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ちしきの金曜日
 
螺旋階段を鑑賞する


螺旋階段に出会うとうれしい。打ち合わせに出向いた先のオフィスビルに螺旋階段があると「あ、ぼく階段で上がります」とか言っちゃう。そして、不審がられる。「ダイエット中なんで」とか言い訳できればまだよいのかもしれないが、幸か不幸かぼくのBMI指数は18.6だ。

話が不必要な方向それたが、つまり今回はその素敵な螺旋階段をご紹介したいってことです。

大山 顕



■コレクションできないのが納得できない

趣味の対象がコレクションできるものの人はめぐまれていると思う。ぼくが、いいなあ、と思うものはたいてい家に置いておけない。工場とかジャンクションとかアパートとかな。切手とかコイン収集が趣味の方はもっと自分の幸せを噛みしめていただきたい。

で、今回もまたぞろ家に持って帰れないものが好きになった。螺旋階段だ。


こういうのももちろんいいのだが。

自分ちに螺旋階段がある、という御仁はそういないと思うが、気をつけて見てみると街には意外と螺旋階段がある。上の写真のような感じの螺旋作品などは「どこかで見たことがある」と思わせるものではないかと思う。

マテリアル、色、古び具合、中心の柱からどのようにステップが伸びているかの処理など、この物件は観賞用としても申し分ない螺旋階段なのだが、今回はこういう作風を求めていないのだ。こういうのはまたいずれ。


こういう「純粋螺旋階段建築」などかなりぐっとくるのだが、今回は見送り。

 

■見下ろす、見上げる、が醍醐味だと思うのよ

今回着目したいのは、螺旋階段の「ヘソ」、螺旋階段の真ん中の空間だ。


オーソドックスな作りに好感が持てる、普段使いの螺旋階段。

どうだろうか。これだよ。この視点が螺旋階段鑑賞の醍醐味だよ。だよね。


螺旋階段の王道、円形螺旋階段。

最初の写真のように建築の外部に設置されているものの多くにはこのようなヘソがない。階段を支える柱があるからだ。見上げて、見下ろして楽しむ螺旋階段は屋内に限る。

上二つですでにお気づきのように、螺旋階段と一口に言っても、その表情は様々である。螺旋階段鑑賞家のあいだではまず「形」「奥行き」「色」「上からか下からか」などがポイントとなる。たぶん。

■基本中の基本「形」

螺旋階段といえば円、と思っているのは素人。意外と円形の作品は少ない。ぱっと見の美しさでもって一般受けも良いが、飽きるのもはやいとぼくは思っている。最近のぼくのお気に入りは三角形だ。


魅惑の直角三角形螺旋ビュー。

どうだ。この素敵さ。奥行き感を台無しにするため、鑑賞家のあいだでは評判の悪い落下防止のためのネットもこの作品の場合はあまり気にならない。手すりとマッチしたフレームの造形が良い感じだからだろうか。最近見かけない柵のデザインもかわいらしい。


円を基調としたこじゃれ螺旋階段。評価の分かれるところだ。

上 の作品は評価の分かれるところだ。なぜだか「螺旋階段といえばちょっと豪華」というイメージがあって、この物件はそれを体現している。円がややつぶれた形 状のほか、手すりの微妙なデザインも気になる。なんといってもヘソにつり下げられた照明である。これはいただけない。なんだ、あれか、ジャッキーチェンが 滑り降りるのか。

螺旋階段はすっぴんが最も美しい。本作品のデザイナーには再考を求めたい。


最近一番のお気に入り。ずーっと見てたら首が痛くなった。

形的観点からだと、一番のお気に入りは上の作品だ。やや右方向が開いた絶妙のヘソ形状。ヘソ美人だ。つぶれた三角形といったらよいか。なんといってもアール 処理がすばらしい。手すり、階段デザインなどがまったくの平常心であることが、なおさらそのヘソ形状の美しさを高めている。

うるさがたの鑑賞家に言わせればこれは螺旋階段ではないかもしれない。でも待ってほしい。ぼくらが大事にしなければいけないのは定義にこだわることではなくて見上げたときにぐっとくるかどうか、そのエモーションじゃないのか。

いもしない鑑賞家に対して思わず暑くなってしまった。ていうか、みんなついてきてますか。


 

 
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