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フェティッシュの火曜日
 
タルタルカツ丼とオランダコロッケの街・群馬へ


揚げ物が好きだ。

という書き出し、自分でもどうかと思うが、揚げ物が好きだ。カツとかコロッケなんて言うに及ばず、1日中、口の中をそれで満たして移動したい。

そんな風に揚げ物へ想いを寄せていたある日、わが故郷群馬にこれまた魅力的な揚げ物を発見してしまった。そしてそれらは偶然にも、庶民的な中にヨーロッパの香り漂うものだった。名づけて「群馬ヨーロピアン揚げ物の旅」だ。

乙幡 啓子



このあたりは江戸時代「板鼻宿」として栄えた。風情ある家並みの一角にでんと建つ老舗「板鼻館」。
レトロで落ち着いた、小綺麗な店内。お隣・高崎市名物のダルマが全員こっちを見てた。
メニューには「カツ丼」の下に「卵とじカツ丼」とわざわざ分けられており、「卵でとじない」方が主流だということを物語る。

絶対うまい

「〜の旅」と銘打ったが、実は当サイト6周年記念で「磯部温泉」を訪れた際、ついでに取材させてもらった。恐縮です。前日はJR信越本線の磯部駅近辺でコネタを集めまわり、翌日すぐ隣の安中駅に足を伸ばした。

自分は群馬出身、といってもこの地域は不案内に等しい。駅でタクシーを拾い、10分ほどで旧中仙道沿いの「板鼻館」に到着した。この、一見ふつうの食堂に、パンチの聞いたカツ丼があるという。

遅めの昼にお邪魔したら、おじさんが1人、2人、テレビのほうを向いて黙々と丼物を食べていた。私も頼むしかない。あれを目当てに来たのだ。

「タルタルカツ丼くださいー」

 

卵なしカツ丼再び

「タルタルソース+カツ丼」。ありそうでなかったこの組み合わせ。ミスマッチに聞こえるだろうか、それとも「そりゃやられた!」となるか。

ここで言って置きたいのは、このあたりのカツ丼は「卵でとじたカツ丼」ではなく、以前桐生のカツ丼記事で触れたような「卵で閉じないカツ丼」が主流なのだ。「ソースカツ丼」と言わず、このように「卵で閉じないカツ丼」と文字数2倍で回りくどく表現したのにはわけがある。

そうだよそうだよソースだよ(古い)じゃなくて「ソースじゃないよ」、醤油ベースのタレなのだ。メニューにも「甘辛醤油味です。ソースは入っていません。」と断り書きがしてあり、近県・新潟の「タレカツ」を思い出させる。ここ群馬の西毛地区は、「卵とじカツ丼」「ソースカツ丼」に続く第3のカツ丼「醤油系タレ」の地域なのだ(ご主人・談)。

「タルタルカツ丼」は、その甘辛醤油味の「卵なしカツ丼」にタルタルソースをかけた一品なのである。

と、ながなが話してきたがもうだめだ。早くそのタルタルカツ丼、見せびらかしたい。お待たせしました。

 

ドンドンドーン!タルタルカツ丼ー!

ここでページレイアウトを切り替えますので、実際食べているかのごとく、じっくりスクロールしてお楽しみください。


右下に濃い一画が。タルタルソースとゆで卵とあたり鉢・あたり棒がついてくる。

タルタルソースとゆで卵を自分で混ぜる喜び、ってあるよね。

そしてそれを、カツ丼の上に惜しげもなく。

あわてて撮りましたので、噛みかけですみません、失礼します。

カツをめくると、タレ味のやわらか玉ねぎが。汚れていくご飯がまたうれしい風景。

ロースカツに、ソースカツ丼のよりも若干甘辛いタレが絡んで、そこにマヨネーズ味のほっこりしたソースが合わさって、「今私はうまいものを食べてる」という実感が沸きに沸く。だが女性なら、たぶんやっと食べ終えるくらいの、なかなかの量だ。

このタルタルカツ丼は3年前からメニューに加えられたそうだ。なぜタルタルなんですか?とご主人にキッカケを聞くと、「若いお客さんが、カツ丼にマヨネーズかけて食べてたんだよ。で、それじゃ芸がねえなあと思って」

いわば老舗食堂の意地でもあるタルタルカツ丼。おかげで、わざわざ遠方からもこれを食べに、若い人らが来店するそうだ。

私の「タレ系カツ丼」名鑑に、またひとつマスターピースが加わった。


板鼻館

住所:群馬県安中市板鼻2-4-36
TEL:027-381-0305
営業時間:11時〜14時30分 16時30分〜20時
定休日:月曜


さて、今日のうちにもう一つ、揚げ物探しの旅を続けねばならない。高崎名物のダルマ並にパンパンのお腹をかかえて、再び信越本線に乗る―。


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