街は住みやすい。なぜ住みやすいかというと、水平を基本にできているからだと思う。ある夜、酔っ払って水平を失っていたぼくは、気がついたら通販で角度を測定できる道具を買っていた。せっかくなので持ち歩いてみたら、やっぱり街は水平にあふれていた。なんたる安心感。でもどこかに、水平のふりをしてちょっとだけ斜めになっているものがあるんじゃないだろうか? たとえば角度が『1°』のものとか。 勾配計を片手に、小さな傾きを求めて街をさまよってみたら、ぼくの身近にそれはありました。
(櫻田 智也)
勾配計の使いかた
角度を測定するため『ダイヤル式勾配計(以下スラント)』というものを購入した。
測定対象にあてて角度を調べるわけだが、ただあてただけではわからない。グリップ部分にあるダイヤルを使って、緑の液体と泡とが入った『気泡管』を回転させる。
泡が線の間に入れば気泡管が水平ということ
ダイヤルを回すと気泡管と一緒に針が動く。気泡管の水平がとれたときに針が指している目盛りを読みとれば、それが対象物の角度というわけだ。
階段の手すりの角度は44°
この道具が便利なのは、手動で針を動かすので、測定対象から離しても数値が読みとれることだ。 偉そうに書いてますが、はじめて使います。
測定に関する註釈として
そんなわけで、この道具を使って街中の1°をさがして歩きたいのだが、目盛りが2°刻みなため、正確に1°を読みとることはできない。記事中でいう1°とは、0°と2°のちょうど半分くらいを指した状態ということでご了承ください。
スラントの仕様。最小読取角度は2°とある。 精度の『±1°』は企画の根底を揺るがしかねないので触れないでください
街は水平にできている
1°の傾きをみつけるには、とりあえず水平にみえるものを測定していくのがはやそうだと考え、とりあえずそんな狙いで測ってみた。 アパートの階段で目についたものがあったので、スラントをあててみる。
見事な水平
非常口の人は平らな場所を駈けていた。そうみえないのは写真が曲がっているからです。すみません。
ちなみに
ちなみに予め1°に目盛りをセットした状態で非常口の標識にあてても気泡は内側の線の間には入らない。この性能ならじゅうぶん1°の差を読みとれるはずだ。
まっすぐにみえるものはやっぱりまっすぐだった。うーん、すごいな、街。
じゃあ、傾いてみえるものはどうだ
それでは、ちょっとだけ傾いてるぞ、というものに狙いをつけて測ってみよう。
水平にみえるものはやっぱり水平だし、ぱっとみて傾いて感じるものは1°や2°で済まないようだ。小さいようで大きい、大きいようで小さい1°の傾きよ。それにしても測定対象が地味すぎるか。
展望台が傾いてはいないか
いまいちピンとこないままスラント片手にさまよっていたら、あっというまに日が傾いてきた。ここまでの地味さを反省し、ここはドーンと大きな建造物でもいってみるかと、盛岡の夜景スポットへとでかけてみた。
どーん
盛岡市内にある岩山展望台。こんな大きな建造物がはたしてちゃんと水平なのか。なにげに傾いているんじゃないのか。
さっそく展望台をはかってみる。スラントを取りだすまえにとりあえず小さな水準器を置いてみたら、
……ふーん
スラント使うまでもなし。まあ、展望台が傾いてたらやばいよね。でもなんとなく納得がいかない。ほんとうなのか、こんな大きな建物が、ほんとうに水平なのか? いや、自分のからだで感じてみるまでは信じられない。
あ、ほんとだ
水平でした。
そんなことやってたら夜になった