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フェティッシュの火曜日
 
建設中の東京スカイツリーを見たいと思ったのだ(2009年版)
東京スカイツリー(2011年12月竣工予定)


去る2年前。2007年のことになるが、東京都の下町、墨田区に東京タワーのおよそ2倍の高さとなる新東京タワーができると聞いて、なんだか驚いた僕は建設前の現場をリポートした。

完成前に新東京タワーの建設予定地を見ておきたいと思ったのだ(初出:2007年6月4日)

詳しくはその時の原稿を見ていただくとして、当時、地元の人も含め東京の人は、この地に高さ610mのタワーが建つと聞いてやや驚いた。東京タワーと言えば、東京の象徴とも言える施設だ。それが、下町のこぢんまりした街にいきなりやってくると考えていただければ良い。地元じゃ大ニュースだ! と踏んだ僕はさっそく現場に向かった。

しかし、僕の想像とは裏腹に、墨田区押上の街は実にのんびりとしていて、商売っ気のかけらもなかった。

完成は2011年なのですが、今年2009年はちょうど建設まっただ中。そこで、現在は当時と比べてどのように街が変化しているのか、気になってもう一度あの地に行ってみることにした。

 

梅田カズヒコ



2007年と同じ構図−1(なにやら慌ただしい建設雰囲気)
→右奥に見える黄色い看板が同じ構図である証拠です。

今回の記事は2007年の僕の記事と見比べていただけるとより楽しめるかもしれません

610mの超高層タワーの建設が決まってから2年。早くも駅前の風景は慌ただしく変貌を遂げつつあった。

すなわち、クレーン車やトラックが駅前の遊休地にせわしなく運び込まれ、あらゆる資材が運び込まれていた。

東京の土地は遊ぶことを許されないのだ。

ドミノでも建物でも何でも、完成するまでが一番楽しいのだと思う。出来てしまう前。それが一番魅力的だ。(人間も同じですよね)

2007年と同じ構図−2(あ、左の建物と右の標識がない!)
→中央やや右、僅かに見えるバス停が同じ場所である証拠。
同じ場所の2007

 

で、いきなり結論ですが

想像の通りというか、大きな変化があるのは駅前の、工事中の場所だけで、相変わらずのんびりとした時間が流れていた。ただ、それでも2007年の記憶を思い出しながら歩くと、いろいろと変化が垣間見られた。

例えば建物が消えていたり、建て替えられていたり。植え込みの場所が前後したり。書店が潰れて弁当屋さんになっていたり。そんな、地元民以外にとってはどうでもいいことかもしれないが、今日だけはこの墨田区押上の街が皆さんの地元だと思ってお付き合いいただきたい。

そう考えると、日本中に無数とあるそれぞれの“地元”のメタファーが押上の街だと言えなくもない気がしてきた。

 

地元の人は建設中の東京スカイツリーをどう思っているんだろう

地元の人は今、建設されつつあるスカイツリーについてどのように考えているのだろう。

2007年にもお邪魔した喫茶店を見つけた僕は、うれしくなってさっそく中に入ってみることにした。そこには、2年前と同様の“ママ”が居た。


2007年と同じような場所から-3(お、軒先の看板がオレンジに)


妙に居心地の良い、なんだかフィットする席に座った僕は、アイスコーヒーとミックスサンドを注文してしばし待つことにした。

待つ間、東京スカイツリーについてどう思っているか聞こうとしたけど、常連さんが“ママ”に楽しそうに話しかけていて、僕には間に入っていく勇気はなかった。

しかし、会話の内容から察するに、この喫茶店の空気は、2年前の2007年と変わっていないようだった。

そりゃ部外者の僕が、他人の生活に入り込んで発言することははばかれるが、それでもこう感じた。

このお店はここ2年、東京スカイツリーに浮かれることもなく毎日平穏に日常を過ごしてきたのだと。

部外者の意見

そりゃ僕だって、2年間会わなかった知人に会ったら、「変わってないねー」て言われるかもしれない。でも、僕のこの2年間は大きな変化があった。でも、それは当事者の話であって、遠い部外者から見た俯瞰の視点では、それほど変わってないのだ。

ただただ、日常が積み重なっていくだけ。それを幸せと呼んだりつまらないと呼んだりするのは僕らの勝手な思いである。


「熱帯魚(ネオンテトラ)は昔より大きくなったのよ」とママ。

本来の目的は建設中のスカイツリーを見ることだ、と思い返した僕は、思い直して建設予定地に向かった。


 

 
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