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ちしきの金曜日
 
チューボーと行徳富士

東京湾岸に人間が作った山がある。「チューボー」と「行徳富士」だ。今回はこの2つを見に行った。

これが「行徳富士」

大山 顕



奇妙な出っ張り

ぼくは東京の地形に興味津々で、国土地理院の数値地図というものををよく眺める。これを見たことのある人は必ず気づくと思うのだが、東京湾岸に奇妙な地形が2か所ある。


東京の隅田川、荒川、江戸川の河口あたり。これを見ると「おや?」って思いませんか。
【国土地理院の5mメッシュ数値地図をカシミール3Dで表示】


上の地形図では東京の中でもとくに真っ平らな部分を見ている。いわゆる「江東ゼロメートル地帯」を中心としたエリアだ。東京におけるオランダと言ってもいい。いや、よくないか(オランダは国土の4分の一が海抜0m以下なのです)。

そんなオランダな場所に2箇所奇妙な出っ張りがある。それが「チューボー」と「行徳富士」だ。


この2か所だけ不自然に出っ張っている。東京湾岸にできたオデキだ。ちょっと引いて見るとそのオデキな感じがよく分かる。【国土地理院の5mメッシュ数値地図をカシミール3Dで表示】


人間が作った地形だっていうのが興味深い

「チューボー」とは中央防波堤のこと。ここは地図で一目瞭然、埋め立て地。正式名称は「中央防波堤埋立処分場」といい、東京23区から出るゴミを埋立てる場所だ。

「チューボー」という呼び名はぼくがふざけてそう呼んでいるのではない。正式な愛称なのだ。公式ページにも「中防へようこそ」って書いてある。

一方、「行徳富士」。これは残土の山で、ぼくの家の近所で小さい頃から気になっていた。京葉線の車窓からもよく見える。

つまり、なにがぼくの興味をひいたかというと、これは人間が作った地形だ、という事実だ。すごくない?そういわれるとぐっとこない?こない?こないとなると、困っちゃいますが、ぼくは非常にエキサイトするわけですよ、そのことに。

誰がなんと言おうと、ぼくはとてもぐっときたので、実物を見に行きました。まずはチューボー。

 

まるっきり大いなる大地。標高なんと30メートル。


どーん!チューボーの南側、東京湾を見下ろしたところ。感動しました。なんでしょうか、この感動は。感動のあまり、画像をクリックすると大きくご覧いただけます。


上記公式ウェブサイトでもあるように、チューボーでは見学をさせてくれる。興味のある方は、ぜひ。というか、いま東京で一番訪れるべき場所はここだ。しかし、これが大人気らしく、予約がなかなか取れない。

ぼくが参加したのは、船上からと現地をバスでめぐるというとても魅力的なコースだったのだが、上の写真はバスを降りて東京湾を見下ろしたところ。すごい。ふつうに大いなる大地だ。これを人間が作っただなんて信じられない。

なんせ標高30メートルだ。30メートルつったら、上野より高いんだよ?すごくない?東池袋とか、あのあたりが同じ高さ。この土地が何区に所属するのかはまだ決定していないようだが、江東区に所属すると、区内で一番高いのはこの人間が作った大地ということになる。なんだかすごい。



より大きな地図で DPZ「チューボーと行徳富士」 を表示

ここから東京湾を見下ろしてます。


東京におけるゴミの埋立ときけば、「夢の島」が有名だが、じつは夢の島はぼくが生まれる前、1967年にとっくに埋立完了している。京葉線新木場駅の北側の公園などがあるエリアがそれだ。

現在ゴミの埋立をおこなっているのはこのチューボーと、上の写真で見下ろしている部分にあたる「新海面処分場」だけ。いわば、ここが東京の「ゴミ箱」。標高30メートルのゴミ箱。

それにしても「中央防波堤」とか「新海面処分場」とか名前がいちいちかっこいい。


こんな「峡谷」地形まであって、これはもう完全に大いなる大地だよ。すごいよ。


埋め立てたゴミから発生するガスを逃がすためにいわば煙突のようなものがそこかしこに刺さっている。すごい。なんかすごくかっこいい。語弊がありますがかっこいいとしか言いようがない。


「かっこいい」などと言ってしまっていますが、実際にはけっこう深刻。というのは、この埋め立て地、最近の試算ではあと50年でいっぱいになってしまうのだとか。

そして、これが最後の埋め立て地で、そのご埋め立て地を作る予定はないとのこと。びっくり。こと東京においては「限りある資源」もさることながら「限りあるゴミ箱」なわけだ。そういう意味でリサイクルがとても大事。がんばろうぜ、みんな。

案内してくださった説明員の方がその深刻な状況について熱心に語っていたのだが、ぼくはといえばもう目の前の「大いなる大地っぷり」に興奮しどおしだった。今思うと、なんか申し訳ない。でもすごいんだもん。しょうがない。

詳しいことは公式ウェブサイトで。埋め立て地の変遷など興味深い情報いろいろあるので、ぜひ見てほしい。

さて、次は「行徳富士」だ。


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