完成、そして検証
苦労して切ったタクワンが切り干し大根になってしまった事は一旦忘れて、その他の材料もカットしていく。
みょうがは鰹節をイメージして千切りに、きゅうりは……。
良く分からなかったので輪切りにした。
板前さんの間で、みょうがは「バカ」と呼ばれている。
これは別のお店の別の板前さんから聞いた。みょうがを食べると物忘れがひどくなる、という迷信から来ているとか、来ていないとか。バカ呼ばわりされているみょうがは可哀想である。
そんな可哀想なみょうがときゅうりの次は、とびこを脇に盛りつけた。 赤いとびこは紅ショウガをイメージしているのだろう。
最後に大葉を細かく刻んで、のりと一緒に上からふりかける。大葉は青のりで、のりは……。のりだ。
そして、僕の想像する「寿司屋の焼きそば」が完成した。
焼きそばに見えないこともないが、タイの焼きそば、パッタイのようである。寿司屋の裏メニューなのにタイ風、でも匂いはタクワン。なんだかとっ散らかった料理になってしまった。
これが正解なのだろうか? 本物を見た事がないから分からない。
このままだとモヤモヤしてしまうので、寿司屋さんに行って確かめることにした。
「すしざんまい」で、あの板前さんにお願いすれば話は早い。しかし、敢えて別の寿司屋さんで「焼きそば」を注文してみることにした。本当にお寿司屋さんの裏メニューなのか、検証する意味も込めて。
初めてのお寿司屋さんで焼きそばを頼んでみる
寿司屋のカウンターに座って「焼きそばくれる?」と言ってみる。結構勇気がいる行為である。万が一、焼きそばが寿司屋の裏メニューでなかったら、相当恥ずかしい。うちは寿司屋ですよ、と冷たく返されたらどうしよう?
大きな不安を抱えつつ、東急デパート本店のレストラン街へ向かった。
ハードルが高そうな寿司屋である。
ここで「焼きそば」を頼むのだ。 本当に大丈夫だろうか?
入る前にメニューを確認しておいた。もちろん「焼きそば」は載っていないが、寿司の値段が書いてないような寿司屋だったら困る。
ランチずしのセットが2100円だった。随分高いランチではあるが、これを頼みつつ様子を伺って焼きそばを頼むことにした。
「ランチずし」を頼む時点で食通っぽくないが、それは仕方ない。