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ちしきの金曜日
 
持って寝る

近頃、5歳になる娘が
お父ちゃんにつかまって寝ないと恐い夢見る。
と言って、いつも私につかまって寝ている。
そういえば、私も子供の頃、お気に入りのおもちゃを手に持ったり枕元に置いたりして寝たものだ。

大人になって、そういう習慣があったことすらいつの間にか忘れてしまっていたが、子供時代の自分にとってはけっこう重要な行為のひとつだった。

あれは結局どういう意味があったんだろうか?
大人になった今、リトライしてみることで何か見えてくるものがあるかもしれない。

T・斎藤



発端は娘のセリフ

子供には大人が理解できない不思議な能力が備わってるような、そんな気がする場面が時々ある。

「恐い夢ってどんな夢?」
と娘に聞いてみたところ
一人ぼっちになっちゃう夢。でもお父ちゃんにつかまってればこわい夢も見ない。
と言っていた(実際は長崎弁で)。かわいいなと思うと同時に、手に持ってるものと夢とに何か関係があるのかも思うような、興味深いものを感じた。

夢については、謎が多い。
そもそも人はなぜ夢を見るのか、というところからして現代の科学では解明できてない。その日のできごとを整理して脳に記憶する過程で夢を見るという説もあるが、あくまでもいろんな説がある中のひとつだ。受験勉強時代、ひょっとしてたくさん寝た方が頭が良くなるのかな?と思った私は勉強時間を削って睡眠に当てたりもしてみたが、思ったような効果はでなかった。

いや、夢どころか、睡眠そのものについてだって、実はよくわかってないという。

Q:なぜ睡眠が必要なのか?
A:それは脳や身体を休ませるためだ
と一般的には考えられているが、ずっと前読んだ本によると、科学的には8時間も休む理由は見当たらないという。数値的に見ると、多くの人は最初の数時間のうちに充分な量回復し、それ以降は何のために寝てるかわからないような時間を過ごしてるという。

シンクロナイズド・スリーピング。これも不思議と言えば不思議。

では一体なぜ、人はたくさん眠るのか?
と考え詰めていくと、どうも、睡眠には休む以外に何か役割があるんじゃないか?みたいな考えに行き着く。

で、いろいろな説があるわけだが、私が「これは面白い」と思った説は、人間の意識は水面下でみな繋がっており、寝てる間だけ、その繋がった意識の世界と交流ができるという説。つまり睡眠は全人類共通の“意識の世界”とのコミュニケーションの時間であるという。

なんでそんな現実離れした説が浮上してくるのかというと、まるで他人が体験した世界を見たとした思えないような夢を見たという話が、何例も報告されているからである。

…話が戻らなくなってしまったので無理矢理戻す。
いろいろややこしいことを書いたが、ここから先はそんなこと忘れてしまうくらい単純だ。何かを持って寝る。

子供時代によくやった行為の効果、感想および、夢への影響等について確認してみようという取り組みである。

一日目の夜

一日目の夜は、携帯電話とマウスを持って寝ることにした。

今日はこれを持って寝よう。

子供はお気に入りのおもちゃとか人形とかを持って寝るのに、なんでこんな仕事みたいなチョイスなのか?

それはズバリ、その日私は仕事がはかどらなかったから。

「明日はがんばろう」という反省の気持ちと、寝てる間にいいアイデアが浮かばないかなーという淡い期待と、寝てる間に小人さんが現れて朝起きたら仕事が片付いたりしてないかなーという都合のいい奇跡を願う気持ちが入り混じった結果のセレクション。 (こうして文章で理由を書いてみると、いかにもダメな人の発想って感じだ)

携帯電話。「秒間30枚」って書いてあるのはウソ。
最近お気に入りのホタルみたいなマウス。

仕事の道具とはいえ、携帯もマウスも嫌いじゃない。
むしろ日中は「そんなに好きなのか?」と雲の上から質問されそうなくらい、よく手にしている道具だと思う。
電池交換時は、フタが開いて虫っぽさが半端じゃなくなる。

この日は、遅くまでPC作業をしてしまい、限界まで眠い状態で布団に入った。眠すぎて具合が悪い。

そんな状態で、両手に物を持つ。

左手に携帯電話。
右手にマウス。

やってみると、これがなかなか不快だった。

さっきまでPCに向かってマウスを持っていたのに、布団に入ってもまだマウスを持ってる。
“開放されない”という感じだ。

携帯もなんとなく不快。
ただ持ってるだけなのに、これまたどこか開放されてない感じを受ける。

手を開いてリラックスして寝たい…。

が、ガマンして持ち続けているうちに、
変化の兆しが見えてきた。

たしかキャプテン翼の一場面だったと思うが
夜寝る時にサッカーボールを抱いて布団に入る。
そんなシーンが頭に思い浮かんだ。
「ボールはともだち」

これだ!
私はまだ仕事道具に対する愛情が足りないから不快に感じるんだ。そう思って、
「マウスはともだち」
と考えることにした。

気付くと朝だった。

いつのまにか私は熟睡していた。
そして手には何も持ってなかった。

持って寝たはずのマウスも携帯も見当たらない。
毛布をめくってみると、包まるような形でゴロンと中から出てきた。

友達にはまだだいぶ遠いようだ。

肝心の夢も、何を見たのかまったく覚えてない。
夢との因果関係を探りたいと言いつつ、このありさま。

第一日目の睡眠は、こんな感じだった。


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