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ロマンの木曜日
 
スイスのダムめぐり(前編)


日本のダム好きの威信にかけて行ってきます

10年くらい前に、ダムというものの魅力に取り憑かれて以来、僕は全国各地のダムを訪ねてまわってきました。当時はダムの情報がほとんど出回っていなくて、実際に行ってみないと大きさや形が分からないダムも多かったのです。

時代は進み、今ではいろんな人によって写真が撮られ、家にいながらにして全国ほとんどのダムが見られるようになりました。

しかし、海外はどうだろう。専門家の視察などではなく、ダム好き目線で海外のダムの情報や写真をたくさん持ち帰った人はまだいないのではないだろうか。

それならば、僕が行ってきます。と、誰にも頼まれてないのに、勝手な使命感に燃えて旅立ちました。

目指すは世界有数の巨大ダム保有国、スイス!

萩原 雅紀



なぜスイス?

せっかく海外に行くなら、高さ日本一の黒部ダムよりも大きなダムを観てきたい。そしてお金も時間も限られるので、ある程度狭い地域にまとまってダムがある場所に行きたい。

という、ダム好きのわがままな要求を完全に満たしてくれるのがスイスなのです。スイスは面積が九州とほぼ同じで、アルプスの高い山々と氷河から流れ出る豊富な水資源を抱え、その水で発電するためのダムが数多く造られています。その規模はスイスの総発電量の6割を水力発電が占めているほど。

そして、高さ186mの黒部ダムよりも100mも高い、高さ世界2位のダムを筆頭に、200mオーバーのダムがゴロゴロ存在しているのです。調べていてこういったデータを知ったのは割と最近ですが、日本の野球少年がメジャーリーグの選手名鑑をめくってドキドキするような、そんな新鮮な胸の高鳴りをひさびさに感じました。

あともうひとつ、海外初心者がひとりで行動しても安全な国、という要素も非常に重要です。旧ソ連の国々とか南米とか、でかいダムはありますが、ぜったい無事には帰れなさそうじゃないですか。

なんて能書きばっかり書いてても仕方ありません。さっそくスイスに向かいましょう。


というわけでチューリッヒ空港に到着 スイスでも工場萌えがキてるのか
国内線でジュネーブに移動して 翌日の朝からレンタカーでダムめぐりスタート!

今回の計画では、スイス西端のジュネーブからスタートして、ダムを観ながら約10日間かけてチューリッヒに戻ってくるという行程。大まかなルートとめぐったダムをグーグルマップで表示してみたので、参考にしてください。



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赤いピンが宿泊地、青いピンがめぐったダム

Hongrinダム

ジュネーブ空港近くのホテルを出発、空港でレンタカーを借りて、レマン湖沿いの高速道路を東に向かって走り出しました。

まず最初に向かったのは、レマン湖東端付近から山に登ったあたりにある、Hongrinダム。ちなみに今回、ダムのちゃんとした呼び名が分からないのですべて現地表記のままにします。



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Hongrinダムの位置

高速を降りて、山の方へ伸びるくねくねした道を登って行き、地図を見てアタリをつけた場所を曲がると、牛が放された牧場の中を通る細い道に。やがて先の方に湖が見えてきて、最初の目的地のダムに着きました。レンタカーにはナビはなく、地図も大ざっぱなのに、よく迷わずに着いたもんだ!これもダムを愛する力の成せる業でしょうか。


戦車の道路標識があったと思ったら 道路脇に戦車が!
牧場の中を通る一本道を進む 「どっから来なすったの〜」「へぇ日本からねぇ」

見えたー!

スイスに来て第1ダム発見!

さて、数あるスイスのダムの中から、なぜこのダムを最初に見ようと思ったか。それは、グーグルマップでこのダムの姿を見て一目惚れしてしまったからです。さあ、皆さんも下の地図を拡大して、僕が「あっ!」と声を上げたのと同じ驚きを体験してください。



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5段階くらい拡大させるといいと思います

なんとこのダム、ここスイスでは1基しかないマルチプルアーチダムなのです!しかも大きめのアーチダムが2つ繋がったダブルアーチ。これは世界的に見てもた非常に珍しい構造です。だけど、日本には仙台市の郊外に同じ構造の大倉ダムがある!



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仙台市の皆さん、大倉ダムも世界に誇れるよ!

しかしすぐに大倉ダムのことは忘れてしまい、目の前のHongrinダムに夢中に。このあとまわるほとんどのダムと同じように、堤体の上(天端[てんば]といいます)が解放され、誰でも見学が可能。実際、観光客のような人も僕以外にたくさんいて、みんなダムの上を歩いたり、湖越しに遠くの山を眺めたり、下を覗いて足がすくんだりしている様子でした。


なんとかダブルアーチが分かるかな 天端は解放されている

大倉ダムは2つのアーチダムで1つの「大倉ダム」ですが、ここHongrinダムは、正確にはHongrin Nord(北)ダムとHongrin Sud(南)ダムと呼び名が分かれているようで、堤高もNordが125m、Sudが90mと別々に表記してありました。放流設備はNordの方にバルブが2つ確認でき、非常用と思われる朝顔型洪水吐が中間地点に造られていました。つまり、満水になるとこの湖にはダム穴が出現するというわけです。


放流バルブが確認できるHongrin Nordダム

湖の周囲には牧場が点在している 満タンから溢れるのを防ぐ朝顔型洪水吐

これ以上詳しく解説しても誰も読んでくれないと思うので、そろそろ次のダムに向かいます。しかしさすが世界有数の観光立国スイス、ダムも美しいけどやっぱり周囲の景色がキレイだなー、と思ったのですが、ここなんてまだまだ序の口もいいところでした。


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