●餃子の枠を超えようとする餃子たち
続いて訪れたのは、千葉県柏市にいる「餃子小舎(ぎょうざごや)」というお店だ。ここも店構えはともかく、前に立ててあるメニューがすごいことになっている。
メニュー左側のアレンジ餃子たちは確かに気になる。ただ、右側の「とってもおいしく楽しいデザート(花)」で混乱の度合いは一気にヒートアップする。
だって、チョコバナナとか苺大福とかのあとに、「餃子」ってついてるのはどう考えてもおかしいだろう。胸騒ぎも湧いてくるまま、店内に入ってみる。
デザート餃子が気になりつつも、まずは普通の餃子を食べてみよう。と思ってメニューを見たところ、普通の餃子が普通じゃない。
いや、もちろん本当の意味で普通の具の餃子もあるのだが、デザート餃子との対という意味で「おかず餃子」とでも言うべき餃子たちも相当おかしなことになっているのだ。
うーん、どれにしようか決められない。そういう気持ちに応えてか、このお店では自由に選べる最大8種類までを1個ずつ注文できるセットも用意してくれている。おお、それにしよう。
それでも悩んで、やっと決めた8種類を1個ずつセットにした皿がやってきた。
今回注文したのは、あくまで皮に包まれた具としてアレンジしている餃子なので見た目ではわからない。それに対応して、メモに実際の並び順と同じように中身を書いてくれているのでわかりやすい。
実際に食べてみる。…うん、手堅くおいしいアスパラやカレー、ホタテといった餃子たち。確かにこれらはあんまり餃子に入れないけれど、普通においしいではないか。
最も印象的だったのは、ラッキョウキムチの餃子。餃子に入っている具としてではなくても、ラッキョウのキムチというのはもうそれだけで珍しいだろう。
他の具と比べて主張が強いラッキョウキムチ。味のインパクトとしては8つの中で最も大きかったと思う。
さて、バラエティー餃子を超えるインパクトを感じるデザート餃子たち。デザート餃子、とさらっと書いたが、「デザート」という言葉と「餃子」という言葉がつながるのは何回考えてもおかしい。
メニューもクラクラくるものばかりだ。「アップルパイ」のあとに「餃子」ってつながるのはどうなんだ。
経験したことのない迷いの中、注文したのは「モンブラン餃子」なるメニュー。きれいに並べられた餃子の上に、栗とマロンクリームとミントの葉をトッピング。いや、だからさ、そんなのトッピングしてる場合じゃないだろう。
規則正しくついた皮のしわが、それが餃子であることを否が応でも主張する。さて、食べてみますよ…。
おお、これはおいしいぞ!
でも写真の表情がそうでもなさそうなのは、やっぱり脳がこの状態を認識するのに戸惑っているからだと思う。
中身は普通の餃子ではなく、栗とそのペースト的なものだ。餃子のビジュアルからして、既存の餃子観をぬぐえなかったのだが、ちゃんと具の部分までデザートを貫いてくれていてよかった。
よくよく考えてみれば、栗あんの超薄皮変形焼きまんじゅう、とも言えるこの餃子。そうであるならばおいしいところに着地できるのもおかしくない。
モンブラン餃子がおいしかったので、もう一つ頼んでみたデザート餃子は「餃子パフェ」。
動物の顔に見立てているような見た目もかわいい。「餃子」+「パフェ」という字面はいまだに違和感を感じるが、こちらもしっかりとデザートとしてのおいしさを保ってくれている。
グサッと刺さった餃子はやっぱり見た目としては餃子なのだが、中身は安心のチョコバナナ。餃子の中身としてチョコバナナが安心と言っているのは普通の基準からするとおかしいのだが、パフェグラスに入っている餃子としてはそれでいいのだ。
決して無理をしているのではなく、素直においしい。やっぱり表情に戸惑いはありつつも、味はうまいんです。
フルーツやクリームに加えて、きれいな色のタピオカが入っているのも食感がおもしろい。ちゃんとメニューとしてアリと言えるものでうれしい。味と見た目の不一致も楽しんでしまえばいいのだと思う。
さて、この店も相当おもしろかったのだが、やっぱり餃子と言えばあの街にも行っておかなければならないだろう。