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ひらめきの月曜日
 
椎茸みたいなパン探し

パンじゃない、椎茸を探しいているんだ

1.まるいプチパン
2.×型に切れ目が入っている
3.できれば茶色っぽいといい

おそらく、これが椎茸になる得るパンの要素だろう。念頭に置いてまず向かったのは伊勢丹。

驚くことに、伊勢丹のパンコーナーは全部対面販売式になっていた。トレーとトングを持ってうろうろせず、ショウケースの中のパンを店員さんにとってもらうケーキ屋方式だ。

眺めていると丁寧に店員さんが接客してくれる。

「こちらは天然酵母で国産の小麦粉を使って焼き上げておりまして……」

でも、私が求めているのは椎茸になるパンなのだ。

なんとなく説明を聞くふりをしながら、より椎茸っぽいパンを探した。残念ながら伊勢丹には×印のクープのパンがこれだけだった。


新宿伊勢丹代表 メゾンカイザー「キュルキュマ」285円
ヘーゼルナッツとくるみが練りこまれている、ターメリック(ウコン)のパン。

ふくらみが大きく×がはっきりしないため、椎茸っぽさもあまり感じられない。残念だ。

椎茸への道としては、まだ5合目ぐらいというところか。でもウコンの風味がふんわりきいていてすごく美味しかった。




続いてはお向かい三越アルコット。パンの店は「ジョアン」1軒だった。変わらぬ「トレーを持ってうろうろ」タイプのお店でちょっと安心する。

ここのお店は「コーンパン」というその名のとおりコーンの練りこんであるパンが人気で焼きあがり時間には行列ができる。

コーンパン目当てのお客さんで混まないうちに急いで私は椎茸パンを探した。これは、というものを見つけましたよ!


三越アルコット代表 ジョアン「ノアレザン」252円
自家製の発酵種を使っているそう。レーズンとくるみが練りこまれいてる。


今度は先ほどの黄色と違って色も茶色に近い。これはかなり期待できるぞと購入時は思っていたのだが、自宅でスライスしてみたら、衝撃を受けるほどの椎茸感ではなかった。

あしらわれた白い粉が災いしている。クープ部分の焼き色が濃いのもよくなかった。惜しい。惜しいが、すでに7合目ものぼりきり8合目は目前というところまでは来ているといえるだろう。




あらたな可能性

さらに店を巡るうち、当初目をつけていたハード系の固いパンだけが椎茸ではないかもしれない、という可能性が見えてきた。

ブリオッシュや、バターロールのようなソフトタイプのプチパンにも「これなら椎茸になるかもしれないな」と思われるものがいくつか見つかったのだ。

写真はマウスオンでスライスします


小田急本店 トロワグロ 「オレンジパンズ」170円 
オレンジピールを練りこんだ甘めのパン

小田急本店 ルビアン 「バターロール」84円
丸い形がバターロールとしてはちょっと珍しいテーブルパン

写真左のオレンジのパンは、クープが山になってかなり盛りあがっているタイプ。包丁ではなく、はさみで切れ目を入れているらしい。そういえばこの手のパンがあったのを忘れていた。

スライスするとかなりいい感じに椎茸だ。登頂したとはいえないが、すでに8合目までは来ている感じ。

バターロールの方はテカテカした光沢がどちらかというとナメコのようでもあるが、スライスしたときにキノコっぽさが現れるという点ではかなり健闘しているのではないか。目指す頂上がナメコであれば登頂といってもいいが、指標が椎茸なので図ではだいたい7合目あたりとした。

そして見失う

さて、順調に椎茸への道を登っているようにも見えるのだが、実は上記のどちらかといえばナメコっぽい「バターロール」にキノコ性を見出してから私の選別眼がおかしくなってきた。

なんだか、丸いパン全部がキノコに見えてきたのだ。

当初のチェックポイント、「×印のクープ」、「茶色っぽい色」という2点がなくても、あれもこれもがキノコに見えてくるようになってしまった。

気づいたら、これもキノコ? あ、これもキノコ! と椎茸とはいえないようなパンを「キノコっぽいから」と買っていた。


小田急ハルク店 ポンパドウル 73円
「ハイジの白パン」と呼ばれるようなふわふわのパン。かかってるのは粉砂糖だった

京王百貨店 ポール「シュケット」63円
シュー記事にあられ糖をまぶして焼いたもの。これがまたえらく美味しい(そして小さくて高い)

京王百貨店 フォション
丸いプチパンにチーズが練りこまれつつふりかけてある。ああ、美味しいなあ


確かに、キノコとしてありそうだなとは思う(私だけでしょうか)。

思わずキノコの図鑑で目利きをしてみたのだが、ポールやフォションのパンは、あの有名なベニテングダケなのではないか。

毒キノコである。

素人の目利きでは食べるのは危険じゃないか! いや、パンなのでまったく危険ではないのだった。


食べると下痢や嘔吐、幻覚などの症状を起こす

ついに、「パン」というくくりからもはみ出した

椎茸のことを忘れて、何を毒キノコに夢中になっているんだよ! と早く軌道修正したいところだが、デパ地下にいた時点での私はまだ自分が脱線していることには気づいていない。

そしてついに「あ、これ、もしかして最高にきのこなんじゃない?」と思って買ってしまったのだ、肉まんを。


華正楼 「豚まん」 420円
中華街ではナンバーワンともいわれる。本当美味しい。


この肉まん、買ってからしばらくは「これはいいキノコを買ったぞ」と思っていた。本気で思っていた。

なんか違わないかとようやく気づいたのは、新宿から渋谷に移動すべく山手線に乗ったときだ。あれ? 私、何してるんだっけ?

キノコに見えるパン……を探してるんだよな? そういえば、最初は椎茸に見えるキノコを探してたんだったわ。そうだよ、椎茸だよ。なんか今買ってるの、みんな毒キノコじゃん!




目は覚めた。そうなのだ、椎茸なのだ。

続いて渋谷ではそう次々にパンは買わず、これぞ「椎茸」と思うものだけを重点的に買って行くことにした。

それにしても、パンって椎茸に限らず結構キノコっぽいんだなあというのは発見だと思う。


横スライスの肉まんが見慣れなすぎて慌てた。蒸し器で蒸したらいつもと同じ味で安心しました

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