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ロマンの木曜日
 
水圧鉄管が通る街

水圧鉄管が通る森

山道をドライブしていると、斜面に沿って金属の太いパイプが上から下に延びているのを見かけることありませんか?

それは水力発電所に水を送っているパイプで、高いところから水を一気に落とし、その勢いと圧力で水車を回して発電しています。したがって内部には強い圧力がかかるため、強度の高い鉄が使われていて、水圧鉄管と呼ばれます。

最近、この水圧鉄管の魅力に気がついてしまい、見かけるたびに写真を撮っていたのですが、山ではないふつうの街中をぶっとい鉄管が突き抜けている場所を見つけました。

かなりインパクトのある光景なので、ぜひ見てみてください。

萩原 雅紀



水圧鉄管がかっこいい

日本にどのくらい水力発電所があるのかは分かりませんが、水圧鉄管はちょっと山道を走れば割と簡単に見つけることができます。山の斜面の途中から急に姿を現し、一直線に下って行く鉄管。のどかな光景の中に走る、あからさまに不自然な緊張感がたまりません。


一旦通り過ぎてからUターンして戻ってきて撮った 花が咲くのどかな光景の中を一直線に駆け下りる鉄管
こちらはやや角度が緩め でも下から見上げるとこんな迫力

どちらも、写真を撮っている背後には発電所の建物があるのですが、今のところまだそっちには興味がないので、水圧鉄管の写真しか撮りませんでした。

もっとも、今までも僕の趣味である「ダムめぐり」の最中に、水圧鉄管にもよく出くわしていたのに写真を撮っていなくて後悔しているので、いつか「発電所の建物も撮っておけば!」という日が来るかも知れません。

でも、外からは動きが見えないインフラ施設で、これだけのダイナミズムを感じさせるなんて、やっぱり水力発電所のいちばんの魅力は水圧鉄管だと思うのです。したがって、「好きな水力発電のタイプは?」と訊かれたら、ダム好きだけど「ダム式」ではなく「ダム水路式」もしくは「水路式」と答えるでしょう(意味分からないと思いますが、「ダム式」は水圧鉄管が見えないんだ、程度に考えてください)。


寄り添った2本が揃ってカクッと曲がっているのがかわいい つかず離れず、しかし息ピッタリの熟年夫婦のよう

というわけで、皆さんにも水圧鉄管の魅力が十分伝わったところで本題に入ります。


佐久発電所がすごかった

群馬県の渋川市から利根川を挟んだ対岸に、東京電力の佐久発電所という水力発電所があります。

ここは発電所そのものよりも、その上に建つ水圧鉄管のサージタンクがあまりにも有名。周辺にはこれ以上高い山も建物もないので、どこから見ても視界にこのサージタンクが入ります。丘の上にそびえる巨大なタンクは、完全にこの一帯のランドマークと言っていい存在感。


丘の上から見下ろすタンク どの方角からも視界に入る

サージタンクとは、鉄管内の急激な水圧の変化を逃がすためのものです。たとえば発電を止めるときには水圧鉄管の出口の部分にある水門やバルブを閉じるのですが、そのときに水圧鉄管の中が完全に密閉されていると、上流から流れてきていた水の勢いの逃げ場がなくてウォーターハンマーという現象が発生、水圧鉄管の内側に必要以上の圧力がかかってしまい、鉄管が破裂したりする恐れがあるのです。

ちょっと古い学校などで、洗面所の蛇口を勢い良く閉めると「ガツン」という音がするのが、規模は小さいけどウォーターハンマーです。

そこで、鉄管の一部を上に向けて解放しておくことで、発生した圧力の変化を吸収してしまおう、というのがサージタンクの仕組み。佐久発電所のサージタンクは発電所と同じ昭和3年に完成、完成当時は世界一の大きさだったそうです。現在のタンクは昭和63年に完成した2代目ですが、やっぱり巨大。


水圧鉄管はタンクの下で3本に分かれ それぞれ発電所の中に突入(画像合成してます)

ここは以前にも来たことがあるのですが、あらためて詳しく見てみるとサージタンクのすぐ真下が公園になっていました。こういう取り組みは無条件で支持したくなります。


でも、ちょっとだけ不気味 水圧鉄管とサージタンクの接続部分が目の前に!

「ふれあいひろば」の看板が傾いていたりゴミ箱からゴミがあふれていたり、駐車場では外回りの営業マン風の方々が寝ていたり、やや落ち着かない場所ですが、奥へ進むと高さ75メートル、コンバトラーVよりもでかいサージタンクの根元にたどり着きました。

どーん!


いちどでいいからあの階段を登ってみたい

ところで、このタンクの下で水圧鉄管が落ちて発電所に入っているわけですが、ではどこから、どうやって、水はここまでやって来ているのでしょうか。というわけで水圧鉄管に沿って上流に向かってみたところ、なかなかすごい光景が目の前に広がったのです。

ずどーん!


ふつうの街中をぶち抜く水圧鉄管

ふつうの街中を真っすぐ貫く、ぶっとい水圧鉄管。日本で、街中にこんな石油のパイプラインみたいなのが通っている場所なんて滅多にないのではないでしょうか。皆さんの家の近く、通ってないですよね?

上のほうで「のどかな光景の中に走る、あからさまに不自然な緊張感」などと書きましたが、山の中よりもこっちの方がよっぽど不自然です。

写真は鉄管を跨ぐ橋の上から撮ったのですが、その橋の名前がまさに「鉄管橋」。ストレート!


この名前見つけたとき心の中で小躍りした 鉄管に沿って道が続いている

実はここから1kmくらい上流に、この発電所の水を溜めておく専用のダムがあって、そこからサージタンクまで真っすぐ鉄管が延びているのです。

さらに鉄管沿いの道をダムに向かって進んでみると、今度は道路が鉄管の下をくぐっている場所がありました。試しに僕と一緒に撮ってみたので、水圧鉄管がどれだけ太いか見てください。


真上をものすごい量の水が流れてる、って考えてください 鉄管の直径は約4.5メートル
こういうシュールな場所が何ヶ所かあった 鉄管が埋まった土手にツツジでTEPCOマーク

上流に向かってダムが近づくと、鉄管は土手に中に隠れてしまいます。その土手には草花で東京電力を表すTEPCOの表記とマークが。そしてその先には、小さいながらこの発電所で使う水を一時的に溜めている真壁ダムが建っていました。


緩やかだけどいちおう谷に造られている真壁ダム 貯水池のまわりは金網が張りめぐらされている

正規のルートで解説すると、このダムに溜められた水が取水されて、あの鉄管の中を通って住宅街を抜け、サージタンクを経由して発電所に送られているのです。

というわけで、特にオチもなく淡々と佐久発電所をゴールからスタート地点まで遡ってご紹介しました。

山の中にしかないと思っていたものが、とつぜん街中に出現したのですごくびっくりしたのですが、伝わったでしょうか。

こういう想像もつかない景色が見られるから、知らない街に行くのが楽しくて仕方ありません。

あたりまえなのだろうか

近所に水圧鉄管もサージタンクもない場所で育った僕から見れば、すぐ上にダムがあって、街中をあんなぶっといパイプが通っていて、でかいサージタンクがある景色はインパクト十分なのですが、やっぱりこの近所の人々にとってはそれがあたりまえの光景なんでしょうか。

そういえば、冒頭の水圧鉄管が通る森の木はぜんぶ桜で、地元の人々は鉄管のまわりに集まって花見をするそうです。

やっぱり鉄管は完全に地元に溶け込んでいるのですね。

来年はぜったい桜と鉄管を見に来よう

 
 

 

 
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