腸を通って生ビールが出て来る
喉が渇いたのでおいしい生ビールを飲みたい。 缶ビールじゃなくて生ビールである。
ビールサーバーから腸をつたって生ビールが出て来る、なんてどうだろう?
素敵だ。
こういう事を頼めるお店は青山の「京菜」しかない。マスターの金澤さんはこういう試みが大好きなのだ。腸から出て来る生ビール。もしかしたら京菜の名物になるかもしれない。
18時のオープン前を狙って、アポ無しで向かった。
金澤さんは日本経済新聞を読んでいた。お客様との会話が弾むよう、あらゆる方面の知識を取り入れているのだ。
経済について学んでいる最中ではあるが、ちょっとお時間をいただき「腸から出て来る生ビール」の説明をした。
「面白い、やりましょう」
気付くと金沢さんは小腸の端を持ってお店の奥、ビールサーバーのあるカウンターに向かっていた。
驚く事に、腸の長さと京菜の店の奥行きがほぼ同じなのだ。京菜のカウンターから出口側の客席までの長さは腸の長さなのである。
まさに、腸から出て来る生ビールのためにあるお店と言っても過言ではない。
そこで、京菜のフロアマネージャー遠矢さんの登場である。 遠矢さんが腸の中腹を持ち、腸に落差を作る事でビールを大腸まで運ぶのだ。
金澤さんから遠矢さんに託されたビールのバトン。2人の連携プレイによって、生ビールが大腸までやって来た。
あとは僕が大腸から出て来るビールをうまくグラスに注げば完成である。
大腸を持つ左手にビールの感触が伝わってきた。
よしきた。
右手で大腸の先を持ち、慎重にグラスに注ぐ……、
金澤さんが流したビールの量が多過ぎたようだった。グラスに収まりきらない生ビールがどくどくと床にこぼれてしまった。
そして、こぼれたビールの中に何かが浮いている。
さっきのソーメンだ。
とにかく腸は長かった
9.2メートルの腸を持って1日中ウロウロしていたのだが、とにかく腸は長くて扱いづらい。すぐにからまるし、重いし。
こんな大変なものがお腹の中に入ってるなんて、人間の体って本当に不思議ですね。
※腸から出て来る生ビールのサービスは行っておりません。