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ロマンの木曜日
 
52年ぶりに巨人がやって来る
巨人帽で闊歩する巨人ファン

巨人、といっても巨神兵のように大きな人の事ではない。プロ野球の巨人軍の事である。去る4月22日、栃木県の宇都宮で52年ぶりに巨人軍の公式戦が行われたのだ。52年ぶりである。宇都宮にしてみたら皆既日食くらい珍しい出来事が起きた訳だ。相当盛り上がっているに違いない。現地の様子を探ってきた。

 

(text by 住 正徳



52年前、宇都宮

52年ぶりに巨人戦が行われるのは、栃木県宇都宮市内にある清原球場という球場だ。東京から新幹線で50分、宇都宮駅で下車してバスに乗る。巨人戦が行われる当日は、15時から臨時バスが出るらしい。僕は13時から発売される当日券をあてにしているので、臨時バスは使わず、タクシーで13時前に球場入りする事にした。

新幹線に乗る前に、52年前はどんなだったのか。
当時の様子を知りたかったので、国会図書館で当時の新聞を調べてから行く事にした。


52年前の報知新聞一面

昭和31年7月27日付けの報知新聞だ。26日に宇都宮で行われた巨人・大洋戦の結果を大きく伝えている。「巨人・首位を守りぬく」「別所、二塁すら許さず」と見出しにあるように、この日、巨人はエース別所の好投により1-0で大洋を下している。

試合前の様子を、当時の新聞は以下のように伝えている。

「球場をとりまく自転車の群れ、スタンドに鈴なりのファン、花束贈呈に地元名士のあいさつ、つづいて楽団の演奏と地方球場特有なお祭り気分の中で」

きっと、相当盛り上がっただろうに、それから52年間も巨人は宇都宮で試合をしていないのだ。当時、野球少年だった子供が60代になっている訳で、今日はそんな60代の人たちが沢山来ているかもしれない。

あの頃の夢をもう一度、である。


2008年、宇都宮

宇都宮へ向かう前、東京駅のホームで出発時刻を確認していたら体の大きな人とぶつかった。振り返ってみると、そこには中畑清さんがいた。


キヨスクで買い物をする中畑清さん

僕と同じ新幹線で宇都宮に向かうようだ。解説のお仕事だろうか。 野球選手は本当に大きい。


宇都宮到着

東京から50分ほどで宇都宮駅に到着した。さぞかし盛り上がってる事だろう、と思ったが、駅構内に巨人戦の盛り上がりは感じられない。かろうじて、案内所の中に「強くあれ、巨人。」というポスターが貼ってある程度だ。52年ぶりなのに。

球場までの臨時バスはまだ出ていない。タクシー乗り場に行くと僕の前に大きな男の人が並んでいた。

中畑さんだ。大きい。


タクシーに乗り込む中畑さんと笑顔で誘導するおじさん

誘導のおじさんは中畑さんに気付いたらしく、とても上機嫌だった。もしかしたら、このおじさんも52年前に別所投手の好投を目撃しているかもしれない。

僕は中畑さんの次のタクシーに乗り込み、清原球場を目指した。


タクシーで清原球場へ。前のタクシーに中畑さん

タクシーの運転手さんは野球に詳しい人で、最近の巨人について色々な意見を述べ始めた。

 ・小笠原にバントをさせた事のデメリットについて
 ・二岡の体調管理について
 ・生え抜きの重要性と二軍選手のやる気
 ・巨人の4番の重圧

俺は巨人ファンじゃない、と前置きを入れるのだが、結構巨人の事を知っている。52年間も放っておかれたから拗ねているのだろうか。

試合が行われる球場について聞くと

「奇麗な球場だよ。滅多に使ってないから」

と言っていた。
その言葉の裏には「せっかくいい球場作ったのに、巨人は来ない」という思いが込められているように感じた。


俺は巨人ファンじゃない

駅から20分ほどで球場が見えてきた。その頃、車中の話題は野球ではなくマイホームの話に移っていた。最終的に「家を買うなら宇都宮がいい」というアドバイスをもらい車を降りた。宇都宮は災害が少ないからという理由だが、どうしてそういう話になったのかは思い出せない。


52年ぶりの巨人戦が行われる清原球場

予定通り、当日券が売り出される前に球場に到着した。
まずは当日券を手に入れないといけない。





 

 
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