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ちしきの金曜日
 
東京格安宿探し

この値段なら漫画喫茶よりイイ!

せっかくだから一泊してこう、と予約しておいたのが「エコノミーホテルほていや」さん。携帯サイトから予約もとれる非常に今時なお店だ。


こちらがほていやさん入り口。
各国語挨拶がワールドワイド。

最初はこのホテルの姉妹店である「ドームホステルえびすや」さんの方に泊まるつもりだった。そちらは一部屋に複数ベッドがある寝台車のような部屋・ドミトリーが一泊1500円から。一晩泊まる値段としてはこの周辺でも最安値に近い。しかし、この日の夜どうしてもPCでの作業が必要になったので、やむなくほていやさんの個室を借りることにした。それでも禁煙和室で2700円。都心に比べれば十分格安だ。

日曜の夜だが部屋はほぼ満室。これから夏休みに入るともっと混むんだろうなぁ。


三畳和室。禁煙部屋なのもあって清潔です。
棚やハンガーなど細かい設備は揃ってる。

180センチ小太りの男が三畳にいる姿は、どこか独居房風で居心地悪そうに見えるけれど、実際は予想していた以上に快適。テレビもあるし、クーラーは効いてるし。壁によりかかっても足が向こう側に届かない、絶妙に狭すぎないサイズだ。

ちゃぶ台広げて作業しつつご飯。テレビではなぜかアニマックス(アニメ専門チャンネル)が映っていた。たしかに狭いっちゃ狭いけど、この好きな物に囲まれてる感じは嫌いではない。


結局コンビニご飯。
お、ブーンドッグス!
布団広げてこんな感じ。
足元も意外と余裕ありますよ。

このほていやさんも含めて、山谷一帯の宿はホテル・旅館とは違う「簡易宿泊所」と呼ばれる形態がほとんど。つまり「トイレ・風呂が共同」で、基本的に「一部屋に複数名泊まる」のが本来の使い方。今回泊まっている三乗部屋も「定員2人」となっており、ツインの部屋をシングルで借りているようなものだ。ちなみに実際2人で借りると+1000円の3700円。これまた安い。

一週間、二週間と泊まるとなると汚くももうちょっと広い我が家が恋しくなるが、上京旅行程度なら文句なし。周りに店とかない(入りづらい)が、まぁ寝るだけに帰る拠点として考えればオッケーでしょう、終電も遅くまである東京なら。漫画喫茶のナイトパックも悪くないけど「目的:寝る」なら断然コッチだ。


待合室では無線LANも使用可能。
外国人向け案内もいろいろ。

いろいろ地図も配布中。便利!

 

ジャニコンから忍者の修行まで

明けて翌朝。このホテルの支配人であり、山谷の簡易旅館が加盟する城北旅館組合広報担当でもある帰山さんに今の山谷についての話をうかがった。


「今、山谷一帯で宿は160軒切ったくらいかな。その9割はまだ長期滞在者なんですよ。年金で暮らしてる人も多いしね。残りの1割が短期旅行者だけど、ずいぶん様変わりしたよね。昨日なんかジャニーズのコンサートのために上京した子が来てたみたいだし」

−−最近は女性も多いんですか?

「増えましたねー。夜チェックインして、翌朝リクルートスーツで出て行ったりする就職活動中の子なんかもいますよ。あと増えたのは外国人。海外の安宿で外国人からココの話聞いてやってくる日本人もいるくらいでね」

−−どのくらい前から外国人が増えたんでしょう。

「2002年のサッカーW杯くらいからでしょうね、バックパッカーの人が増えました。最初はこっちも英語出来ないし、大丈夫か?ってのもあったけど、普通の人なんだよね。中には社長とか教授なんて人もいたりして、要はこういう旅の仕方が好きな人ってだけで」

−−中には定宿にする人もいたりするんでしょうね。

「毎年、忍者の修行にやってくる外国人とかいますよ(笑)。それにバックパッカーって旅慣れてるから宿も綺麗に使うんです」


山谷が海外で知られるようになったのには、世界的に有名なバックパッカー本『ロンリープラネット』に山谷の宿が紹介された、というのもあるが、先の例のような海外のバックパッカー街で話題になったり、ブログで紹介されたりといった世界レベルの「口コミ効果」も大きいのだという。

もちろん日本人でも今やサラリーマンからイベント・ライブのための上京まで。先日のX JAPAN復活ライブの時には、短期で泊まれるこの一帯の宿はほとんど埋まったという話。あと秋葉原が近いのもあって、近年オタク系にも人気が高いそう。さっきのアニマックスはそれ対策か。もう知られてる所では知られてるんだなぁ。


−−外国人だと習慣も違ったりしそうですが。

「浴衣姿で外出歩いたりリゾートぽい気分の人もいるけどね(笑)。珍しいから銭湯とか行く人も多いんだけど、周りが入り方とかも教えてあげたりして」

−−過去のイメージから不安な人も多いと思いますが。特に女性なんかだと。

「今、南千住って沿線でも事件率は低い方なんです。それに昔から寄せ場って女性犯罪がないんですよ。『おねえちゃんどっから?』なんて声かけてくるようなのはいるかもしれないけどね。でも、基本的に『関わりを持たないのがルール』みたいな所があるんです。我々も長く泊まってる人だろうと、こちらから身の上を聞いたりしないしね。」


山谷の七不思議。今も多くがこの通りだとか。

その辺を聞くと、写真を撮ろうとして怒られたのもよく分かる。特別な地域ではあるが、観光地ではない。どこか日常と非日常、昭和と平成が混じり合った地帯。その距離感さえわきまえれば、お得で快適な旅が過ごせるはず。

「10年後には住んでる人間もずいぶん入れ替わるだろうし、長期以外の一割のお客さんがどんどん増えていくと思います」と語る帰山さん。タイのカオサンはじめ、世界にはバックパッカーが集まる安宿街も多い。そんな変化は見てみたい!地方から上京してはこの街に泊まってく楽しみを知れないのがちょっと悔しい。


帰山さん、ありがとうございました!

ちなみに最初の写真はホテルのカレンダーでした。

先日行ったベトナムの安宿街。宿より電線に驚いた。

趣味に生きる人は活用したい

山谷をはじめとした東京都内の簡易宿泊所に関してはサイト「東京の安い宿」が詳しいのでご覧ください。ちなみに一泊の最安値は800円!なんて所もあるようですが、これは長期宿泊者の価格。一泊だけの客は受付けない、長期のみの宿泊所も多いのだとか。

山谷は浅草だけでなく吉原なんかも歩いていける地区。銀座も電車で一本だし。泊まる宿は1000円代、他では超豪勢に‥なんて客もいるんだろうなぁ。


 
 
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