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ロマンの木曜日
 
ヘリウム吸って笛を吹く

肺にヘリウム充填中

 パーティーグッズとして売っている、吸うと声が変わるガス。誰でも一度くらいは遊んだことがあるのではないでしょうか。

中身は主にヘリウムで、窒息しないように酸素も少し混ぜてあるのですが、通常の空気とヘリウムでは音の伝達速度が違うとか何とかいう理由で、吸い込んで喋ると甲高い変な声に聞こえます。

では、たとえばあのガスを吸って笛を吹いたら、どんな音になるのでしょうか。

我ながら小学生並みの発想だなーと思ってしまいましたが、気になるものは気になるので、実験してみました。

萩原 雅紀



ガスと楽器を準備

まずはヘリウムガスを買いに東急ハンズへ出かけると、なんと、ヘリウムガスとリコーダーが同じフロアのすぐ近く同士で売られていました。ひょっとして、ハンズもこの実験をプッシュしているのでしょうか。

リコーダーだけだと実験がすぐに終わってしまい、記事もすぐに終わってしまうので、ほかに実験に使えそうな楽器として、パフパフラッパ、鈴、カスタネットも購入しました。


買ってきたもの この2つを一緒にレジに出すのが恥ずかしかった…

客観的に見てもどんな怪しいパーティーが行われるんだ、というラインナップですが、店員さんは怪訝そうな顔ひとつ見せずに包んでくれました。

余談ですが、実験をやってみるとヘリウムガスが全然足りず、僕はこのあと3日連続で新宿のハンズにガスを買いに行くことになります。


楽器は楽しい

さっそく実験を開始したいところですが、リコーダーを持ったのは小学校を卒業して以来なので、約20年ぶり。そこで少し練習したところ、思ったよりも指遣いなど忘れてなくて、しかも吹いていたらすごく楽しくなってきました。最近単調だと思っていた僕の生活に、この1200円くらいのリコーダーが変化を与えてくれたのです。

余談ですが、それ以来、毎日1時間近く家でリコーダーを吹いています。もっと早く買っておけばよかった。


なんだか楽しい T-スクエアのF1のテーマを熱演中

実験開始

本来の目的を忘れる前に、実験を開始します。

まずは、ヘリウムを吸うとどんな風に声が変わるのかを聴いてみましょう。


まる1日セリフを考えてこれになりました


次に、リコーダーで普通にメロディを吹き、その後ヘリウムを吸って、同じメロディを再度演奏します。

曲は何にしようか考えたのですが、僕でも吹ける簡単なメロディー、この記事を読んでくれる人が知っている、そして著作権など面倒臭くない、という理由で、DPZラジオのオープニングにしました。


こうして見ると全然楽しそうじゃないな

期待通りというか、ヘリウムを吸い込んで吹くと、だいたい1音くらい音程が上がりました。ただし上がったのは一瞬で、無意識のうちに一度息継ぎをしてからは元の音程に戻ってしまいました。でも吹いたときの感覚と違う音が出るのは面白かった。

結論としては、やっぱりヘリウムを吸い込んでから笛を吹くと音程が上がる、ということが言えると思います。


リコーダー以外は

次に、パフパフラッパで実験してみます。これは発音する場所の手前に空気を溜める場所があるので、そこにヘリウムを充填すれば音が変わりやすいのではないかと思ったのですが。


音が変わらないので所在なさげ

理由はよく分かりませんが、パフパフラッパは何度試してもほとんど音程に変化がありませんでした。

単に「音が伝わる速さが違うから」だけではない理由があるのでしょうか。「絶対これは変わる!」と思っていたのでガッカリです。今後の使い途もないし。

続いては打楽器の実験。といっても打楽器に息を吹き込んでも仕方ないので、棒の先にカスタネットと鈴を取り付け、ヘリウムを充填したビニールで楽器自体を覆ってみることにしました。


棒の先にガムテで貼りつけて ビニールで覆い、中にヘリウムを充填する
この状態で振って音を出す 鈴も棒の先に接着してビニールで覆う

この方法でカスタネットと鈴を鳴らしてみたので、続けてどうぞ。


ちょっと変わった!?

鈴は変化を聞き取れず

カスタネットは、空気に比べてヘリウムの中の方が、明らかに高くて乾いた音に変化していました。しかし鈴ではほとんど変化を聞き取れず。ビニールの音がうるさいのもありますが、もともと音程が高いので変化を感じづらいのかも知れません。

 

プロの演奏でも音は変わるか

とりあえずこれで実験は終わってしまったのですが、何となく中途半端な気がします。もっとも、そもそもゴール地点は自分でも見えていないのですが、せっかくの機会なので、楽器が演奏できる知り合いに声をかけて、集まってもらいました。


楽器持参でお集まりいただいた皆さん ディジュリドゥ:ゆーだい
鍵盤ハーモニカ:幻の銀侍 ホルン:もっさん

この3人、ちょうど1年くらい前の僕の記事「寿司ポリー」でも協力してもらったのですが、実は全員オーケストラ経験者。そんな本職の音楽家の演奏で、どのくらい変化するかを聴いてみたいと思ったのでした。

まずは、ゆーだいがわざわざ持ってきてくれた、アボリジニの民族楽器ディジュリドゥ。彼の本職はパーカッションですが、演奏会でディジュリドゥを担当したこともあるという腕前。さっそく吹いてもらいましょう。


変化してるの分かるだろうか

低音でぶわんぶわん鳴るのが特徴のディジュリドゥですが、ヘリウムを吸った直後、音程がぐぐっと少しだけ上がったのが分かるでしょうか。その後、彼は循環呼吸で鼻から息を吸いつつ音を出し続けているので、徐々にヘリウムが薄くなって音程が下がってきます。

すごい、高度なテクニックと聞いたことのない音程の変化。精度の高い実験ができて満足です。後半、音程が下がってきた頃に、循環呼吸中の鼻の前でヘリウムを噴射しようかとも思ったのですが、あんまりにあんまりなのでやめました。

次に演奏してもらったのは幻の銀侍(名前の由来は気にしないでください)。本職はトロンボーンですが、今回は鍵盤ハーモニカで実験してもらいます。


何度かトライしてもらったのだが

どうしてだろう。鍵盤ハーモニカはヘリウムを吹き込んでもまったく音程が変化しませんでした。銀侍は悔しそうに何回もヘリウムを吸い込みますが、変わるのは甲高くなった己の声のみ。「トロンボーン持ってくればよかった…」と肩を落としていました(上の集合写真)。

最後に、「寿司ポリー」ではマヨネーズネタばかり食べ続ける羽目になった、ホルン奏者のもっさんに「ジークフリートのテーマ」で実験をお願いしました。


やはり爆笑の渦を生み出すもっさん

このときに初めて、金管楽器に対するヘリウムの恐ろしさを知りました。金管楽器の音程は奏者の感覚に左右されるところが大きいので、いつも通りの音を吹こうと思っても出てくる音がとんでもなく高かったりすると、まったく音程が掴めなくなるのです。いやー、これ、もっさんの本番前とかじゃなくて本当によかった。

その後も、もっさんはしばらくの間、音出しを続け、自分の中で混乱した音程を取り戻す作業に専念していました。

発展性はないかも

予想もしない音程に変わるのは確かに面白いですが、まったくコントロールできないし、息継ぎをすれば戻ってしまうので、現代音楽でもない限り、奏法にヘリウムを取り入れるのはたぶん無理でしょうね。

個人的にはリコーダーの音程が変わるのを確認できたのでよかったですが、それ以上に、リコーダーという大切なものを見つけてしまったことの方が大きいかも知れません。

あと、ヘリウム缶は1缶が約5回分で1000円くらいするのですが、間違っても安いからといって風船用を吸い込まないようにしてください。あれは酸素が入っていないので恐らく気絶します。

この缶捨てるのも恥ずかしいなあ

 
 
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