● 元々、移動できるように作られていた
かつて軍艦島に住んでいたことがあるという、島 群三郎さん(54)からお話を伺うことができた。
「元々、軍艦島は“移動可能な炭鉱”ということで作られていたんですよ。石炭は掘ればいつかは無くなりますから、無くなったら場所を移動してまた掘る。という画期的な構想だったんです。」
― なるほど、たしかに理にかなってますね!
「そもそも、最初は軍艦みたいに移動できるから、という理由で『軍艦島』と呼ばれてました。ですが、ご存知のように、主要エネルギーが石炭から石油へと移行し、結局一回も移動することなく軍艦島はその役目を終えました。」
― それは惜しい、というか移動する姿を一回見たかったです。しかし、そういう話は今回初めて聞きました。どうして世間には今までほとんど知られていなかったのでしょう?
「ええ、実は当時住んでた人も含めてほとんどの人がその事実を忘れていました。私もついこの間まですっかり忘れてましたからね。」
― 何か思い出すきっかけとかあったんでしょうか?
「世界遺産の話とか、上陸可能にするための工事の関係で、何度か本格的な調査をしたんですよ。今までそういうのやってなかったんですね。その時、調査員の人がでっかいスクリューが海底に埋まってるのを見つけて、『なんだこれは?』って話になって。それでようやく思い出したというわけです。」
― でっかいスクリュー!それはすごい。
● 戦時中は国家機密
「あと、みんなが忘れてた理由としては、やはり第2次世界大戦の影響は大きかったと思います。あの時、軍艦島が移動できることに目を付けた当時の海軍が、軍艦島を少しずつ移動させて敵に近づく作戦を構想として立てました。それで、軍艦島の移動に関することが国家機密となり、どんな些細なことでも人に話してはいけないことになったのです。そういうことがあって、いつのまにかみんな忘れてしまったんだろうと思います。」
― なるほどぉ。それは忘れますね。で、このたび初めて動く姿が披露されるということですが、それはどんなカタチで行われるのでしょうか?
「まずは、上陸可能記念イベントとして、現在の場所から長崎港までを月に2回ほど、往復します。それで半年くらい様子を見て、“イケそうだ”ということであれば、一気にドバイまで航行します。」
― ド、ドバイですか?! |