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ロマンの木曜日
 
50年前の新聞広告

「写真は50年経つと作品になる」と知り合いのカメラマンが言っていた。どんな写真でも50年以上経つと、それだけで作品としての力を持つというのだ。確かに昔の写真ってだけで、何となく有り難い感じがする。経過した年月の分、「重み」みたいなものが増すのだろう。

で、前回の記事(「52年ぶりに巨人がやって来る」)で52年前の新聞を見ていて気付いた。新聞に掲載されている広告が、どれも味わい深いのだ。イラスト、写真、宣伝文句、どれを取ってもグッとくる。広告も50年経つと作品になるのかもしれない。

今回、そんな昔の新聞広告を集めてみる事にした。

(text by 住 正徳



今から50年前はどんな年だったのか?

今から50年前の新聞広告を集める前に、その頃は一体どんな時代だったのか、調べてみた。

50年前の昭和33年は岩戸景気が始まった年で、2月には長嶋茂雄さんが巨人軍に入団している。8月に、世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」が発売され、ホンダからは「スーパーカブ」が誕生した。東京タワーが完成したのもこの年の12月23日である。物価の目安として、ハガキは5円、封書は10円、大卒の初任給は1万3467円。この辺りの数字を頭に入れつつ、新聞広告を見ていくことにしよう。

 

国会図書館で新聞を検証

国会図書館で昭和33年の報知新聞、1年分を検証した。3ヶ月毎にリールに巻かれたマイクロフィルムをくるくる回して閲覧していく。今回必要なのは広告部分だけなので、主に新聞の下半分を見ていくのだが、これが想像以上に大変だった。1日10枚以上ある新聞を365日分である。3650枚からの新聞紙に目を通した計算になる。1年分見終わったら、すっかり目が回ってしまった。

後半、意識がもうろうとなりながらも、昭和33年の新聞広告の傾向がつかめてきた。頻出する広告として、

・自転車
・カメラ
・お酒

といった物が目立つ。
それぞれ、広告の内容は次のような感じだ。


自転車
山口シルバー高級実用車の広告

カメラ
巨人の与那嶺選手を起用した「ミノルタ16」の広告

お酒
野球選手のイラストを使用した「デンキブラン」の広告

自転車は15,500円で、カメラは6500円。大卒の初任給が1万3467円だった事を考えると、どちらも高価な代物である。そんな高額商品の広告が目立つのだから、岩戸景気も伊達じゃない。特に自転車の広告は、ほぼ毎日掲載されていて、上で紹介した広告以外にも以下のような物があった。

自転車・バイクの広告


「国民車」という名の自転車

燃費を売りにする125ccのバイク「ライラック号」

AAAの子供自転車

アベック向けのキャンペーンを展開する「ノザワの自転車」

自転車の広告はイラストのものがほとんどであった。実際、どのような自転車だったのか不明であるが、いずれにしても自転車の需要が高かった事は確かなようだ。

ちなみに、この年に販売されたホンダのスーパーカブも、発売前に大きな広告が出ていた。


「スーパーカブ」の広告

広告の中には、「生産に当たって」という本田宗一郎さんからのメッセージが書かれている。エンジン、機構、価格について、生産に当たっての熱い思いが綴られているのだ。

続いて、ジャンル毎に昭和33年の新聞広告を見ていこう。


 

 
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