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静かになるとテンションが下がる
住宅地の夜は思いの外静かだ。遠くで若者が酔っぱらって騒いでいるのが聞こえる。たまにパトカーの音もするが、店の前だけはどっしりと静けさが居座っているようだ。そこに僕の息づかいが場違いに加わる。
日付が変わる頃、少し休憩して昼間に目星を付けておいたコンビニへと向かった。 |
明かりがうれしい。 |
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コンビニでジュースを買ってまたすぐに元の並び場に戻った。並んでいることをフォロワーにアピールするため、座布団は置いていったのだが、帰ってきても特に誰もいなかった。
まだ待ち始めてから2時間くらいしか経っていないのにすでに限界な表情をしている。手元のノートに書いてあったメモをいくつか
・くしゃみがとまらない ・遠くで魚の匂いがする
・タクシーにひかれそうになった ・怖い
これらすべてひっくるめてこの表情だ。ゆるしてほしい。 |
ドクターストップか。 |
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暇つぶしアイテムは助かるぞ
長い時間並んで何かを買う場合、役に立つのは暇つぶしアイテムだ。今回、店長さんからパチカという楽器を貸してもらった。実はこれ、以前触ったことがあるのだが、まったくうまくならすことが出来なかった。今回、一晩中練習したら少しはうまくなるかもと思いずっと握っていた。こういう習得系の道具は時間つぶしにもってこいだ。 |
これがパチカ。 |
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パチカは小型のマラカスが二つ繋がったような楽器だ。つまり振るとシャカシャカ音がする。この音が真夜中の住宅地に大きく響くのだ。シャカシャカシャカ・・。小豆を洗う妖怪がいるというが、正体はパチカを練習する暇な大人かもしれない。
ところでこのあたりで街灯が消えた。写真はフラッシュを使っているので明るいが、実際の現場はそうとう真っ暗だ。下の写真がよく暗さを表している。 |
闇の中でパチカ。 |
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努めて明るくしているが。 |
実際はこんなだ。 |
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助けを呼ぶ
どうにも心細いので誰か呼び出したい。そういえば明日は工藤さんの記事の入稿日のはず。この時間ならば起きて原稿書いているんじゃないか。メールしてみた。
To:工藤さん タイトル:ヒマです。
本文:とんでもなくヒマなので飲みに来ませんか、店の前で。 |
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工藤さん、起きてるかな。 |
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早速返信が来た。持つべきものは夜更かししている同僚だ。
>飲みに来ませんか、店の前で。
嫌です。コンビニで雑誌でも買ってきてはどうでしょう。今週のananはセックス特集らしいですよ。 |
つれない。と思ったが確かにもう終電終わってる。しかしいい情報をいただいた。そうか、雑誌か。 |
起きてたけど断られた。 |
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ちょっとコンビニ行ってきます。 |
さっきのコンビニへ行くもanan売っておらず。 |
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三軒目のコンビニでようやく工藤さんに勧められたananを買うことができた。
僕の並んでいる店の前はとにかく暗いので街灯のともるバス停で読むことにする。このあたりでもう夜通し並ぶ、という本来の目的から外れかけているが、しばし休憩ということで許してもらいたい。 |
三軒目のコンビニでやっと購入。 |
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夜中歩道を通る人に共通しているのは、通り過ぎた直後に僕をみつけてびくっとするところ。いるはずのないところに人がいるとやはり誰もが驚くのだ。ananは非常に興味深く、全部読むことで効率よく性の知識が身についた。それでも1時間くらいしかかからなかった。
休憩を終え、またお店の前に戻る。途中、昼間に目星を付けておいた癒しスポットの滝に寄ったのだが、真っ暗でしかも水が流れていなかった。夜は滝も止まるのだ。さらに水辺ということで蚊にたくさん刺され、癒しどころか心が折れそうになった。 |
ふむふむ。 |
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水の止まった滝。夜見ると少し怖い。 |
何度かうとうとしたが、その度に蚊に刺されて起きる。 |
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朝はもうすぐだが
4時をまわるとなんとなくまた町が動き始めた。カラスが鳴き、酔っぱらいが始発を求め、お年寄りが散歩し、ゴミ収集車が走り出す。 |
空が白んできた。 |
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時計を見ているとなんだか目が回ります。 |
そのとき僕はというと、かなりの勢いでへこたれていた。こういうことって一人でやると途中で必ず冷静になる瞬間が来ることを忘れていたのだ。
この時点で開店までまだ6時間半あるのが信じられない。情熱は失ったわけでも楽しくないわけでもない、ただ体がついてこないのだ。
果たして明日の朝まで待って僕は無事ハンバーガーにありつけるのだろうか。
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