知人から珍しいカルタを譲り受けた。島崎藤村さんが作った「藤村ひろは歌留多」というカルタで、昭和2年に発行されたものの復刻版らしい。岐阜県の藤村記念館で手に入れたという。島崎藤村さんの文章に岡本一平さん(岡本太郎さんのお父さん)が絵をつけているのだが、その1札1札が素晴らしいのだ。すっかり「藤村ひろは歌留多」の世界に心を奪われてしまった。今回は、そんな「藤村ひろは歌留多」の中から、特にグッと来た札を紹介します。
藤村が子どもたちに向けた民話
このカルタには「このひろはがるた」というタイトルで、藤村からのメッセージが同封されている。
「長いこと私は民話を書くことを思ひ立つて、未だにそれを果たさずにいますが、このいろはがるたもそんな心持ちから作つてみました。」
民話のようなカルタを子どもたちのために作りたい。そんな気持ちを47枚のカルタにこめたのだろう。そこに岡本さんの味わい深い絵が加わり、他に類を見ない藤村ワールドが展開されているのだ。
では早速、「藤村ひろは歌留多」の世界を紹介しよう。
コネタ?
先日より始まった「風雲コネタ城」が面白い。タイトルを読めばコネタの内容がつかめる、という画期的なサイトである。タイトルをクリックして本文を見て、タイトル通りだったなあと思ったら「ふーん」ボタンをクリックする。9月17日現在、「沖縄のメロンパンがでかい」というコネタが最多の「ふーん」を集めているが、本文を見ると本当にでかくて「ふーん」と思う。
唐突に「風雲コネタ城」の話を始めてしまったが、「藤村ひろは歌留多」が何となくコネタ城に近いような気がしたのだ。読み札にコネタのタイトルが書かれていて、取り札にビジュアルが載っている。「藤村のコネタ城」と名付けたいくらいであるが、「風雲コネタ城」とは決定的に違う点がある。「ふーん」と感心するというより、「う、うん」と無理矢理納得させられるような気がするのだ。
例えば、次の札。
草も餅になる。と言い切られても「う、うん。そうですね」としか返せない。「沖縄のメロンパンはでかいらしいよ」とは友だちに自慢出来ても、「草も餅になるんだって」と敢えて口に出して言うほどのネタではない。草餅というものがある事はみんな知っている。
「雪がふれば犬もうれしい」 う、うん。
確かにそうだ。しかし、八つにも切れると思うし、用途によって切り方は色々だと思う。
取り札を見るに、頬のホクロの事を言っているのだと思う。手術で除去でもしない限り、大きくなってもホクロはあり続けるであろう。
後ろの子供が何であんなに怒っているのか分からないが、へそも身の内である事は間違いない。
コネタ城と似ているのは、言い切り型の文体だけだったようだ。
比喩なのかそれとも?
コネタっぽい文体の他に、これは何かの比喩なのだろうか? と考えさせられる札もある。
鼻提灯が何かのメタファーになっているのだろうか? それとも「鼻提灯は面白い」というだけなのか。判断に迷うところである。
が、どうなのかを知りたい。
スイカが丸裸というより、スイカを被った人が裸だ。
と、このように味わい深いカルタが47枚もあるのだ。それぞれTシャツにしたい。表に「す」とだけ印刷して裏にスイカ丸裸の絵を入れる。ああ、欲しい。
次のページでは、命令口調な札と登場人物が2人の札が登場します。