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フェティッシュの火曜日
 
山伏と行く、初めての修験道


山伏と私。

友人から日光の山登りに誘われた。普段山登りなんてしないけれど、日光くらいなら遠足気分でいいかなと思って軽い気持ちでOKした。しかしその後届いたメールに書かれたURLをクリックすると、そこには弓矢を持った山伏がいた。

日光修験道?

夏峰?

どうやら私は、山伏と一緒に修行をすることになったらしい。

※なにぶん一日体験の修行のため、不勉強でおかしい表現があるかと思いますが、ご容赦ください。山伏様。

玉置 豊



よくわからないまま修行の旅へ出発

今回いく修行の旅は、誘ってくれた友人の友人である黒沼さんという方が、初級チベット語講座で知り合った山伏に誘われて、数年前から毎年通っているという一般参加可能な修行である。

私は宗教的な経験や知識がほとんど無いので、とりあえず今日のところは、「修験道とはなにかを掴む」とか「釈尊のお覚りを追体験する」とかは考えずに、一緒に修行させていただく山伏達に怒られないように頑張ろうと思う次第だ。


黒沼さん。私は今日が初対面。初対面が修行の旅。

東武日光線で新鹿沼駅までいき、そこからタクシーで山伏が集まる眺岳山験成就寺山王院というお寺へ。

着いた頃にはすでに日はとっぷりと暮れており、夜の闇がとてもおっかない。夜って暗いんだよなと当たり前のことを再認識させられる。


この中で山伏が待っているらしい。


どきどき山伏インタビュー

待合室となっている部屋にはいると、そこにはテレビや写真でしか見たことのない山伏達が修行の準備をしていた。場違いなところに来てしまった気がして、妙に喉が渇く。喉が渇くので出していただいたお茶を飲むと、またすぐに注いでいただけるので大変恐縮である。もったいなやもったいなや。

ここから一緒に修行へいく人達は、山伏7割、一般参加3割といった感じの組み合わせで、我々以外にも一般参加者がいるのが心強い。中には小学生くらいの子供もいるので、今日は小学生でも体験できるレベルの修行という事なのだろう。


山伏に囲まれて完全アウェーな状況だが、これも人生の修行さ。

山伏という人にあう機会もそうそうないので、せっかくなので黒沼さんを修行の道へと誘った方に、ちょっとお話を伺うことにした。


「いいよー、なんでも聞いてー。」

玉置 すみません、根本的なところで恐縮ですが、山伏ってなんですか?
山伏

簡単にいうと、修験道の行者のこと。その修験道っていうのは、いろいろな解釈があるけれど簡単にいうと、山岳信仰や神道の要素などが結びついた日本古来からの仏教かな。ここは修行をしたいという人に対して、広く門戸を開いている寺なのです。

玉置 なんとなくわかった気がします。みなさん職業が山伏なんですか?
山伏 いや、山伏だと食べていけないから、普段はみんな会社員とかお寺の住職とか。こういう年数回の修行のときだけ山伏になる人がほとんどですね。ちなみに私はクレーンの運転手。
玉置 なるほど。

あのウエストバッグいいなあ。日光修験。

玉置 ところで今日の修行って、かなりきついんですよね。
山伏 そうらしいね。もうなにが起きるか不安で不安で。
玉置 え、今回がはじめてなんですか?
山伏 まだ今回で15回目かなぁ。
玉置 (あ、冗談いっている!)
黒沼 その人はそういう人だから。
玉置 了解です。なんだか山伏が少し身近になってきました。

山伏というと、無口でおっかなくて取っつきにくくて超能力がある人ばっかりだと思っていたのだが、どうやらそうでもないらしい。普段は野に下って一般人として働いているからか、みなさんとても社交的である。目つきとか骨太さとかがちょっと普通と違うような気もするが。

ついでに今まで気になっていたことを聞いてみよう。


玉置 山伏が頭につけているやつ、あれはなんなんですか?
山伏 ああ、これ?

頭につけるアレ。

山伏 これはね、こうやって川で水を飲むため。
玉置 ええ!

「こうやってグッと水を…。」

黒沼 いや…
山伏 あはは。水も飲むけれど、これは頭襟(ときん)といって、大日如来の宝冠をあらわしているんです。元々はもっと大きなものなんだけれど、修行しやすい形にまとめたものが今のこの形。
玉置 なるほど。そんな意味が。
山伏 今日はヘッドライトするからはずしちゃうんだけどね。山伏が身に着けるものっていうのは全て意味があって、たとえばお尻に巻く鹿の皮だけれど、引敷(ひっしき)といって、岩場での座布団っていう役割もあるけれど、これは獅子の意味で、獅子という百獣の王を尻の下に敷くことで、それより上の世界に入ることを意味するのです。

引敷(ひっしき)。鹿だけど獅子の意味。

玉置 じゃあフサフサはどんな意味なんですか?
山伏 あれは結袈裟(ゆいげさ)という修験道専用の袈裟で、六つのフサフサは、六波羅蜜という菩薩が納める実践徳目を表しています。
玉置 正直よくわかりませんが、とりあえず修行をした人じゃないと着られない衣装なんですね。
山伏 そう。ちなみにこのフサフサの色は、位によって緑、オレンジ、紫、緋色と、身に着ける色が変わっていきます。
玉置 柔道の帯みたいだ。

結袈裟(ゆいげさ)。この方は紫なのでえらい人。

ちなみに黒沼さん曰く、山伏に喫煙者が多いのは、タバコがヘビ避けになると昔からいわれているためだそうだ。

100%興味本位でいうのも申し訳ないが、山伏の格好はかっこいい。着たい。これを着ていたら私でも神通力がアップするような気がする。スプーンくらい曲げられそうだ。

しかし一切の修行を受けていない私が、宗教的な意味合いがある服を着る訳にも行かないので、こっちは現代科学の力で修行に立ち向かうこととする。


がんばれ俺。

 

 
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