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フェティッシュの火曜日
 
マイナス50℃体験と南極基地の食べ物事情

南極観測隊のインタビューもあるよ

けだるい午後、仕事にも身が入らずだらだらネットを眺めていると、すごい名前の施設が目にとまって、思わず背筋が伸びた。

国立極地研究所。

字面からしてもう、「極」である。さすがに極道の極ではないと思うが、それにしてもきっと研究所の極北みたいなところに違いない。そう思って調べてみると、実態は極北の逆、北極だった。北極や南極の観測・研究をしている機関なのだ。

その極地研、このたび初めての一般公開が行われるという。行って「極」を堪能してきました。

(text by 石川 大樹



極地に興味ある人が3,500人


失礼ながら、割とささやかなイベントを想像していたのだ。研究所の一部に小さな展示スペースが設けられ、地元の人たちがやってきてはパネルや標本を見ながら「ほう」とか「へえ」とか言っている。そんなイメージである。しかし、すぐにイメージは覆されることとなる。

当日、開場前には現地に到着した。そして目の前に現れたのがこの光景である。


視界の端まで続く行列

建物の端まで延々と大行列が続いている。最後尾に並ぼうと、角を曲がる。


写真のいっちばん奥まで続いてます


さらに大行列。今どきディズニーランドでも見られないくらいの長蛇の列である。あとできいたところによると、開場は10時にもかかわらず、6時台から並んでいた人もいるとか。

開場してからも…。


整理券待ちの長蛇の列
すごい勢いで貼られていく「満員」表示

写真の場所では、一部の展示に必要な整理券を配布中。7種類のツアーがあり、そのどれもがみるみるうちに満員表示になっていく。

これもあとからきいた話だが、この日は約3,500人ものお客さんが集まったらしい。僕の育った岐阜県本巣郡本巣町というところは、中学で習ったところによると、当時の人口が約8,000人であった。育った町の半分の人がここに集結したわけである。南極、人気過ぎ。

 

 

奥に見えるあの扉の向こうに、極寒の世界がある

マイナス50℃体験ツアー

南極の人気ぶりをお伝えして驚きを共有できたところで、一般公開の内容の紹介に入ろう。まずは熾烈な整理券争奪戦で、真っ先に満員になってしまったこのツアーから。マイナス50度の世界を体験できる、低温室体験ツアーだ。

参加者はまず低温室の手前の部屋で、防寒着と軍手を装着。そして衣類といっしょにビニール袋も渡された。冷えたカメラをそのまま外に持ち出すと結露するから、出る前にビニール袋に入れておいてください、とのことだ。


もっこもこの防寒着。華奢な自分も肩幅がっちりに見える
この袋がカメラの命綱

全員が着替え終わると、モッコモコの状態で金属質の通路を進む。扉をくぐると急にマイナス50度の部屋があるわけではなく、扉で区切られた通路を進むにつれて、マイナス15度、マイナス20度、マイナス50度と順に下がっていくようになっている。

マイナス15度の時点では、正直「こんなものか」という感じで、さほどたいした感動はなかった。そして扉をくぐり、マイナス20度のエリアに入ったとたん、去年参加した極寒の我慢大会、しばれフェスの寒さがフラッシュバックした。

しかしここまではまだ体験済み。僕の知ってる世界である。一行は最後の扉をくぐる。


マイナス50度の部屋へ…


あっ

 

定温は鼻毛でわかる

部屋に入った瞬間、一瞬でのどの奥がカッと乾いたような感じがして、思わずパカッと口が開いてしまった。自分の体の意外な反射に、寒いとか冷たいとかじゃなくて、「やべっ!」って思った。

気を落ち着けてつばを飲み込む。すると新たな発見。今度は鼻の中がチクチクするのだ。鼻毛が凍っているようだ。鼻の中が針山に。寒すぎて毛が凍るという現象はなんとなく予想がつくが、いちばん最初に凍るのが鼻毛なのだ。この事実がインターネットで公開されるのは、当記事が初めてではないかと思う。


食品サンプルではありません。本物
バナナも、釘が打てるどころか削って釘作れそうなくらい固い

濡れタオルもカッチカチ
内線電話だけは普通でした。(でも凍ってた)

もうなにもかも、余裕で全部凍っている。
歩くたびに、低温で弾力を失って硬くなったスニーカーから、かかとがスポスポ抜けた。

 

深さ3000mの氷

そんな具合ですっかり低温室を楽しんでしまっているが、研究所に低温室があるのはもちろん遊ぶためではない。南極で採取した氷のサンプルを保管したり、分析したりするための部屋なのだ。

展示されていた氷を見てみよう。


これが南極の氷
空気の泡が入ってるのがわかりますか

この氷の柱は、アイスコアと呼ばれる。

アイスコアは南極の氷を縦にくりぬいたものだ。10cm程度の太さで、氷床の表面から南極の氷の底(つまり地面)まで、3000m以上の深さを一直線にスポッと抜き出したものなのだ(南極大陸の上には深さ3000mもの氷が乗っかってるってことです!)。それを小分けにしたものが、この低温室に保管されている。

南極の氷は雪が押し固められたものなので、空気がたくさん入っている。氷の上にはどんどん新しい氷が積み重なっていくので、底の方に眠る氷は、何十万年も前のものだったりする。そこから空気を抜き出せば、何十年前の空気を手に入れることができ、そこから当時の地球の大気の状態を観測することができるのだ。

南極は、はるか昔の大気を保存するアイスボックスになっているのだ。


メモ帳にも霜が降りていた。部屋から出たあともメガネが冷え切っていて、何回拭いても拭いてもしつこく曇った。

 

 

これが疑似体験のセット

生中継もあります

研究所には他にもたくさんの設備がある。そのうちのひとつが、南極基地と研究所をつなぐ衛星回線だ。

この研究所では、南極に多くの研究者を派遣している。ごぞんじ、昭和基地である。いまこの瞬間も多くの研究者が昭和基地にいて、研究を進めているのだ。そんな昭和基地と、衛星回線を使ってリアルタイムで連動した企画が用意されていた。

まず紹介するのは、南極ヴァーチャル探検ツアー。南極探検を疑似体験できるコーナーである。


ブルーバックの前で動くと
こんなふうに南極に立って記念写真ができるというコーナー

似たような、ブルーバックで合成写真が撮れるアトラクションは遊園地なんかでも見たことがある。でも国立の研究所ともなるとレベルが違う。この背景は現地時間午前6時、気温マイナス20度の、リアルタイムの南極なのである。


たのしい体験室は本当はこんな仰々しい名前

この合成処理は南極で行われているという。ここで撮影された子供達のすがたは、いちど衛星回線で昭和基地に送られて、現地の景色と合成されてまた衛星回線で戻ってきて、モニタに表示されているのだ。…って当の子供はたぶんわかってないだろうけど、僕はそんな話を聞いただけでもう南極行った気分になったし、急に南極という場所に親近感が沸いた。

 

 

 

大人向け衛星中継も

ヴァーチャル体験は子供向けでしたが、ライブ通信が楽しめるのは子供だけではない。大人向けにはこんなコーナーもありました。

昭和基地とのライブチャットだ。


いま生で通信がつながってます
なんでもないプレゼン資料だが、この映像は今南極から来ているのだ

南極からの生プレゼンあり、生クイズあり、生質疑応答あり。それから南極から日本の携帯に電話をかけてみる、なんていうデモンストレーションもあった。

質疑応答では会場のお客さんが自由に質問できたのだが、この質問がよかった。「南極で電話はできるんですか?」「南極にはシロクマがいないってきいたけどなぜですか?」など、素朴な質問のオンパレードである。南極を前にすると、人は子供になるのだ。


会場がもっとも子供になった瞬間。「南極に来てみたいという方、いらっしゃいますか?」「はい!はい!はい!」
関係ないですが南極には金髪の人もいました

 

 

 

 
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