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フェティッシュの火曜日
 
漁師という仕事を体験してみてわかったこと


遊びじゃない方の魚捕り。

小学生3年か4年の頃、文集の「将来の職業」という欄に、「りょうし」とひらがなで書いた覚えがある。海のない埼玉に住んでいるのに、将来の夢が漁師だ。田舎も長野の山奥だったので、たぶんまだ海を見たことなかったと思う。でも漁師だ。

結局、漁師にはならなかったのだが、「もし網元の一人娘と恋に落ちて漁師になっていたら」とか、「もし一匹狼のマグロ漁師に俺の船を継がないかと誘われたら」という妄想は、今でもたまにしてしまう。

そんな憧れの職業である漁師だが、実際の仕事内容はどういうものなのか、取材させていただくことにした。

玉置 豊



船橋港の巻き網船「大傳丸」に乗船させていただく

今回漁師の仕事を取材させていただくのは、東京からも通勤圏内の千葉県船橋市にある船橋港の巻き網漁船、大傳丸(だいでんまる)。

漁師という仕事は、先祖代々受け継がれるもので、新規参入が難しい業界というイメージがあるが、大傳丸は船の名前であると同時に、「株式会社大傳丸」であり、漁労長は代表取締役で、乗組員は社員なのだ。


夜の漁港はかっこいいです。 とりあえず木村ポーズ。手はパーが正解だったか。(木村さん安藤さん萩原さん尾張さん松本さん

今は人数が足りているので募集はしていないが、過去に漁師未経験者を広く採用をしてきたところなので、漁師の息子ではない私にとって、選択肢として一番リアリティのあるところなのである。

 

漁労長に話を伺う

今の時期は夜九時に出港をして、スズキという魚を獲っているということで、出港前に大傳丸の漁労長であり代表取締役である大野さんに話を伺った。


大野さんとはこの日が初対面。はい、びびっています。 そのエッジの利いた風貌に、ドキドキしながら話を伺いました。

  船橋の漁師ということですが、船橋の海で漁をするほど魚が獲れるんですか?
大野

船橋で魚を獲るわけではなく、魚を追いかけて東京湾のどこにでもいきます。

  港が船橋なだけで漁場は違うんですね。
大野 巻き網漁っていうのは、船を走らせて魚を探しながらの漁なので、一日に軽油を約2400リットル使う。だから魚がとれなければ大赤字。当然乗組員の人件費なども掛かるので、最低150万円分の水揚げがないと会社にお金は残らない訳です。
  魚150万円分ってすごい量なんでしょうね。以前ガソリンが値上がりしたとき、漁師達が抗議していた理由がよくわかりました。
大野 まあスズキだったら1トンは獲れないと。そろそろイワシも少し獲れる時期だけど、まだ仕事にはならないかな。
  当たり前だけど、魚を獲ることが「仕事」になると趣味でやる釣りなんかとはスケールが違いますね。
大野 何を獲るか、その日出漁するかどうかは、費用対効果を考えて決めます。魚が深いところにいっちゃう冬場や悪天候の日は、自主休業をして船や網のメンテナンスに充てます。今年の7月は風の吹く日が多く、10日程度しか海に出られなかった。
  漁をしない日はお酒を飲んで寝ているっていう訳ではないんですね。
大野 うちの乗組員は船に愛着があるから、メンテナンスなども自分たちで責任持ってやる。だから船も網も常に状態がいいんですよ。今日もせっかく来てもらったけれど、風が収まらなそうなので、漁は中止して朝から網のメンテナンスだな。

空振りとなった漁師達。

ということで、取材初日は空振りとなり、漁師の仕事は天気次第ということを、実体験で学ぶこととなった。


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