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ちしきの金曜日
 
角の石を鑑賞する


ぼくのパソコンの中には「写真_未整理」と名付けられたフォルダがある。気になって撮ったものを、とりあえず入れておくところだ。ながらくほったらかしにしておいたら5Gぐらいの容量になっていたので、整理することにした。

そうしたら、神様をみつけた。

(text by 大山 顕



■なんでこんなもの撮ったんだろう

入っていた画像のそのほとんどが「なんでこんなもの撮ったんだろう?」と自分でも首をかしげるものばかりだった。たとえばこんな写真。


何を撮ろうとしたんだろう、ぼくは。アート気取りだったのか?

どうだろうか。

ぼく自身でさえ分からないのに「どうだろうか」って問われても困ると思うけど。

膨大な画像データを眺めていると同じような写真が何枚か出てきた。どうやら石を撮っていたっぽい。


アートではなさそう。

ははーん、そういうことか。

 

■家の角の石を撮ってたんだった

思い出した。家の敷地の角にある石を撮り集めてたのだ。そうだったそうだった。いやー、すっきりした。


ほほう、これはかわいいカドイシ(角の石のこと。今命名した)だ。

壁が傷つかないように板が挟んである点がかわいい。

すっきりしたのはぼくだけか。

要するに、街を歩いているしばしば見かける、コーナーを曲がる自動車が、あやまって建物や塀などに接触して傷を付けないように、住民の方によって設置されたと思われる石面白いなあ、と思ったわけです。面白いよねえ、あれ。

一番最初の写真はカドイシ(角の石のこと)の典型。どこに出しても恥ずかしくない、まさにカドイシのマスターピースとも言える作品だ。よくぞ撮っておいたな、自分よ。

2番目のものはやや不可解な物件。しっかりとコンクリートで固定されていて、安定感は評価できるものの、そもそも電柱があるのでクルマがここに接触することなどあり得ない。電柱はあとから立ったのか。塀が新しそうなので、昔はもっと違う位置関係だったのかもしれない。

それとも鑑賞用カドイシか。カドイシマニアへのサービスか。


3番目のものはさらに興味深い。ブロックの上に鎮座するスタイルは貴重だ。高さを稼ぐ意味もあまりなさそうなので目的が不可解だったが、よく見ると石と接合部が固めてある。右に向けて道が傾斜していることから、おそらく石が転がってしまうのを防ぐための策と思われる。

確かに石の右側が鈍角で、ごろん、と動きそうだ。一見単純そうなカドイシ業界だが、素材選びから慎重さが求められる、意外に奥深い世界だということがうかがえる良い例だろう。というか向きかえれば解決しそうな気もするが。


さながら枯山水のような趣のあるカドイシ造形。日本の伝統が息づく。

上の作品はかなりの逸品。コンクリートでしっかりと固められた安定感の高さもさることながら、その形が良い。機能性と芸術性が両立した好作である。カドイシが批評されることは少ないが、その世界は確実に進化していることがうかがえる。

何撮ってたんだか忘れてたわりには饒舌です。


 

 
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