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ひらめきの月曜日
 
食べられるバランを作ろう


ラベルも値札もない。本当にどうして買ったのやら。

台所の引き出しを整理していたら、なぜかバランが大量に出てきた。いつ、何の目的で買ったのかまるで覚えてないのだが、おおかた弁当にでも使うつもりだったのだろう。

存在を忘れていただけあって、実は一度も使ったことがない。私が弁当を作る際のテーマは「質実剛健」であり「質より量」なのだ。いちいち彩りなど気にしていたら、毎日の弁当作りが億劫になってしまう。茶色っぽい弁当で結構。…あ、だから彩り用に買ったのかしら?

ま、私の記憶力衰退の話はどうでもいい。バランだ。今回はバランにぐっと迫りたい。

バランについてあれこれ考えているうちに、ある答えが出た。食べられるバランを作りさえすればいいのだ。

高瀬 克子



バランの意味

ネットで少し調べてみたところ、バランという名前の由来は「昔は食べ物を葉蘭(もしくは馬蘭ともいう)で包んでいたから」だという。

なるほど。ここまでは納得できる。が、時は流れて現在のバランだ。彩り以外、彼らは何かの役に立っているのだろうか。汁漏れを防ぐわけでもなければ、殺菌作用があるわけでもなさそうだ。なにより食べ終わったあと、ゴミになるのが厄介で面倒な存在じゃないか?

そんなバランの現状を知るため、近所のスーパーへリサーチに出向いた。


ごはん部分は最初から仕切られており、バランは完全に飾りと化している。それにしても魅力的な弁当ですね。
寿司もこの通り。特に仕切りが必要な理由は見い出せない。
バランを2枚も使用。これは意義が少しだけ分かる。でも個人的にはなくてもいいと思う。
これもまぁ、ちょっとは理解できる。おいなりさんの汁がいけないんでしょう?

私が見た限り「なるほど、これはどうしてもバランが必要だ」と思える弁当は発見できなかった。やはり彼らの存在意義は「彩り」だけなのか。

たくさんの弁当を見ているうちに腹が減ったので、ついひとつ買って来てしまった。


しかもバランのない弁当を選択。というか、バランが入り込む余地なし。

「どうせなら、バランが使われている弁当を買うべきだったかな。でもトンカツには逆らえないもんな」などと独りごちながら付属のソースを取り出そうとして、思わず「ああっ!」と声が出た。


こ、こんなところに!

なんと小袋のデザインがバランである。なんなんだ!

ソースの袋が緑色って、ちょっとあり得ない配色のように思えるのだが、これがバランの形となると話が違ってくる。「ま、バランのつもりなら、しょうがねーなー」という気持ちになる。というか、なった。

そして「バランというのは役には立たずとも、食べ物と一緒にいて許される存在なのだな。彩り要員として重宝されているのだな」と思うに至った。

 

実用的なバラン

要は、バランを使いこなせるような余裕を心に持てと、そういうことなのだろう。私はトンカツ弁当から「フタを開けたときに楽しくなるような弁当を作りなさい」というメッセージを受け取った気がした。

うん。ならば使うさ。でも根がケチだし、やっぱりゴミが出るのは面倒くさい。

というわけで、食べられるバランの製作と相成ったのであります。


緑にすればいいんでしょ?
色素をダシ汁と白醤油に溶いてから豚肉を投入。
こんな状態になりました(切ってから煮るべきだったか)
ま、バランと言えばバランですが…。

味は普通の「煮た豚」だ。見た目は予想していたよりも悪いが、とりあえず緑にはなった。

うーむ。やはり白い食べ物の方がキレイな緑色に染まるのかもしれない。さらに、あんまり凹凸がなくてスベスベした物と言えば…。


「ボクのこと呼んだ?」
今回はバランの形に切ってから染めよう。
おお、バランだ、バラン!
が、煮るとクルンクルンに変形。

バランに適した食材探しは、意外に難しい。

熱を加えても形が変わらず、色が白くて、包丁での細工が可能な物…。

うん。これしかあるまい。


かまぼこ。これはイケると思う。
細工もしやすいし、薄くも厚くも出来る。
出たクズが、またウマイんだ。
煮た結果。変形せずに色だけ付いた!

いやはや素晴らしい。3つ目にして、ようやく理想の食用バランが出来上がった。

さて、肝心のバランは出来た。あとはこれを弁当に使用するだけだ。果たして、いつもの茶色い弁当は華やかになってくれるのだろうか。


では、詰めますよ。

 

 
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