思い違いのアーチダム
次の絵は、僕と同い年の男性が描いたもの。一見普通のアーチダムのように見えますが、実はこれ、決定的な思い違いをしています。
下の写真を見てもらえば分かる通り、アーチダムは水圧をアーチ作用で受け止める構造なので、湖側に向かって円弧が張り出していなければならないのです。
実は今回もっとも多かった思い違いがこれ。つまり、多くの人々はアーチ形しているダムというものを認識はしていても、ではなぜアーチ形しているのかについてはまったく考えていないということが分かりました。
そういう構造を少しでも意識すれば、建設地点の地質やコストの関係でダムには様々な形式があるんだ、ということも分かると思うのですが、僕だってパソコンの内部構造とかまったく理解しないまま使ってるわけだし、人のことは言えませんね。
放流させたがる
また、もうひとつ目についたのは、みんな無闇に真ん中へんに穴を開けて放流させているところ。実際にダムをめぐってみると、見える場所で放流していることは滅多にないのですが、やはり「ダム=放流」という図式も強烈に刷り込まれているようです。
でも、その水が出ている穴の形状とか、せき止める水門とかを細かく書けた人は残念ながらいませんでした。これは義務教育過程に入れないとダメだな。
また、下の絵はそれぞれ別の人に描いてもらったもの。3つともアーチダムで、アングルといい全体のバランスといい、なんだか似ている気がしますが、実はこれを描いた3人は同じ会社。でも3人とも別々の機会に描いてもらったのでほかの人の影響は受けていないはず。いろいろな会社で調べて、社風によってアーチか重力式かに偏っていたら面白いと思います。
独自の視点
これだけたくさんの人からサンプルをもらうと、中には型にはまらない、独自の視点を持っている人にめぐり合うこともあります。
次の人が描いたのは何と、アーチダムを俯瞰で見たところ。一瞬何が描いてあるのか分からず、本人に確認してようやく理解しました。
この方は普段からしばしば神がかった言動が見られ、まさに「神の視点」と言っていいかも知れません。
独自すぎる視点
そして、ふつうのダム好きには理解できない、ダムとして読み取れない絵を描いてくれた人も多くいました。ひとつ言っておきたいのは、これらの絵を描いた人たちに対して僕は怒っているのではなく、ダムはそこまで意識されていないのか、とびっくりしているのです。
頭の中にある像を紙の上に出力する技術に個人差があるとはいえ、ここまでの無意識っぷりはすごいです。
ダムを一般に広く認知させたいなんて、僕のやっていることは雲を掴むようなことなのかも知れない、とすっかり気落ちしたところで、期待の当サイトライター陣の作品を見せてもらうことにします。