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ロマンの木曜日
 
もし印鑑ではなく似顔絵というシステムだったら


捺印じゃなくて手書きにしようという試みです

印鑑(印章)の存在は不思議だ。

単に名字の彫ってある印を押すだけで本人了承の確認書類となってしまうのは、よく考えるとすごいことだと思います。三文判のセキュリティなんて皆無に等しいだろうし、今の時代なら、誰かがちょっと本気になれば、複雑な印鑑もお札なんかより簡単に偽造できてしまうのではないでしょうか。もっと責任問題が多発したっておかしくないはず。

というわけで、印鑑の信頼性はそれほど高くないと思いました。それなら、より確実に本人以外見分けできないものにするのはどうだろう。

萩原 雅紀



本人のみ見分けがついて、複製の難しいもの

そこで似顔絵です。本人確認として、印鑑を押す場所に自分の似顔絵を書くのです。似ているかどうかはともかく、自分が書いたかどうかは確実に判別できるのではないでしょうか。

どういうことか分からないと思うので、実際に試してみます。


たとえばこんな契約書があったとして
「印」のところ「顔」にしてあります

住所と名前を書いて...
印鑑...じゃなかった、似顔絵をぐりっと。

こんなんできましたけどー

どうでしょうか。何度も書きますが、似ているかどうかはともかく、あとから書類を見たときに、その似顔絵が自分が描いたものかどうかは分かるだろうし、本人かどうかの判別もできると思うのです。

...なんて、初めは真剣に考えていたのですが、だんだん「マジメな書類の中に似顔絵が書いてある状況」というのが可笑しい、と思えてきたので、ほかにもそんな書類をぜひ見てみたくなりました。

それで、印鑑てほかにどんな場面で押すのだろう、と考えたとき、ぼんやりと思い浮かんだのがこんな場面でした。(注:ここからしばらくフィクションです)


なぜかネガティブな契約ばかり


仕事がうまくいかなくて...家族が病気で...
大丈夫!この壺を買えばすべてうまくいきます!

さあ早くこの契約書に
名前と住所と似顔絵を!

「デイリーほがらか会」
一丁上がりじゃあ!

何もかもうまくいかなくなって神頼み。どうやら「デイリーほがらか会」なる怪しい団体に高価な壺を売りつけられてしまったようです。しかしこの壺を買っても本質的な問題は何も解決しないでしょう。ナンは焼けるけど。

印鑑の代わりの似顔絵も、ほがらか会代表の古賀さんは含みのある笑顔、身も心も弱っている萩原は不安を拭いきれない表情となっています。

そうか、似顔絵ならそのときの感情も表せるのかも知れない。

ということを確認するために、もうひとつ別の契約を考えました。


おんどれ、ナンボ借りたいんじゃ
あの...ひゃくま...いや、いちまんえんを...

よっしゃ貸したる、じゃここに名前と似顔絵書けや

わああ書きます書きます
闇金「デイリー興業」
これで年を越せますぅぅ

ああ、どうして僕の想像する契約はこういったネガティブなものばかりなんだろう。

似顔絵の安藤さんは本物と同じようにサングラスをかけていてしてやったりの表情。いっぽう同じ日に借金して壺まで買った萩原はもう目が泳ぎはじめています。しかし、およそシリアスなものからはほど遠い、ほんわかした契約書。返済が少しくらい遅れても許してもらえそうな雰囲気です。たぶんダメだけど。

印鑑の代わりに似顔絵を描くことによって、マジメな書類でもなんだか間の抜けた雰囲気になりました。また、その似顔絵を描いた(契約した)時々の感情を表すことができる、というのも面白いと思いました。

もっと身近な例を示せば、あの役所に出す茶色の書類と緑の書類できっとかなり似顔絵のテンションが違うだろう、と思います。


あの茶色の書類
わーいやったー

あの緑の書類
はぁーあ...

楽しい書類を作ろう

せっかくの楽しいテーマなのに、なぜだかどんどん憂鬱な方向に進んでしまいます。僕はなにか印鑑に対してトラウマでもあるのだろうか。

ここはひとつ、たくさんの印鑑(=似顔絵)が並んで楽しい書類を作ろう。たくさんの印鑑が並ぶ書類と言えば、会社などで何か起案をしたときに作る「稟議書(ひんぎしょ/りんぎしょ)」。「原議書」というところもあるようですが、起案者から順番に偉い人のところにまわって行って、承認のサインとして印鑑を押すので、自分のところに帰ってくるときには印鑑だらけになります。


僕の職場の本気の稟議書なのでぼかします

今回は特別にデイリーポータルZの稟議書を作って、編集部やライターの皆さんから承認(似顔絵)をもらいたいと思います。


実際はライターに稟議書はありません

 

DPZ稟議書

というわけで、こんな稟議書を作りました。


DPZ稟議書

そして、企画会議の場や、ライターの職場などに直接持って行って、たくさんの人から承認の似顔絵を集めました。

では最後に、似顔絵で埋まったハッピーな稟議書をご覧ください。マウスオーバーすると、どの似顔絵が誰のかが分かります。


ハッピー稟議書(マウスオーバーで誰の似顔絵か分かります)

これは楽しい!みんなそれぞれ何となく似ているし、大きさや表情など、性格も反映しているような気がします。もしこれが本当の会社の書類だったら、なんだか上司や部下との距離感が縮まりそう。

もちろん印鑑も何百年と受け継がれて来た文化だけど、似顔絵もけっこう使えそうな気がしてきました。公文書はともかく、たとえば回覧板の確認欄とか、身近なところから少しずつ似顔絵、始めてみませんか?

で、結局提案した自分のがいちばん似てない

おそらく、大昔にもその人なりのサインやマークなんかがあって、それを手軽に大量生産するために印鑑が生まれたのだと思います。そう考えると、時計の針を思いっきり戻すような今回の企画は意味がないんじゃないかという気がしてきますが、でも似顔絵が並んだ最後の稟議書はいい書類だと思います。

とにかく、僕はこの記事を考えた時点で、もっと似顔絵を練習しとかなきゃでした。

この形に彫って印鑑登録とかできないだろうか

すみません、ぜんぜん関係ない告知です

本編とはまったく関係ないのですが、今年の春に出版した「車両基地写真集」の第二弾、その名も「車両基地II」を早くも出版できることになりました。今回は関西を中心に、でも関東や新潟や北海道の車両基地なども載っています。たぶん今日あたりから本屋さんやアマゾンさんに並んでいると思いますので、興味のある方はぜひ観てみてください。

空飛ぶ電車が表紙です

 
 

 

 
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