光を通す
僕の顔を照らしだすライト“フジワライト”を使って、ひとまず部屋のカーテンで試してみた。どうなるだろうか。
もや〜
もやや〜
何か、もや〜っとしたものが浮き上がってきた。想像とは違う。顔のパーツが全てぼやけてしまっていて、もはや僕だということは判別不可能である。
いろいろと試してみた結果、映し出す対象にフィルムをかなり近付けないとはっきりとした表情は表れない。「ぼんやりした自分」がそこにはいる。
近づけるとだいぶはっきりと映るようだ。
OHPと違い、懐中電灯では光の量が不足しているのと、レンズがないので焦点が合わないのが原因であろう。
だが残念なことに、これ以上立派な懐中電灯を用意する資本はない上に、レンズを使ってあれこれするのは一人では難しそうだ。このまま突っ走ってしまおうと思う。いいだろうか。いいよ。よし。
世界を照らす
夜中に外に出て思ったのだが、街は明るい。公園に行くと、照明のおかげでフジワライトの光はかき消された。
懐中電灯では歯が立たない
街灯のない、暗い所を探して少しうろうろしてみる。
できるだけ人に見つかりたくない。こんな夜中に自分の顔を印刷したフィルムを持ち歩いた人になんて、会いたくないからだ。
暗がりの中、いくつかの場所でフジワライトを使ってみた。
ブロック塀をスクリーンに
砂の上にも
アスファルトの上にもフジワラの顔が
遠くだとぼんやり
近くだと比較的はっきり
幽霊か。
当初の予定では闇の中を僕の顔が照らし、世界を制覇するつもりであったが、やはりぼや〜っとしたシルエットしかあらわれてこない。
ライトにも関わらず、かえって闇っぽさが出ている。確かドラえもんにそんな道具(暗くするライト)があった。
周囲を気にしなければもっと明るい照明はあるにはあるのだが、以前、深夜に照明を焚いていたら苦い経験をしたことがあるので気が引ける。
では逆に、フィルム越しに明るい街灯を見たらどうなるだろう。
どこにいるでしょう
呪われそうだったのでやめた(自分に)。
やはり太陽のように自らが光り輝く者が、真に光る者なのだ。ということで、僕は暗黒の世界に帰ります。
光と闇
太陽系から最も近い恒星プロキシマケンタウリは、太陽から4.22光年の場所にあるそうだ。遠い。
宇宙規模で見れば光ってるやつの方がマイナーなのである。言ってみれば、光は大多数の闇によって際立つのだ。そして光を遮り影を作るところに存在はある。
天国は地獄の底にある、みたいな話だ。だからいいのだ。
いいのか?