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それぞれの土地に根付いた有名な占い師さんたち。新宿だったら新宿の母で、銀座だったら銀座の母、原宿の母もいるらしい。当たると評判の母たちに占ってもらうのは中々大変なようで、銀座の母は毎朝7時から整理券を配布しているという。一度は鑑定してもらいたいが、朝7時から並ぶのはちょっときつい。

僕の事務所がある渋谷に「渋谷の母」はいないのだろうか? 調べたら「渋谷の母」はいたのだが、「渋谷のパパ」と言われる占い師さんもいることが分かった。占い歴40年で、1975年頃は「星の王子様」と呼ばれ、1985年頃から「渋谷のパパ」に呼び名が代わり、これまでに鑑定した人数は40万人以上にものぼるというベテラン占い師さんである。ホームページに「渋谷のパパ」の写真が載っていたのだが、その風貌にかなりのインパクトがあった。「昼間のパパはちょっと違う」と忌野清志郎さんが歌っていたが、渋谷のパパも普通とはちょっと違う。

今回はそんな渋谷のパパに僕の未来を占ってもらうことにした。

(text by 住 正徳.








ギャルとギャル男が集うデパートで

渋谷のパパの鑑定場所は時間によって異なる。朝10時から午後3時までは渋谷東急ハンズ前にある「シルクロード占いのやかた」で、午後4時から午後9時までは渋谷駅前の109-2の地下で、それぞれ鑑定しているらしい。109-2と言えば、ギャルたちが集い「キューツー」と呼ばれるお洒落スポットである。どうせならキューツーで渋谷のパパに占ってもらいたい。

キューツーに向かった。


キューツー前

ギャルたちで混み合う一階をすり抜けて、エスカレーターで地下2階に向かう。


地下2階へ

エスカレーターで地下2階に降りるとすぐ、渋谷のパパの鑑定場所が目に入った。銀座の母や新宿の母のように長蛇の列が出来ていたらどうしよう、と心配していたのだが、それは取り越し苦労のようだった。お客さんの姿は1人も見当たらない。お客さんどころか、渋谷のパパの姿もない。


休み?

今日はお休みなのだろうか? 事前調査では月曜日が定休日となっていた。やっているはずなのだが…。

柵に近づいてみると渋谷のパパからの「お知らせ」があった。


渋谷のパパからのお知らせ

「時間におくれた場合、お待ちいただければお向かいの喫茶店でコーヒーを飲んで下さい」と書いてある。午後4時を過ぎることが多いのかもしれない。更に、

「領収書持参の方はコーヒー代をお支払いします」

とも書いてある。渋谷のパパはとても良心的なのだ。

しかし、渋谷のパパのお向かいさんは、


お向かいはパスタ屋さん

喫茶店ではなくパスタ屋さんだった。パスタ屋さんでコーヒーだけを飲むのは気が引ける。この「お知らせ」の信憑性が一気に薄れてしまった。ずっとこのような休業状態ということも考えられる。

不安になって柵の中を更に覗くと、鑑定料表示の看板に渋谷のパパの携帯番号が書いてあった。


パパの携帯番号発見

パパに電話をかけてみよう。


パパに電話

5コール目で渋谷のパパが電話に出た。「今日はお休みですか?」と聞くと「ちょっと遅れてるだけ、5分で着くよ」と渋谷のパパ。良かった。パパはこっちに向かっている。

パパが来るまで待つことにした。


渋パパのお客様専用椅子

渋パパの前に3円落ちてた

5分後、エレベーターから派手なシャツを着た大柄な男性が降りてきた。渋谷のパパか?

渋谷のパパと思われる大柄な男性は、鑑定場所の柵のカギを開けガラガラと柵を開けている。


渋谷のパパと思われる男性

柵を完全に開けてクルリとこちら側に向き直る渋谷のパパと思われる男性。


あ、渋谷のパパだ

間違いない。ホームページ上ではサングラスをかけていなかったが、クルッと上に上がった口髭が写真と同じである。

そうなのだ。渋谷のパパは外国の人なのである。元アフガニスタン国家公務員で40年前に来日した、と書いてあった。

手際良く開店準備を始める渋谷のパパ。僕の存在に気付き、「サッキデンワクレタヒト?」と声をかけてくれた。「渋谷のパパは外国人」ということをお伝えしたので、台詞をカタカナにした。

「スグニミルカラ、チョットマッテ」

すぐに鑑定してくれるらしい。





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