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ロマンの木曜日
 
おばけ屋敷をつくる仕事

こんな名前だけど怖いだけじゃダメなのよ

「夏の風物詩」という印象があるおばけ屋敷。実際、花火・浴衣・スイカ・おばけ屋敷、と並んでも違和感がない夏の記号だ。しかし、駅でよく見るポスターに「卒業式」がテーマのおばけ屋敷をやってる遊園地があった。珍しいなー。

そういえば最近は夏以外だったり、映画タイアップだったりとおばけ屋敷もバラエティに富んだものを宣伝で見かける。そんなおばけ屋敷シーンの今、そして仕掛ける側のキモチをうかがってきました。びっくりするぜ!(おばけ屋敷の中とは別の意味で)

大坪ケムタ



卒業式は平日も大混雑

卒業式をテーマにしてるおばけ屋敷をオープンしたのは稲城市のよみうりランドさん。その名も「ハナコさんの卒業式〜消えた卒業証書〜」。タイトルもミステリー調で興味ひかせますねぇ。イコール夏、というおばけ屋敷のイメージと背反する「卒業式」というキーワードも。

ちなみに「ハナコさんの卒業式」は期間限定なので現在は通常おばけ屋敷になってます。限定マニアは悔しがれ!


ハナコさんの寂しい背中と卒業証書が‥

ちなみに自分はよみうりランドさんに行くのははじめて。まぁ男ひとりで遊園地ってのも普通無いでしょうが‥。あ、ジャイアンツファンなら別だ。あとヴェルディファンも。遊園地に隣接してこの2チームの練習場があるのです。

駅からゴンドラで入園口まで行くんですが、まぁこれが絶景でアガる!いきなりアトラクションですよコレ。


巨人への道は遊歩道。
遠くなる稲城の街。遊園地を向くと‥。

ジェットコースターのループの中通ったりして超アガる!

思わずかぶりつきです、36歳。

今回はよみうりランドさんの企画担当の方に話を聞きに来園したのだけど、やっぱり件のおばけ屋敷に入ってからお話を聞きに行きたい。ということで「ハナコさんの卒業式」に行ってみると‥

ひゃー、予想以上に並んでます!

平日とはいえ春休みをナメていた‥園内は予想以上に小中学生やファミリーがいっぱい。こりゃ時間的に無理だなぁ‥それよりこんな子供いっぱいな所に36歳男性が並ぶと確実に怪しいよ!これはもう後日誰かと一緒に行くことにしよう‥。ということで先に事務所でお話を聞くことにしました。

まぁゴンドラの上から既に行列が見えてたんですけど。

 

おばけ屋敷で大事なのは体験型・音・闇

今回お話をうかがったのはよみうりランド企画課の奥谷さん。この大人気な「ハナコさんの卒業式」を考案したのも奥谷さんだとか。


子供たちに「イケメン!イケメン!」と呼ばれてた奥谷さん。

よみうりランドは開園が1964年、そしておばけ屋敷が誕生したのが1986年。今年で23年の歴史を誇ってます。現在の園内では、和風な「おばけ屋敷」と洋風の「恐怖の館」の2館が稼働しています。今回のような期間限定おばけ屋敷はこの2軒のいずれかを改装・リニューアルして運営するのだそう。

こちらは普段は「おばけ屋敷」。

こちらが洋風の「恐怖の館」。ややお笑い率が高いとか。

ロックは悪魔の音楽!ってイメージがいい。

よみうりランドさんが現在のような「期間限定おばけ屋敷企画」を取り入れ始めたのはここ5、6年の話。特にこの2008年度は、夏が「笑撃!ホラー屋敷」で秋に「パンプキンアパートメント」、そしてこの「ハナコさんの卒業式」と3つの企画を開催。かなり積極的です。

「一番最初は夏のイベントを考えてる時に、定番になってるおばけ屋敷もテーマを持たせてやれば、お客様的にもあらためて楽しんでいただけるんじゃないか、って話になって」

−−どうしてもマンネリ感は否めませんからね。

「それで最初に『3つの呪い』というのをやったんです。これが時間によってコースも内容も変わるんですよ。通常のコースとショートカット気味なのと、最後が逆走で」

−−それなら何度も行きたくなります。

「あんまり屋敷全体が大きくない所だから出来るんだと思いますね。あと普段は人が入ってなくて、センサーで反応して機械が驚かす、というものが中心なんですよ。でもその時は実際に人が入って驚かして怖さを出して。それが第1回ですね」

−−あー、やっぱり人の存在感や動きって機械と違いますもんね。


イチから建て替えてリニューアル、というとお金も時間もかかるけれど、改造しやすいのがおばけ屋敷の良さ。それが恒例になり毎年期間限定のおばけ屋敷を行うようになったとか。

今回の取材のきっかけになった「冬のおばけ屋敷」という珍しいコンセプトの「ハナコさんの卒業式」についても聞いてみる。


−−この時期におばけ屋敷やろうと思ったのは?

「以前から卒業シーズンに絡めたイベントはやってたんですよ。『卒業バンジー』とか」

−−確かに思い出にはなりますね(笑)。

「証明書持ってきてくれたら無料、とかで。それで春休みは中高生が多いんで、ターゲットも絞れて訴求できるような事をやろうと思ったんです」

−−なるほど、学生対象だから学校もの、それでオバケと言えば「ハナコさん」と。

「お客様は入り口で卒業証書の筒をお渡しさせていただいて、おばけ屋敷の中に『ハナコの箱』というのがあってひとつだけハナコさんが受け取ることが出来るものがあるので、そこに入れてください、というものなんです」


渡すとハナコさんは成仏出来るのです‥。

「だいたいおばけ屋敷って一周回って終わり、とか乗って終わり、とかじゃないですか。自分で何かする、っていう体験型にすることで小さな子供さんもより楽しめるんじゃないかと」

−−そういった企画はいつくらいから始めるんですか?

「これは昨年末くらいだったかな‥。それでスタートが2月21日で。機械担当の人間も常駐してますんで、センサーとかの仕掛けをいじれるんですよ。それで新しい仕掛けを考えて」

−−楽しそうですねー。じゃあ今回はテーマが学校だからどんな仕掛けを作るか?とか。

「そうですね。机とかオルガンとか‥おばけ屋敷ってちょっとした暗さや音で雰囲気が変わるんですよ。たとえば今回だったら卒業式なんで『仰げば尊し』が流れてるんですけど、暗闇から流れてきたら結構怖いですよ(笑)」


入り口には靴箱があったり雰囲気バッチリ。

たしかに唱歌系って明るい時はいいけど、夜はちょっと不気味だよねぇ。あとピアノとかも。あとそうした「ベタ」なものも、映画だと冷静に見れるけど体験型のおばけ屋敷だとリアルにドキドキする、というのもある。

それと、ついでに聞いてなるほど‥と思ったのは「ハナコさん」って言葉自体は権利とか関係ないんですね(もちろん映画版のやつとかはあるんでしょうが)。もうみんなのハナコさん、なんだなあ。


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