さくらんぼうは可愛い。おいしいし可愛い。辞書にあたってみたら、漢字で書くと「桜ん坊」だそうだ。ふっ、可愛い。「錯乱棒」じゃなくて心底よかったと思う。 丸い実自体もちろん可愛いが、その実がぶらさがっているというのがまた可愛い。植物学的には実をぶらさげているあの部分をなんと呼ぶのだろう。ヘタなのだろうか。学生時代は植物関係の研究室にいたというのにわからない。ふっ、そんなものだ。 さくらんぼうの持つ愛らしさをほかの食べものに当てはめたらどうだろう。可愛いだけでなく、よりおいしそうにみえるんじゃないだろうか。 「もぎたて」・「フレッシュ」・「まだ誰のものでもありません」 最後のはデビュー当時の井森美幸のキャッチコピーだが、とにかくそんな魅力も生まれてくるにちがいない。 そのあたりを、「櫻田智也32歳、もぎたてチェリーにご用心」のキャッチコピーを持つ僕が検証してみたい。
(櫻田 智也)
さくらんぼうが届いたの
少しまえのことなのだが、なんと我が家にさくらんぼうの贈り物が届いた。あまりの嬉しさに鼻からヨダレがでた。
山形のさくらんぼうである。箱にプリントされたこの写真、まさにルビー。こんなにぶらさがっちゃって、なんと愛らしいことか。よくお菓子のパッケージなどに「写真は商品のイメージです」などと書いてあったりするが、この箱にはそんなことは書いていない。写真のとおりのものが入っているにちがいないのだ。わはは。
いやいやエロくないエロくない。興奮しすぎておかしなキャプションをつけてしまった。 にしても素晴らしい。さくらんぼう素晴らしい。この写真を名刺にして「私こういうものです」と名乗りたいくらいだ。そうしたら渡された人も思わず「エロい!」と叫んでしまうだろう。
みよ、この圧倒的な可愛らしさを。赤い実を口の上でちょっとぶらぶらさせてからポンと放り込むのがまた楽しいのだ。2個つながっていたら、もちろんいっぺんに口の中に入れてしまおう。
ところで高級品の中には、丸い実の部分だけをきちんと並べて売っているものがあるそうだ。そんなバカな。ぶらぶらするさくらんぼうと、しないさくらんぼう、どっちが嬉しいかなんて明白ではないか。だいたいそんなさくらんぼうでは、女子におすそわけしながら「く、口の中でヘタの部分を舌で結べたら、き、き……キッスゥが上手いらしいでえ」という話題に発展させることもできない。
「目黒のサンマ」の将軍の気持ちがわかるというものである。
というわけで、ぶらさがっている実というのはじつに愛らしい。
この可愛らしさ、どんな食品にでも当てはめられるのではないか。
加工食品をぶらぶらさせてみる
野菜や果実じゃなくても、さくらんぼうのようにぶらさげてみてはどうか。たとえそれが加工食品でも、可愛くてフレッシュにみえてくるはずだ。
思いのほか「もっさり」してしまった。心理テストの素材のようでもある。 それにしてもぜんぜん「さくらんぼう感」がない。物が物だけに。
ただ、手もとでちょっと揺らしてみたりすると、「やっぱり可愛いかも」という感情が湧いてくる。彼らの持っているポテンシャルは意外と高いのだ。ただ、いかんせん「フレッシュ」とは程遠い。
加工食品が「もぎたて」であるはずがないという固定観念(というか、事実)が邪魔をしているのだ。先入観なしで彼らをみつめるために、ここはやはり『収穫の現場』へと足を運ぶ必要がありそうだ。