この日のベストゴリラと遭遇

休日の上野動物園はとにかく人出がすさまじい。当然、子どもたちに大人気であるゴリラの森もかなりの人だかりだ。

ゴリラの体型をしっかり観察したいが、ゴリラを楽しみに来園した子どもたちの邪魔をしてはいけない。最適なポジションを確保するのに難儀した。

彼の名は「ムサシ」。まさに「This is ゴリラ」。ゴリラとしか表現しようのないゴリラっぷりである。まあゴリラなんだが。

そして彼は1980年生まれ。なんと僕と同学年である。こんなゴリラがクラスにいたらカツアゲされること必至だ。

均整のとれた立派な肉体を誇るムサシ。体は大きいが性格は大人しく、飼育係とも仲良しだ。気は優しいけど力持ちなのである。子どものころ、こんなお兄さんが欲しかったっけ。

まあそれはともかくとして、このままでは動物園とか関係なくゴリラの体はやっぱり凄いという結論に至りそうだ。どのゴリラも一日の運動量が僕より少ないことは明らかなのに。

納得できないので飼育係さんに電話で聞いてみた。

― ― 動物園に長くいるゴリラの筋肉は退化しないんでしょうか？
おじさん「うーん、とくにそういうイメージはないですね」

一蹴されてしまった。しかし、どうにか動物園のゴリラは太っているという言質を動物園から引き出したい。

― ― ゴリラもメスは中年になると太ってくると聞いたんですが
おじさん「そうですね。動物園にずっといるとゴリラも太るかもしれませんね」

※メスが中年になると太る、というのは園内の図書室にあった「ゴリラ図鑑」で得た知識です。

ということで結論。動物園のゴリラは太っている

食い下がってみるもんである。専門家から貴重な証言を得ることができた。あるいは不憫な子だと思われたのかもしれないが。

園内の中年メスゴリラはやはり太っている。でもこれは動物園だからとかじゃなくて、たぶん中年メスゴリラだから。

オスと比べると足もだいぶ短くて全体的にユーモラスなフォルムだ。ああ、なんかほっとするな。

僕は単にゴリラに「ユーモラス」を求めていただけなのかもしれない。