地元の人は知り合いでした
せっかくここまで来たのだ、ムクドリ一匹もいませんでした、ではさすがに報告しづらい。今後の大量発生記事への影響も避けられないだろう。
こういう時には人に聞くのが一番だ。つくばに住んでいる人に話を聞いてみることにした。何か情報が得られるに違いない。
僕のかつての同僚がちょうど近くで働いているので連絡してみた。仕事中にすみません。
軽いポーズで登場したこの方は市川さんと言ってJAXAという研究機関で研究員をしている。かつて同じ新人寮の隣の部屋に住んでいた彼にはいろいろと迷惑をかけたこともあるが、基本的には仲良しだ。彼は今スペースシャトルとか宇宙ステーションとか、そういう研究をやっているらしい。
ムクドリの話を聞かせてください
つくば市民の代表として市川さんに話を聞いた。
--ムクドリの大群がいると聞いて見に来たんですが
「ああ、鳥ね。確かにいるよ」
--いますか!
「いるね」
いるらしい。よかった。これでとにかく何か得られそうな光りが見えてきたじゃないか。
--鳥、どこにいるかね?
「まあそんなことよりさ、これ見てよ。この前打上げた実験施設なんだけどさ、いま宇宙ステーションに取り付けてこれからいろいろ実験していくんだよ。」
--ええ、なんとなく聞いたことあります
「一般の方の見学ルートもあるからさ、せっかくだから見て行ってよ。」
「あっちにさ、無重力状態での作業を模擬した実験施設があるからさ、見せてあげるよ。あ、それからこっちにはプレスルームとか管制室なんかもあるよ。さすがに許可無しじゃ入れないけどね、今回はなんなの、うちの記事書いてくれるの。」
鳥の話が聞きたい、という前提事項を彼は絶対忘れているだろう。しかしなかなか言えない状況になってしまった。
ともかく、僕も人並みに宇宙開発には興味がある。せっかくだからいろいろと見せてもらうことにした。
宇宙はいい。宇宙開発には夢がある。宇宙ステーションでの実験が成果を結んで、いつか僕たちも宇宙で生活する日が来るかもしれない。そのときは無重力の空間を鳥のように飛んで
鳥のように
鳥の…
そうだ、僕はムクドリ見に来たんだ。