「地平線を見に行きませんか?」
当サイトウェブマスターの林さんから誘いのメールが来た。先月、持病の椎間板ヘルニアが悪化して入院して以来、中々元気が出ない僕を気遣ってくれているのだ。茨城県の下妻周辺に、地平線が見える場所があるらしい。国道がまっすぐに伸びて地平線へと続く写真も添付されていた。東京からたったの2時間で、こんなボーン・トゥ・ビー・ワイルドな景色に出会えるのだ。
是非行きたい。
行って地平線を眺め、元気をもらいたい。
行きます! とすぐに返事をしたかったのだが、1つ問題がある。
退院はしたが、まだまだ腰の具合が本調子ではないのだ。長い時間座っていると痛くなって体が曲がってしまう。2時間も電車移動をしたら大変なことになると思う。下妻で動けなくなってそのまま入院、なんてことにもなりかねない。
せっかく添付写真付きで誘ってくれたのに、どうしよう?
地平線、林さんの好意、腰痛。三方一両損のようにうまいことやれないだろうか。
林さんに相談すると、予想だにしない答えが返ってきた。
「じゃあ、僕が1人で行ってその様子をリアルタイムで住さんにメールで伝えますよ」
なんてことだ。林さんは僕のためにわざわざ地平線まで行ってくれると言うのだ。この方法ならば、僕の腰は痛くならないし、地平線は見られるし、林さんの気持ちを無下にすることもない。さすがはデイリーポータルの大岡越前である。
それにしても、片道2時間、往復で4時間。地平線ポイントまでの移動なども含めれば、ほぼ1日潰れてしまう。僕のためにそんなことをしてもらってもいいのか?
恐縮する僕に構うことなく、林さんは地平線を見に行く日程を決め、当日の段取りなどを連絡してくれた。
もしかすると、林さんが地平線を見たいだけなのでは?
一瞬、悪い方の僕がそんなことを考えてしまったが、そんなはずはない。林さんは僕を元気づけるために地平線に向かってくれるのだ。
約束の日、僕はパソコンの前で林さんからの地平線を待っていた。
(text by 住 正徳.) |