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はっけんの水曜日
 
セミを捕って食べる


え、俺?

先月、タイで昆虫を食べた記事を書いた。
タイではひとつの文化として根付いているけれど、日本ではまだマイナーな昆虫食である。
しかしマイナーかメジャーかはどうでもよくて「美味しいから食べる」で問題ないのだ。
食べた事のない昆虫をもっと食べたい。
どうやら、セミは美味しいらしい。よし、今だ。

「8月です。セミの美味しい季節になりました。今年も待ちに待ったセミ会です」。こんな告知文に誘われて行ってきた、謎のイベントです。 

ほそいあや



網を持って家をでる

家を出るとさっそくセミが盛大に鳴いている。今までは単なる季節の風物詩だったセミが、今晩にはお腹に入っていると思うと変な気持ちだ。
虫取り網を持って都内某所へ向かう。大人になって網を持って電車に乗ったのは初めてだった。


たのしい夏休み中

しかし虫取り網は集合場所でバッチリ目印の役目をしてくれる。早く着いてしまいまだ誰もいないように見えたが、網を持って立っていたら「セミですか?」と声をかけてもらえた。なんて便利なんだろう。この会に限るけど。

皆揃ってきた。今日の参加者はなんと約60人!
セミ会場へ

徒歩で公園へ向かう。網を持った大人ばかりがぞろぞろと歩いていくのはちょっと珍しい光景だった。
この日のために、セミ捕獲専用網(輪が小さいタイプ)を自作してきた参加者もいた。気合いが入っている。

セミ好きたちが会場に到着しました。
説明をする内山昭一さん(中央)

主催者の、昆虫料理家の内山昭一さんは頻繁に虫食いイベントを企画している。以前当サイトにも「昆虫食のひるべ」という記事で登場している。
「いつ来るかわからない食糧難に昆虫食は味方になってくれる」という世界レベルの考えを提唱しつつ、基本的には「楽しくおいしく虫を食べよう」というフランクな呼びかけをしている。内山さんの企画する会はいつも大人気なのだ。

 

狩猟開始

これから1時間、セミを捕ります。深緑の中に放たれる大人たち。昆虫採集なんて何年ぶりだろうか。
セミの鳴き声は大音量なのに、いざ見つけようとするとなかなか目に入らない。


すぐそこにいるのはわかるけど、幹に同化して見えづらい

たわわにぶら下がるぬけがら

ここの樹木はみんな高いので、上の方へいってしまうようだ。脚立がほしい。
家の近所だと背の低い木が多いので、耳のすぐ横でジリジリ鳴いている事が多いけれど、あれは恵まれたシチュエーションだったのか…。もちろん今日まで一度もそう思った事はない。

クマゼミもいます
届く高さならほとんどが「見つける=捕れる」なんだけど…

やっぱり高い所へ行ってしまう
この高さまで木登りする目的がセミ

食材調達という使命からなのか、ただ楽しいからなのか、モチベーションは人それぞれだろうが皆必死だ。だいの大人が60人態勢で攻めてくるとはセミもたまったものじゃないと思う。私も今までセミなど見向きもしなかったが、「揚げて食べると美味しい」という情報が頭に入ったとたんに森にちりばめられた宝石に思えてきた。

捕まえられると嬉しい
見てよこの鮮度
ジジジジジ笑顔ジジジジジ笑顔
とれると見せたくなる
虫取りが似合うイトウさん

左のすげがさを被った男性はザックザックという農業マガジンを運営しているイトウさん。昆虫食と農業がタッグを組んだら最強なのではないかという思いと、セミは食糧になりうるか?という問題に興味があったそうだ。

農薬処理された野菜に虫はつかないという事は、逆にいえば虫は安心して口に入れられる。これで栄養価も高いのだから、本当に皆が虫を食べる時代がくるかもしれない。

夕食前になると公園に虫取り網を持った人が溢れる。今見ている光景が近い未来には日常的なものとなっている可能性があると思うと、時代を一歩先取りした気分だった。


セミが気になるおじさん

私たちが夢中でセミを捕っていると、そばで見ていたおじさんが「それどうするの?」と尋ねてきた。大人ばかりが捕れたセミを大切そうに袋に入れているのが不思議だったようだ。「食べるんです」と答えると「ええ、ああ、そうなの?どっか持ってくと金になるのかと思ってさ…」と言って恥ずかしそうに行ってしまった。


セミがお金になると勘違いしたおじさん

 

収穫を回収し、第二部へ

第一部の終了時刻となり、全員の獲物を集める。これまではおもに成虫を捕っていたが、日没後は地面から幼虫が出てくる。よって二部は幼虫の時間となる。


セミを集める。逃げられないように…
洗濯ネットの便利さよ

参加者の半数は先に調理場へ行き下準備をし、残りは狩りを続行する。私は残ることにした。セミの幼虫のトコトコ歩く姿を見ると癒される。まあ、食べるんだけど…

地面、幹、葉の裏を探す
これから脱皮という時に見つかってしまう可哀相な幼虫

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