その場で食べます
もう夜も遅いので、こいつらを持って帰って家でゆっくりと食べたいところだけれど、ウチダザリガニは外来生物法に基づき特定外来生物に指定されているため、無許可の移動などが禁じられている。
そこでこの場で食べるしかない訳だが、パスタにしようと生クリームとかトマトソースを持ち込んではきたけれど、もう遅いし面倒くさいので、塩茹でにしてそのまま食べることにした。
ザリガニを茹でた鍋の蓋をあけると、プーンと甲殻類の茹るいい匂いがするかと思いきや、三年間水を変えていない金魚の水槽みたいな水垢臭がして焦る。
泥抜きもしていないやつを、洗いもせずにそのまま茹でたのが悪かったか。ザリガニの匂いよりも、ザリガニに付いた苔や泥のほうが勝ってしまっている。
高級食材の味がした
茹で汁の匂いはかなりやばい感じだったが、茹であがったザリガニ自体は、エビっぽい匂いがうっすらする程度だった。
尾の殻を外して、黒々とした太い背ワタをとる。オレンジ色のその姿は、明らかに高くてうまい食べ物のそれだ。
おっかなびっくり食べてみると、心配された水垢臭はほとんどなく、上質のエビの風味にカニのようなきめ細かい質感。今まで食べたどの甲殻類よりも繊細であっさりとした味なのだが、十分な旨みが余韻を残す。なるほど高級な味だ。
これにバターなどで作った濃いソースを合わせたら最高だろう。今日はソースを作る余裕はないので、二匹目はマヨネーズをつけて食べてみたが、あと20匹くらい食べたい味。ドレッシングをかけたり、フライにしてもうまそうだ。
二日間の苦闘の末に捕獲された六匹のウチダザリガニは、ものの数分で三人の胃袋に収まった。
来年の夏、今度はちゃんと下調べをして、苦労せずに大量に捕獲し、よく洗ったウチダザリガニでフルコースを作ろうねと、天の川の下で約束をした。
釣りのコツは、釣れるまで帰らないこと。ロールプレイングゲームをクリアーしたような、冒険小説を読み終えたような、川口浩になったような、とても充実したいい気分です。
食べるといいと思う
日本国内で増え続けている外来生物。いろいろと難しい問題ではありますが、多くはもともと食べるために連れてきたもの。これ以上増やさないためには、もっとみんなで捕まえて食べればいいんじゃないですかね。
「おいしいからもっと放流しよう」という話ではもちろんなくて、「増えてしまったものは食べてしまおう」という話です。そいういう単純なものでもないのでしょうけれど、とりあえず私は食べます。