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ロマンの木曜日
 
世界一のコンクリートダムを見てきた

Grande Dixenceダム

「おきなさい きょうは おうさまに あいにいくひでしょ」

そうです。ダムというものをめぐり初めて10年。いよいよ、ダム界の頂点に君臨する皇帝、堤高285m、堤長695mという世界最大の重力式コンクリートダム、その名もGrande Dixenceに謁見です。

なんて仰々しく紹介してみましたが、もう少し詳しく解説すると、Grande Dixenceダムは重力式コンクリートダムで世界一、しかしすべての形式を含めると、実は高さは2番目。高さ世界一のダムは堤高300mのロックフィル、中央アジアのタジキスタン共和国に建設されたNurekダムです。

もちろんNurekダムも見てみたいですが、旧ソ連から独立した、最近でもテロが絶えない、南隣がアフガニスタン、なんて国にひとりで行って、しかも国内最大のインフラ施設を撮影するなんて、下手したら誘拐されたりその場で射殺されかねないので、恐くて行けません。外務省も「渡航の是非を検討」するように言ってるし。ダムの是非じゃなくて。これは国レベルで話し合いをしてもらわない限り絶対に無理だと思います。

したがって、誰でも気軽に見に行ける、という点でGrande Dixenceがダム界の皇帝に繰り上げで即位です。

前置きが長くなりました。というわけで、早めに起きてGrande Dixenceへ車を走らせると、いきなり衝撃的な光景が目に飛び込んできました。


え、あの崖の上に乗ってるの、なに?

はるか遠く、山の上の方に朝日が当たりはじめていて、そこにむちゃくちゃでかいコンクリートの固まりが乗っているのが見えたので、望遠レンズを出して撮ってみました。


こ、皇帝だー!

なんと、皇帝Grand Dixenceが高い崖の上から下界を見下ろしていました。

あまりの光景に度肝を抜かれ、何も言われていないのにこの時点で絶対服従を誓ったりしていました。

さらに遠慮なく近づいていくと、巨大な崖の下にたどり着き、道はここからつづら折りで崖を登っていきます。つまり、ただでさえ高いGrande Dixenceダムは、それ自体が高い崖の上に造られていたのです。こりゃかなわないよ!


この崖自体数百メートルの高さがある

そして、つづら折りの道をえっちらおっちら登っていくとトンネルがあって、それを抜けると、ついにGrand Dixenceダムの足元にたどり着きました。


駐車場の案内看板が出てきた どっちへ行けばいいんだ...ん?

!!

僕は言葉を失いました。

これはすごい。一目見て分かる。今までに観てきた200基以上のダムの中で、明らかに突出した大きさ。

もう心臓バックバクですが、慌てないように車を駐車場に停め、改めてGrande Dixenceダムと対峙してみました。



世界最大の重力式コンクリートダム(クリックすると大きな画像を表示します)

実際どのくらい大きいかって、写真ではよく伝わらないと思うのですが、上の画像の下のほうにある小さい赤い点、これ人です。

あと、そのまわりの白と黒のまだら模様の部分は融け残った雪塊。


雪塊だけでこんなに巨大なのだ 見上げるだけでくらくらする

同じような写真を何枚載せてもしょうがないので、ダムの上に行ってみることにします。

駐車場から歩くと、ダムの目の前にホテルが建っていました。うわあ、次に来たときは絶対ここに泊まりたい。部屋をダム側にしてもらって、一晩中眺めていたい。

ホテルの周囲には、ダムの資料館、お土産店、そして天端とここを結ぶロープウェイ乗り場があります。資料館を覗いてみると、なんと建設記録DVDや写真集を売っていました。迷うことなく写真集を購入。これが本当によかった!


説明の看板があると嬉しい(読めないけど) このマークがかっこいいと思った
どういう需要があるホテルなんだろう ダムの天端と下を10分おきに結ぶローウウェイ
簡素だけど中身は濃かった資料館 まさかの写真集を即買い

買い物が終わったら、ロープウェイに乗り込んで天端へ。

ロープウェイを降りると、そこにはGrande Dixenceを中心とした水力発電システム網が網羅された案内板が。これにはまわりのスイス人を差し置いてひとり大興奮しました。あーなるほどねー、あのダムと導水管で繋がってるんだー、などと、自分の生活にはまったく関係ない人ん家の仕組みを見て感心。

そのほか、簡素ながら売店もあって、パンや飲み物を買うこともできますが、値段はやっぱりちょっとお高め。


ロープウェイで出発を待つ ダムの麓になんと教会が!
後ろのドームが売店 載せないけどこの看板1枚1枚全部写真に撮った

天端では、世界中の子供たちによる、平和に関する絵の展覧会が行われていました。1枚1枚見てまわりましたが、残念ながら日本人の作品は見つけられませんでした。

手すりにはいろいろな落書きが彫ってあって、ということは観光でここを訪れた人が大勢いる、ということですよね。

あと印象的だったのは、そらに飛行機雲がどんどん描かれていて、ダムの上がかなり重要な航路になっているようです。


ちょっとカクカクした堤体が特徴 天端には子供たちの絵が並ぶ、でもなぜここで?
手すりには落書きが並ぶ 次から次へと新しい飛行機雲が描かれる

貯水池は大雨の後のようにグレーに濁っています。このダム湖の上流端がすぐ氷河なので、削られた岩石成分がそのまま溶け込んでいるのでしょう。残念ながら水位はかなり低めでしたが、案内板によると夏期がいちばん少ないそうです。

天端の中心地点には旗を立てるポールが何本も立っていて、この日は国旗、州旗、そしてこのダムの旗がたなびいていました。あのポールの多さは、やっぱりこれが国を代表する事業だというシンボルではないでしょうか。

そして、最後にとっておいたデザート、285mのダムの上から下をのぞき込んだ画像を見てください。


貯水池の中には旧Dixenceダムが沈んでいるらしい 天端は広く、そして気が遠くなるほど長い
旗を立てるポールがたくさん 風にはためく各旗

上から見下ろすとホテルがあんなに小さい
正直言ってここまで来るとちょっと現実味のない高さ

ガイドブックに載せたい

今回ご紹介した3ヶ所のダムは、ふつうの観光客が行ってもそこそこ満足できるレベルの観光地だと思います。

でも、スイスに行く前にいろいろなガイドブックを見ましたが、スイスのダムを取り上げている本は皆無でした。ネットでもほとんど情報がなく、だからこそ行ってこようとも思ったわけですが、自信を持ってお勧めできるので、ぜひスイスの新たな目的地として取り上げていただければと思います。

僕も記事書いてたらまた行きたくなってきました。

そういえば1回だけあたりの夕食があった

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