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住「林さん新宿好きですよね?」
林「好きと言うか、飲みに行くことが多いですね」
住「で、新宿のランドマークって言ったら何を思い浮かべます?」
林「ランドマークか…」
住「何かないですか?」
林「あ! ドン・キホーテですかね」
住「ドン・キ?」
林「ええ、あのドン・キを見ると新宿来たな、って」
住「もっと大きいもので、他にありません?」
林「靴屋の上のソフトバンクの看板から流れる音、あれ大き過ぎますよね?」
住「ああ、確かに音量でかいですね」
住「いや、音量じゃなくて。面積が大きいもので、ほら、例えば看板とか」
林「ああ、アルタ前の温度が出てる看板。いつもあの温度を見て季節を感じてますよ」
住「確かにあの温度表示は便利ですけど、もうちょっと歌舞伎町側の、ほら、大ガードの方に」
林「あ! エプソンの看板」
住「そう、それ!それです」
林「大坪さんが怪獣が新宿に来たら壊すって書いてた(大怪獣、新宿にあらわる)」
住「あの看板見ると新宿に来た、って感じしませんか?」
林「けっこう遠くから(明治通りぐらいから)でもあのエプソンの看板が見えるんですよね」
住「ええ、とにかく大きいから」
林「まわりがまだ新宿っぽくなくてもあの看板が見えると、あ、新宿って思います」
住「でしょ? あの看板がなくなるとしたら、どうです?」
林「なくなるんですか?」
住「らしいですよ。6月5日の20時に消灯しちゃうって」
住「なので、その瞬間を映像におさめて来ようかと」
林「でも、住さんの記事は6月6日ですよ。時間的に間に合いますか?」
住「5日の20時に消灯の瞬間を撮影して、そこから書いて6日の朝までには」
林「新聞記者みたいだ」
住「記者きどりで現場に行って来ます!」

(text by 住 正徳







新宿大ガード横にドーンと光る「EPSON」のネオン灯。あれがなくなってしまうらしい。セイコーエプソン株式会社から6月1日にプレスリリースが出ていた。

「新宿カレイドビル屋上のネオン広告撤去のお知らせ」

プレスリリースによると撤去の理由は2つ。1つは「エプソンブランドの認知度を高める」というお役目を充分に果たしたから。もう1つはCO2排出の削減に貢献するため。年間で約94トンのCO2排出を削減出来るという。それもあって、世界環境デーの6月5日にネオンを消灯するのだとか。

あのネオン灯が消える瞬間を是非映像におさめたい。歴史的な瞬間をカメラにおさめ、年を取ってから若い人たちに自慢するのだ。「昔、あそこには大きな大きなネオン灯があったんだよ。最後の瞬間の映像も持ってるぞ。見るかい?」と。

というわけで、ビデオカメラ片手に新宿に飛んだ。




EPSONのネオン灯の思い出

大学4年の頃、僕は西新宿の飲み屋さんでアルバイトをしていた。飲み屋さんと言っても、席に女性が着いて1人最低でも3万円くらいかかる、いわゆる「クラブ」と呼ばれるお店だ。若い人たちが踊りに行くクラブではなく、頭にアクセントがある方のクラブ。そこのボーイさんを2年間ほどやっていた。大学4年から2年間、計算が合わないのは1年間留年しているからだ。

留年したことは置いといて、とにかく、西新宿は思い出深い場所である。バイト終わりはいつも終電で家に帰っていた。そして、駅に急ぐ道すがら、あのEPSONのネオン灯を見上げていたものだった。

と、思っていたのだが、前出のプレスリリースによるとあのネオン灯が出来たのは1996年の6月。その頃、僕はとっくに大学を卒業して社会人3年目を迎えていた。バイトの帰りに見ていたはずがない。撤去されると聞いて、勝手に自分の思い出に組込んでしまったのだ。

まあ、それくらいあのネオン灯には存在感がある、ということだと思う。ずっと昔からあったような気がしてならないのだ。


この存在感

こうして改めて見ても、その大きさに圧倒される。横幅77.9メートル、高さ11.8メートルというスペースに「EPSON」の文字。これで目立たない訳がない。


とにかく大きい

西口側はこういう感じ

このネオン灯が6月5日の20時をもって消えてしまうのである。

看板が完全に撤去されるのは7月19日らしいが、5日の20時以降、このネオン灯に光が灯ることはないのだ。新宿の夜の明るさが変わってしまいそうである。





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