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ちしきの金曜日
 
灘の酒蔵めぐり

おっちゃん

「おっちゃんな、夏は造るのに忙しくてな、でもあんたらラッキーやわ。何?大学生か?どっからきてん。東京かーほんまかーこれが精米する桶やねん」

おっちゃんの会話のリズムが全然つかめない。こちらは要所要所で反応しようとするも「うぁっはい、あ。」とか変な発声になる。
でもおっちゃんはこちらの話を聞いてないわけではないのだ。おそるべし。


町工場のような雰囲気。
大吟醸の精米率は40〜50%。真珠みたい。

 

おっちゃん

おっちゃんは面白トークをしていると思うと、いつのまにか真面目に酒造の話をしていたりする。授業の合間に面白い話をする人気者の先生のようだが、境目がなめらかすぎてわかりづらいのだ。

変化球だらけの話術にどう対応してよいか迷いながらも、おっちゃんギャグの作用で笑いが絶えない講義だ。見学者4名を前にしたおっちゃんは楽しそうだった。


「昔は大きい樽で沢山造ってたんやけどなあ、今は少なくなってしもてん」ちょっと淋しそうなおっちゃん。
「大吟醸うまいでー」と我が子のように酒を見つめるおっちゃん。
二種類出してくれました。大吟醸と生原酒!
どこの試飲よりもたっぷり注いでくれた。サービス精神に感謝。
「酒粕食うか?」つぎつぎと振る舞われるおっちゃんサービス
うまい。ちぎっていくらでも食べられる。酒粕ってこんなにクセなかったっけ。

 

おっちゃん

酒粕は、濃厚なアミノ酸の味がした。

「二階もみてくか?今だーれもおらんけど。おっちゃんはおるけどな。ハハハハ!」

二階には麹室と酒母の仕込みをする広いスペースがある。

「菌が繁殖するからな、入る前に全身消毒や。夏にこん中入りおって麹つくっとるとサウナやからなあ。その後のビールがうまいんや!日本酒なんかのまへんでー。ハハハハ!」

密閉された狭い室に何人も缶詰になり麹を造る。考えただけでヘビーな仕事なのに、おっちゃん作用ですがすがしいほど台無しだ。


気温30度の製麹室のなかで長時間、麹をつくる。
低い天井、二重扉に密閉窓、裸の男たち。絵が浮かぶでしょうか。
オフシーズンはマリンバ発表会などが行われるステージと、座布団の良質さを熱弁するおっちゃん。
広い酒母仕込みスペースはギャラリーとしても貸し出している。

 

さよならおっちゃん

ためになる話をたっぷり聞かせてもらった。そろそろおっちゃんともお別れだ。

「夏に来るときは電話してから来るんやで!来てもおっちゃん仕事あるから相手せーへんけどな!ハハハハ!」

この酒蔵、おっちゃんに会いにいくためだけでも訪れる価値はある。

 

● 四軒目「神戸酒心館」

最後に訪れたのは大きな施設。蔵元のほか、料亭やイベントホール、ギャラリーなどが併設されており、イベントや寄席が頻繁に行われているらしい。


この日はアカペラコーラスグループのコンサートがあり、さわやかなハーモニーが聞こえていた。客足も絶えないようだ。

とりあえず試飲、試飲。
きき酒セット頼もう。

蔵見学は3月上旬で終了していた。それならと、カウンターできき酒セットと肴五品盛(共に500円)を注文。

これが大正解のチョイスで、本当にお酒と肴が合う。あたりまえだ。もともと珍味は日本酒に合うものが多いのに何を今さらと思われてもしかたがない。私はどんなに日本酒に合うとされている肴も、今まできちんと日本酒に合わせて食べたことがないのである・・・。さすがに己をあわれんだ瞬間だった。

こういう発見ができるのは嬉しい。
たまには自分に合う日本酒をみつけて珍味をたしなんでみようと心に決めた。


お酒の種類は日替わり。自分は純米吟醸派かもしれない。

五品盛って言われて七品あるとめちゃくちゃ嬉しい。手前のにこごりみたいなのがうますぎる。

日本酒に歩み寄れた

おちょこ一杯ずつの試飲をしながら三駅ほどの距離を歩く。酒造りの現場と杜氏にふれた一日が終わった。なんといっても堂々とお酒をのみながらでも社会見学と銘打てるのは、酒蔵の見学しかありえないだろう。
古い工場は足を踏み入れただけでノスタルジックな気持ちになる。夏になったらおっちゃんの酒造りを見学しに行きたい。

買った酒粕。醤油でたべてもいける。

 
 
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