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ロマンの木曜日
 
雑談トレーニング序説

雑談力、それはこちらから話すことだけにあらず

もうひとり「雑談力」についてうかがったのは、フリーのゲームプランナーのとみさわ昭仁さん。某大作ゲームのお仕事が一段落したタイミングでちょうどお会いすることが出来ました。奇しくもとみさわさんも元は芸能・ゲーム系のライター。自分の世代では「カルロスとみさわ」の名前が一番メジャーですけども。

ともかくそちらのお仕事で数々のインタビューはやられてると思いますが…と聞くと「僕もインタビューは下手だった!」とのお答え。


「しゃべりが下手だから、会話に変な間が空いちゃったりしてね。普段の会話みたいにスラスラ話を聞ければいいんだけど、紙に質問とか書いておかないとぜんぜんダメで」

−−意外ですねえ。とみさわさんはコレクター癖があるだけに記憶力とか強そうですけど。

「ボクは短期記憶ってのが弱いんです。長期的なことは覚えてるんだけど、電話番号とかパッと聞いてもぜんぜん覚えられなくて。インタビューだとさっき聞いたこととかをうまく展開しなきゃいけない、って思うじゃない?それでムリして覚えようとしたら、大事なこと聞き忘れたり」

−−ああ分かりますね…。インタビューでも雑談でも会話を広げていく自信がないんですよねー、自分も。

「そういう短期記憶が劣るゆえにものすごいメモ魔になったんですよ。出来事すべてを記録するようになって。ほら」

−−わ、すごい!一日の終わりに振り返るんじゃなくて、何かやる度に書いていくんですね。

「そう。朝起きてメモして、ご飯食べてメモして…。コレクター気質だから、こういう記録を残していくのが楽しいんですよねえ」


コレクター癖というと神経質そうだけど本人はおっとり話しやすい方です。


メモ魔なメモ帳。日記というか時間記?


雑談が苦手なゆえにメモ魔に!結果として別の才能が発芽してて羨ましい次第。いや、でも自分もやるかというと大変そうだからいいです…。これもまた才。

会話中にもあった通り、コレクター癖のあるとみさわさん。かつては野球カード、ジッポーライターなどに手を出していて最近は「人食い映画」「覆面歌手」など狭い所に手を出されてます。それだけに雑談の話題の幅は相当広いはずですが?


「興味あるというと…本か映画か自分の得意な話するよね。『どんな映画好き?』ってそんな話からとっかかりを作るかな。数は見てるから、どんな映画が出ても話を合わせられる自身はあるし」

−−じゃあ「最近見たのが『Rookies』」だったら?

「ヤンキー映画の系譜でもとりあえず話すね(笑)。『不良番長』とか『ガキ帝国』とか、食いつき悪いなと思ったら『ビーバップハイスクール』あたりで。まぁ世代によるだろうけど」

−−ある程度メジャーな話せるジャンルがあれば強いですよねー。

「でも、マニア野郎オタク野郎って自分の話ばっかりするって特徴あるじゃない。自分もそういうところあったんだけど、友達が『俺すぐ自分の話ばかりしちゃうんだよな』って言ってるのを聞いて、我が身に返って『ああそうだ!これは変えそう』と思うようになったんだよね。だから僕はできるだけ人の話を聞くようにしてる」

−−でも話そうと思えば話せると。

「たぶん基本的には自分の話を聞いて欲しい人だと思うしね(笑)。でも人って『自分の話を聞いて欲しい人』と『人の話を聞きたい人』がいるから、相手がどっちかを見極めれば楽だよね。聞きたい人ならこっちから話してあげれば喜ぶだろうし」


なるほど!「話し上手」「聞き上手」なんて言葉があるけれど、雑談する人も「話したい人」「聞きたい人」にも分かれる。自分なんか典型的な「聞きたい人」だもんなあ。それなのに「わ、なんか雑談しなきゃ!」とか思うから息苦しく思う。聞く側なら何時間でも大丈夫なのに。

雑談は話す能力だけではない。講演とは違うんだもんな。そして「ジャンルがあれば強い」と書いたけれど、知識があればいい、というでもないととみさわさんは言う。


「知識が多いからいい、っていうだけじゃないと思うけどね。たとえばタモリとか適当に相づち打ってるところあるじゃない。その話題に興味なくても、それが芸風になってるし。聞き上手な人は自分が喋ってなくても雑談得意に見えるんだよね」

−−あー、なるほど!

「喋ってる印象は与えるんだよ。2人で喋ってても、相づちとかいいタイミングで振ってくれるだけで2人でたっぷり会話した気になる。全盛期のたけしのオールナイトニッポンで、高田文夫さんが相づちの名人と言われてたけど、よく聞くと繰り返してるだけだったりする(笑)」

−−「そこでやったんだ!」「そうそう!」とかね。

「盛り上げ役に徹して、たけしさんが気持ちよさそうに話させるのが上手いんだよね。だから雑談が上手くなりたいからといって、話せなくてもいいんだよ」


ま、皆が皆タモリになれるわけではないけども、雑談上手の道として「聞き上手になる」というのがある、というのは雑談力低めと今思ってる人たちには明るい光が差し込んだニュースかもしれない。

・得意ジャンルがあると便利

・「話したい人」か「聞きたい人」か見極めろ

・聞き上手もまた雑談上手


今回お二人に「雑談についての雑談」をお願いしたわけですが、ちゃんと真理みたいなのが見えてくるもんです。共通するのは雑談力=多くしゃべるテクニックではない、ということ。雑談の持つ「場を円滑にする力」、そこに立脚したテクニックを教えていただいた気がする。ありがとうございました!

別の人に聞けば、また違った雑談テクニックが聞けるに違いない。トレーニングしながら盗んでいこうっと!

夜の雑談トレーニングはいかが

ちなみにもう一軒、飲み屋のママに聞く予定だったのだけどギリギリで予定合わず断念。今回は偶然にもライター編になったけれど、いずれ飲み屋のママが語る雑談トレーニングなんてのもやる、かも。


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