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フェティッシュの火曜日
 
ピカピカのおじさんと別府、地獄。

かばの口の中を見たのは何年ぶりだろうか
たしかに楽しいのだがこれは動物園の楽しさなのでは…

 

と思ったところに真打登場!山地獄っ!

山地獄もうそみたいなところだった

山 地獄に入ってすぐ見えるゾウに餌をやって、ラマに挨拶をして、カバの口を見て…とここが地獄であることを忘れさせておいて最後の最後に地獄がきてドーン! である。油断させておいて地獄。カーブの後のストレートが速く見える、みたいなことだろうか。今までで一番地味ながらもやっぱり地獄っていいな、と思わさ れた「緩急をつけたピッチング」地獄である。


なんの地獄かわからないが、道端にぽつんと地獄がある。昔は何十箇所も地獄があったらしい。

こんなうそみたいないい景色は海地獄の入り口

 

ブルーできれいな海地獄

一時間じゃめぐれない

地獄めぐりのチケットを買うさいに、売り場のお母さんから「一時間くらいで8つ全部見られますよー」と聞いていたのだけど、3時間使って6つ周ったところで閉園時間となってしまった。秘宝館に行かなきゃよかった。

海 地獄はきれいな景色で真っ当に評価できるのだが、その次に行った鬼石坊主地獄がすごかった。どろっとした粘性の地獄がボコボコいってるのがメインなのだ。 ここで流れていた静かな時間には本当に恐れ入ってこのときばかりは熊八さんのことをすっかり忘れ、ただただボコボコのあぶくの写真を撮っていた。


温泉の概念が根底からくつがえされる地味さ、これぞ温泉ハードコア

粘性のあぶく写真コンテストが仲間内で行われた
ちょっとやばすぎるんじゃないか、と問題になった一枚

 

きれいなポストカード地獄

道を拓いた熊八さん

鬼石坊主地獄(上の粘性のあぶく写真)、地味だった。けれどそれがよかった。名前との落差がうわぁ!と思うよさだった。ところでこんな地獄めぐりが楽しい別府よりも今は湯布院などが人気あるらしいのだが、この湯布院というのも熊八さんが開発したんだそうだ。

当時湯布院の気持ちよさにしびれた熊八さんはトラックに石工と人夫を乗せて、別府〜湯布院間の道を岩とか砕いて文字通りガンガンその場で切り開いていったらしい。それも一日で。夜が明けると畑ができてた、という各地に残るだいだらぼっちみたいな話だが、現実なんだそうだ。


これがかつて日本で一番いい景色に選ばれた(熊八さんのおかげで)別府の湯けむり

 

あまりにも気持ちよくて寝た(この旅は本当によく寝ました)

山は富士、海は瀬戸内、湯は別府

熊 八さんが最も活躍したのは別府の広報活動、宣伝においてだったみたいだ。昭和二年に大阪毎日新聞が募集した「新日本百景」に市民にはがきを配りまくって別 府を応募させた。トップ当選したのだという。そして当時珍しかった水上飛行艇で新聞社にお礼に行く途中、「当選御礼、別府温泉」と書いたビラを神戸、大阪 に撒いたらしい。ほとんどこの人一人でやっている話だ。本当に嘘みたいな人だ。

ありがとう、熊八っつぁん(熊八さんの影)

こ うして別府に魅入ってしまったわけだが、今富士山の山頂に看板立てたら怒られるだろうなあ、と思う。大らかな時代の嘘みたいな話、というのにどうしても憧 れてしまう。いやー、よかった。宮崎にも鹿児島にもこういう伝説のおっさんがいるらしい。どこにでもいるものなのかもしれないので、もう少し探してみるこ とにします。

参考文献 『大分学・大分楽』辻野功・編 2003年 明石書店
※1 同書p.129より引用


 
 
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