予期せぬ大渋滞が発生

　 続いてのアナログ10円ゲームを見つけたのは、複合商業施設にあったゲームセンター内。最新のゲーム機もたくさんある中、レトロゲーム的な扱いで稼働していた。

　みさと団地と同じく「カーレース」が、黄色とオレンジの２台あった。ゲーム内容やコースは両方とも全く同じようだが、黄色い方は機械の調子が悪いらしく、お金の投入口がテープふさがれていたため、オレンジの台に挑戦してみる。

　ただ、始める前に、一つ気になる点があった。

　名神入口がかなり渋滞しているのだ。前にプレイした誰かが、この状態になって立ち去ったのだと思う。

　試しに名神入口のところのレバーを弾いてみても、たまった10円玉はわずかに跳ね上がるだけで、コースに復帰できない。あー、そう言えば子供の頃にもこういう場面を見たことがある気がする。これは大変だ。

とは言え、ゴールに着くためには必ずしも名神入口を通らなくてはいけないわけではない。他のコースを経由してもゴールまでは行けるのだ。そういうわけで、このままやってみた。

　ビーン、ビーンとコインを弾く。できるだけ名神入口に行かないようにする。それがうまく行くこともあるのだが、肝心のゴールに10円玉は入らない。

　もちろん意図に反して名神入口に10円玉が行ってしまう場合もある。コインは渋滞の列に加わり、ゲームオーバーだ。名神入口がふさがれたことで、ゴールに行く難度が上がってしまっている。

エキサイトして10円玉をどんどん投入するうちに、渋滞がすごいことになってしまった。さすがに店員を呼ぶしかないだろう。

　来てくれた店員は、台を見るなり「あー…」という表情。「ここまでやったかー」と、言葉にせずともあきれているような様子を感じざるを得なかった。すいません、大人なのにこんなにしちゃって。

　「なんとかなりますか？」と聞くと、「こうなっちゃうと、全部ばらさなきゃならないんで、復帰に結構時間がかかります」とのこと。「うーん、1時間くらいでなんとかなります？」と食い下がると、やってみます的なことを言ってくれた。

　ちなみに、私が名神入口に詰まられた分の10円玉は返してくれた。これを元手に再挑戦したい。

＊　＊　＊

　そういうわけで、他の店で時間をつぶして、再びゲームセンターにやってきた。…おや、先客がいるぞ。

　地元の中学生とおぼしき少年たちが「カーレース」をプレイ中。しかも２台ともだ。ということは、両方ともメンテナンスが済んでプレイできる状態になっているということだろう。

　早くやりたい。おっさんが微妙な距離を取って観察していることに気がついたのか、ほどなく中学生たちは退散。よし、今度こそゴールして景品を取るぞ。

おお、きれいに渋滞はなくなっている。これならゴールに行ける確率も上がるぞ。

　意気込んでやってはみたが、なかなかゴールまでたどり着けない。みさと団地での経験と前例があるので、割とたやすくゴールまで行けるかと思っていたのだが、どんどん10円玉が機械に吸い込まれていく。

　300円ほど使ってしまったのだと思う。気力が消耗していく中、名神入口のランプがついた。

　このランプ、大当たりコースを通ることができると灯る光なのだ。狙ったわけではないのだが、たまたま通ることができた。大当たりコースを通ったあとは、あと一回うまく弾けばゴールなので、気合いも入る。

さあ、行くぞ…それっ！　……おお、やった、なんとゴールに入ったではないか！すごい、感動の大当たりだ。

　興奮の中、景品出口から出てきたのは、ガム一枚。

　あー、プレートを景品と交換するタイプではなく、現物支給なのね。やっとの思いでゴールにたどり着いたうれしさは確かに湧いてくる。ただ、そっか、ガム一枚か…という思いも同居するのは否めない。

　それにしても大当たり賞のはずなのにガム一枚というのはどうなのか。これが大当たりだとしたとき、普通の当たりで出てくるものが思い浮かばない。

　なんとなく釈然としない思いを感じる中、機械に表示されている「あそびかた」の説明をよく読んでみる。

　少々読みづらいので、説明４つ目から先の部分を抜粋してみる。

　ショックである。そうだ、覚えているぞ。大当たりランプがついたのがうれしくて写真を撮っていたら、なんかランプが消えたな、と思ったのだ。つまりは普通あたり賞だったということなのだ。

　大当たりコースに通るのはかなりレア。これ以上費やす気力もなくなってしまったので、ここでも普通あたり賞を収穫としてまた次に向かいたいと思う。