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ロマンの木曜日
 
武蔵水路を歩く

水の高速道路

武蔵水路は利根川と荒川をほぼ直線で結んでいるため、もともとその間にある河川や道路、鉄道などと交差しなくてはなりません。道路は土手の上に橋を架ければいいのですが、相手が河川や低い位置を走る鉄道だとそういうワケにもいかず。そこで、一旦地下に潜って立体交差するサイフォンがたくさんあります。

サイフォンは外から見てもよく分からないのですが、川を目の前にして取水口に吸い込まれた水が、川の向こう側に何喰わぬ顔して出てくるのを見るとなんだか不思議です。かと言って中を確かめるのは絶対に嫌ですが。



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武蔵水路が一旦消えて、また現れる 目の前で取水口に吸い込まれる

武蔵水路にはこういったサイフォンが6カ所もあるそうです。

また、道路の橋が架かっている場所のすぐ下流にオレンジ色のブイが浮いていました。水路は岸が急傾斜で流れが速いため、万が一水路に落ちた人が掴まるためのロープが渡してあるそうです。できればお世話になりたくないですね。


もし落ちたら岸に上がることはほぼ不可能 そんな人をキャッチするロープと目印のブイ

ところで、この水路は完成から40年が経過し、もともと急ピッチで造られたこともあってかなり痛んできているとのこと。流せる水の量も当初の計画から20%程度減少し、また水路からの水漏れも疑われていて、大規模な改修工事の計画が進められています。ただし、工事中も水路を稼働させつつ、しかも通行量の多い道路や鉄道との立体交差が多く、そういった場所の工事の進め方が悩みどころのようです。


本来は真っすぐだった水路の壁 継目に大きな段差が

でも、もし地震などでこの水路からの給水が止まってしまうと東京は水不足になること必至なので、なんとかがんばって改修工事を進めてもらいたいものです。

 

最後に排水機場

さて、そうこうしているうちに荒川の合流点が近づいてきました。ここには排水機場という施設があります。

大雨などで合流する先の川(ここでは荒川)の水位が高い場合、細い支流(ここでは武蔵水路)に水が逆流してくるのを防ぐため、合流点にある支流の水門を閉めてしまうのですが、そのままだと支流の水がどんどん溜まってしまうので、ポンプで強制的に合流先の川へ排水します。この施設を排水機場というのですが、予備知識として知ってはいたものの見るのは初めてでした。

排水機場の中には、巨大なエンジンとその先に接続されたこれまた巨大なポンプがずらりと並んでいました。


排水機場の外観 建物の裏から太いパイプが出ていた、象のモチーフはこれか!?

どでかいエンジンとポンプが並ぶ

カメラの位置が目線と思って間違いないです 超でかいエンジン、6気筒で550馬力らしい

威圧感のある排水機場の中の見学を終え、いよいよ荒川の堤防を越えて合流点へ向かいます。

ここ、堤防と堤防の距離は500mくらいあるのですが、通常時の川幅は50m程度で、それが逆に大雨のときの水流の凄さを想像させます。

自分の背丈ほどもある草が生い茂った河原の道をゆっくり進むと、やがて合流点が見えてきました。


右が通常時の排水口、大雨のときは右の水門を閉めて左のポンプの出口から排水する 雑草が茂る荒川の堤防の中も水路が続く

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荒川との合流点 荒川とほとんど同じ量が流れ込んでいるように見える

というわけで、武蔵水路をスタート地点からゴールまで見てみました。

水がめであるダムや、家庭に水を送る浄水場に比べるとシンプルな施設ですが、ここを流れる水が東京の水道においてかなりの割合を占めているわけで、かなり重要な命綱だと言えそうです。

東京以外の皆さんもぜひ一度、自分の家に届く水道をたどってみてください。

25年来の夢

本当に小学生の頃から気になっていた水路なので、詳しく見られてよかったです。ただ、ひとつ嘘がありまして、この記事のタイトルを「武蔵水路を歩く」と書きましたが、道中は職員の方に車で案内していただきました。どうもありがとうございました。

そういえば写真を載せ忘れていましたが、スタート地点の利根大堰に魚道があって、横から眺められたのもおもしろかったです。

偶然通ったお魚さん

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