あっという間の10年間であったが、設立した年に生まれた子供が小学校4年生になってそろそろ思春期に突入しようかという頃である。それなりの年月が経った訳だ。これからも今まで以上に頑張らないといけない。

「成長する為には常に変わり続けなければならない」   

と、この前読んだビジネス本に書いてあった。次の10年間を実り多きものにするために、思い切って何かを変える事が必要なのだ。そこで、会社名を少しだけ変える事を思いついた。具体的には「デジタルビイム」を「デジタルビ〜ム」にするのだ。長音を「〜」で表記する事により、いかにもビームが出てそうな名前になる。

(text by 住 正徳



「社名の由来」

そもそも「デジタルビーム」とせずに「デジタルビイム」としたのは、姓名判断に詳しい友人からのアドバイスであった。長音を「イ」として一画増やすと画数が良くなるというのだ。その助言を素直に受け入れ、会社名を「デジタルビイム」とした。ちなみにその友人は野末陳平さんの本で姓名判断を学んでいた。

そんな思い入れのある社名である。変えてしまって大丈夫だろうか。画数も変わってしまうので良くない方向に向かってしまうかもしれない。しかし、もう変える事に決めたのだ。躊躇している場合ではない。


ヒントはカレー屋さん

ビームの長音を「〜」に変えるアイデアはカレー屋さんで思いついた。本格的なインドカレーを安価で提供してくれるお店、サムラートだ。


2種類カレーセット

サムラートでは「2種類カレーセット」を頼む事にしている。チキンカレーとマトンカレー、2つの味が楽しめて980円とお得だ。本当はライスで食べたいのだが、いつも店員さんからナンを薦められる。常に調理場から「パンっパンっ!」とナンを作っている音もしているので、ここではナンを頼まないといけないのだと思う。


ナンを作る職人さん

サムラートが何故ナンを推してくるのか。それはビームの長音を「〜」に変える事と関係ない。関係あるのはサムラートの看板だ。


サムラ〜ト

長音が「〜」なのだ。これに気付いた時、僕の心は動かされた。長音を「〜」とするだけで、看板全体からカレーの匂いがしてくるようだ。「サムラート」と「サムラ〜ト」、こうして文字で書いてみてもその差は歴然である。カレー屋さんはどっちだと聞かれたら、10人中6、7人は後者の「サムラ〜ト」を選ぶだろう。

そういえば自動販売機で良く見かけるあの文字もそうだ。


あったか〜い

本当にあったかそうだ。「あったかーい」ではこの温もりは表現出来ない。「あったかい!」と大きな声で叫んでいるようである。

「サムラ〜ト」と「あったか〜い」。この2つの事例を目の当たりにして、ビームの長音を「〜」にする事を決めた。仕事への情熱、愛、ぬくもりを「〜」の中に込めるのだ。


いつもナンを残してしまう



申請手続き

しかし、「今日から弊社はデジタルビ〜ムです」、と宣言したところで、社名変更が完了する訳ではない。会社法及び商業登記法に基づいて、「商号変更」という手続きを踏まないといけない。

手続きには2つの書類が必要だ。1つは「株式会社変更登記申請書」で、もう1つは「株主総会議事録」である。株式会社変更登記申請書は法務局にひな形があるので、それに必要事項を記入すれば良い。


申請書に新しい社名を記入

初めて手書きで「デジタルビ〜ム」と書いてみた。思ったより書きにくいがそのうち慣れるだろう。


また、申請には「登録免許税」というものを支払わなくてならず、その金額は3万円である。社名を変えるだけで3万円もかかるのだ。それだけの金額をかける価値はあるのか、再び迷う。それでも、今後10年、20年と愛のある仕事を続けるための社名変更である。3万円の投資は仕方ない。

申請書の準備ができたので、後は「株主総会議事録」を用意しないといけない。会社の定款を変更する場合、僕の一存で実行する事は出来ないのだ。株主の同意が必要だ。弊社の株主は僕と妻と叔父の3人だ。残り2人を招集し臨時株主総会を開催した。


臨時株主総会

株主総会は順調に進行し、社名変更の承認を得た。その旨を議事録に残し、それを申請書と一緒に法務局に提出する。


臨時株主総会議事録

当会社は、株式会社デジタルビ〜ムと称する



法務局に提出

準備は全て整った。「株式会社変更登記申請書」と「株主総会議事録」を持って、法務局渋谷出張所に向かった。


法務局渋谷出張所

ここでは、不動産登記、商業・法人登記などの事務を取り扱っている。社名変更の手続きはどこの窓口なのか。案内版で確認する。


窓口を確認

法人登記の申請は3番窓口らしい。そこに書類を提出すれば手続きは完了だ。窓口に向かう前に少し考えた。

本当に「デジタルビ〜ム」でいいのか。

いい。
というか、むしろそうしなければいけない。
窓口へ急ぐ。


窓口に提出

窓口の職員さんに書類を手渡した。記載内容を確認してくれている。

「登記の事由、商号の変更。登記すべき事項、平成20年4月16日商号変更。商号、デジタルビ?」

「〜」の部分で職員さんの言葉が詰まった。

言葉を詰まらせる職員さん

「これは、長音ですか?」
「いえ、長音ですが、〜(にょろ)です」
「これは駄目ですね。商号に記号は使えませんから」

え!
なんと、会社名に「〜」を使う事は出来ないと言うのだ。
いくつかの特例を除いて、社名に記号を使ってはいけない。そう決められているという。


使っていい記号を説明してくれた職員さん

社名に使える記号は6つだけ

アポストロフィーは使えるのに「〜」は駄目なのだ。最悪、ハイフンを長音の代わりにするという手もあるが、それだと「サムラ〜ト」効果は見込めない。


あきらめた

せっかく色々な書類を揃えたのに「デジタルビ〜ム」は受理されなかった。仕事への愛やぬくもりを「〜」に込めたかったのに。僕の目論みは商業登記法の壁に阻まれてしまった。


でも、あきらめない

Jackpot : Jackpot

提案してみようか

お客様の声箱に「社名に〜を使えるようにしてください」と入れようかと思ったが、きっと黙殺されるに決まっている。「デジタルビ〜ム」に匹敵するような新しい名前を考える方が賢明だろう。使える記号を考慮すると「デジタル&ビイム」が、今のところ最有力である。

Jackpot : Jackpot
株主



 
 
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